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【語学学習】予告された報酬はつまらない

※この記事は、前回の記事の続編的位置付けです:

前回触れたことは、ものごとには機能的側面と情緒的側面があり、そして、情緒を奪われると人はとても不安になる、という話です。今回は、前回の記事の内容に続き、「予定調和的に『成果』が得られることはあるが、それは概してつまらない」という話をしてみます。

予定調和的

ここでいう「予定調和的」というのはたとえば、「小学三年生は一年後に小学四年生になる」とか、「東京駅を出発する東海道新幹線に乗ると、約1時間40分後に名古屋駅に到着する」などのように、その状況にあることで何が得られるかが、もう予告されて決まっている構図のことを指します。そしてたいていの場合、ことの結果はその予告通りになります。

さて、「何が得られるのかもうわかっている」という状況はうれしいし、予定も組みやすいし、何度でもそれを再現できるしと、とてもよいことであると感じそうですが、どうでしょうか。「ものごとが想定通りに進む」というのはよさそうな気はするのですが、それを言い換えると、「想定外の方向に進むこどがほぼ期待できない」ということでもあります。

金融の世界では「オプションバリュー」という考え方があり、選択肢(オプション)を手元に持っておくことそのものに価値があるという考えがオプションバリューの考え方です。とうぜん、「ものごとを想定外の方向にすすめること」もまたオプションのひとつであり、それをできなくすることはオプションを減らす悪手になります。

「想定外の状況を生み出すこと」という選択肢もやはり、手元に置いておいた方がいいはずです。じっさいにそのオプションを行使するかという話は別として、イレギュラーを取り込む心の余裕とか、あるいは、合理性から外れた行動をやってみる、みたいなのは、「できるように」しておいたほうがいいはずです。

これは相互に相容れない、対立するふたつの話のどっちをとるか、みたいなことではなく、両者をうまく取り入れて相互に補完したい、という話です。そして、おそらく今足りていないのは、イレギュラーや無駄、あるいは非合理を意図的に取り込むという態度、つまり、「想定外の状況を生み出す」という選択肢をある程度用意する、ということです。

予告された報酬は機能しない

また、「どのような報酬が得られるかを事前に予告されるほど、人はパフォーマンスを下げる」ということもわかっています。これは「ろうそく問題」としてよく知られている話で、有名なTEDトークで聞いたことがある人もいるはずです:

おそらくですけど、これまた前回にした話とも関連するはずです。人は、今まで見たことがないような体験をすると、新鮮な気持ちでそれを楽しめるのですが、それが繰り返し何度もなされると、だんだん飽きてきます。その繰り返された結果がすべて同じようになると、もう興味を失いますし、それをするのが面倒になったりやっかいになったりするはずです。

「予告された報酬」についても、「想定外をつくる」というすでにした話で説明できます。報酬が確定するということは、それ以上にもそれ以下にも触れるリスク※が消えるということであり、それはオプションの消失という点であまり好ましくありません。

※ここで言うところの「リスク」は、ことがプラスに触れるリスクも含みます。つまり、結果の振れ幅そのものを指しており、「うまくいかない可能性」と、「想定以上にうまくいってしまう可能性」の両方を意味します。

語学学習と予定調和

ここからが本丸の語学学習の話になるのですが、上述した、「ものごとが想定通りに進む」というよくある話の二つの問題、つまり:

  • 想定外を取り込むためのオプションが消える

  • 予定調和的に獲得できる成果に人はそのうち飽きる

という話は、そのまま語学学習にも通用します。語学学習でも、「みんなと同じことをして、みんなと同じような結果をつくること」をする人がいますが、それも、「いつかそのうち飽きる」という逃げ場のない道につながるという点で、あまり好ましい状況であるとはいえません。

ろうそく問題の話からもわかることなのですが、「成果が保証された語学学習」ではなく、「どのように発展するのかよくわららない語学学習」のほうが、なんだかことをうまく運べそうな気がしませんか。そしてもっとも大事なこととして、どのように発展するかよくわからない取り組みそのものに価値がある気がしませんか。

「これをすると、これが獲得できます」と説明された場合、「これをやっても、それ以外はなにも得られません」と宣言されているようなものです。そこにたいして、「それはちょっと嫌だな」と感じられる場合、その感覚はかなりいい線いっているのではと、個人的には感じます。


▼この記事を書いた人▼

そっちゃそ
フリーランス英日翻訳者。本業で培った知識や経験をもとに、発音指導をはじめとした語学指導もやっています。noteは、僕の思想や考えをひろく公開するために使用しています。僕の思想や考え方については、考察と思想哲学のマガジンにまとめているのでこちらをぜひご覧ください。詳しいプロフィールはこちらから。

ポッドキャストもやっています:

主な著作:「自分の意見を言うことは『役に立つ』」、「外国語を学習すると決めたときに読む本」、「英語発音学習の第一歩」。既刊一覧はこちらから

さいごに

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