見出し画像

世界の裂け目が開く時 ー第9話  108回目の朝 【創作大賞2026】|ファンタジー部門 

前回の話はこちらです




……さて、私達は状況を飲み込んだ。

次のループで止められなければ、多分世界は終わる。

だけどその心配はない。

……我等がいると。

だけど同時にこうも言われた。

「……戦闘はけられぬじゃろうな」

それはそう……多分…避けられない。

私の記憶、断片。

そこには、巨大な怪物におそわれ逃げまどう人々がいた。

それは——世界をらう化物だった。

何処かのゲームにあるウロボロスとかではない。

あれは循環じゅんかんことわりを操る存在だから。

同時にこうも言われた。

「お主等は、この世界を救えたさい、力を失い平穏へいおんに暮らす。もしくは、次なる世界。世界が助けを求めている世界へと旅立つか・・・・じゃな」

……平穏にルーカスと暮らす……毎日いちゃいちゃ…

嫌なんでもない…。

でもそんなことができるのなら理想でしかない…。

そんなことを考えていると——念波ねんぱで、

「……ルーミャよ……。それは夜布団ふとんでやりなさい」

……カアアアアアアアアアア見透かされてたあああああ

「ルーカスよ、"認識"の力はボスでしか使ってはならぬ……。普段から使う物でもない。どうせ、凪という未来視みらいしする能力があるし……。後はAIじゃな。そ奴が力を貸してくれるじゃろうて」

ルーカスが、つぶやいた。

「SFかよ」

幻獣狸が、ふぉふぉふぉと笑った。

「ファンタジーじゃ」

ルーミャが、小首をかしげた。

「ミステリーじゃない?」

……まあそんなことはどうだっていいか……。

……よし……。

私は心の中で、決意を固めた。

その後——狸が告げる。

「最後にじゃが、デイヴィットめぇには気を付けよ」

「……?」

「あの青年は、もう人ではない。よくまれたケダモノと思い接せよ

「……どうもあそこのそばにいたような気配があった。それか」

狸は、うなずいた。

私の頭には——疑問ぎもんしか浮かばなかった。

その後も——少し、会話が続いた。

何を話したのかは——覚えていない。

私は私で、ルーカスとどう……と思って、一人興奮こうふんしていた。

「おーい、ルーミャ。顔赤いぞ」

……えっ。

「……そ、そうかな」

「若いし色気いろけもあって最高じゃな……。わしが人であれ……」

「変態狸なぐっていい?」

タッタッタ——。

麒麟きりんが、静かに歩み寄った。

ドゴッ。

幻獣狸が、悲鳴を上げながら彼方かなたへ吹き飛んでいった。

麒麟が、深くこうべを垂れた。

もうわけありません、選ばれし子達よ……。まもなく世界は、元に戻ります。我等の姿を見る事が出来た。それはすなわち次のループでは我等を"認知"している事になります。それだけは夢々ゆめゆめ忘れませんよう」

光が——私達を、つつみ込んだ。

変態狸の事は忘れないでおこう……。

いや、あのスケベ狸は近付いてきたら吹き飛ばしてもらおう。

そんな機会が来るか来ないかは置いといて——放っておくことにした。

……光があたり一面を侵食しんしょくし……。


私達は——同じ布団ふとんに、寝転がっていた。

「………」

2人のかたが——触れ合っていた。

みるみるうちに赤面せきめんし——

ルーカスは頭を壁に激突げきとつさせ、私は赤くなりうずくまる。

いやあああああああ

しばらくしたのち——机の上に、たまごかけご飯が置かれていた。

白いわんの中で、ご飯の湯気ゆげがゆらゆらと立ち上っている。醤油しょうゆの香りが、ふわりと鼻をくすぐった。黄身きみがとろりと米の上にひろがり——つややかに、光っていた。

用意してくれたみたい。

手を合わせて——

「いただきます」

はしを手に取り、そっとご飯をすくう。

口に運んだ瞬間しゅんかん——とろけるあまさが、ひろがった。

醤油しょうゆと卵の組み合わせが、丁度ちょうどよく——。

……心の奥底おくそこから、落ち着けた気がした。

これがまさしく——最高のアンバランスなのかもしれない、と思う……。

「美味しいだろ?」

「うん、ルーカス……………美味しいよ」

「ルーミャ良かったよ……」

手を合わせて——

「ごちそうさまでした」

私達はその後——あらい物をした後、テレビを付ける。

ニュースキャスターの声が——淡々たんたんと、流れる。

「古くから"霧の島"として伝承でんしょうが残っていた厳島いつくしまが、本日、不意に霧が晴れ——その姿を現しました」

「……2日前、いや1日前か……。確かに戻ってきてるな」

そこで——ピロン、とり響くスマホ。

いつの間にか、私のポケットにも可愛かわいらしいスマホが入っていた。

指紋認証にんしょうでピロリン——と画面を開くと……。

『これで、成功した様ですね。ルーカス様、ルーミャ様。私は、麒麟です。あの変態狸に変わり貴方達をサポート致します』

麒麟が——そこにいた。

麒麟きりん……さん?」

『あの狸ではお主の身体をながめて、最後にするべきループに1回加わりかねぬしな……』

「あのエロ狸め」

私の中の幻獣狸の評価が——駄々だだがりだった。

でも……。

『私は平穏へいおん、平和が好きなのです……。ですので、それでいいのではないでしょうか?』

「そうかもね……」

と思っておく。

ルーカスは着替えをませ、準備をした。

私の服装はそのまま——白いワンピース。

あの服は……探したけどやっぱりなかった……。

というか、また分解ぶんかいされていた。

どうやら習慣しゅうかんづいた行動は止められないらしい……。

……ルーカスをなぐりたいけどやめとく。

だって今はそうじゃない気がしたから。

……その後、……しばらく待つ。

誰も来ない……。

『……外に出てみてください』

という麒麟の言葉で、外に出る事にした。

指示しじがないと出ないという事じゃない。

ルーカスによると——国家機密になっている以上は外に出ないほうがいいという事だった。

国家機密は、国家でかくされている物。

それで外に出ないといけないって。

と思い——あつい太陽の下、外に出てみると……。

そこにあったのは——巨大な、島のような何かだった。

ファンタジーの世界にでも出てくるような——巨大な島が、空に浮いていた。

「あれは、ゆがみか?」

『……可視化かしかされたようですね……。向こうもなりふり構わないようです』

「……」

私はそれを見て——知っていると、感じた……。

「化け物を召喚しょうかんする儀式ぎしきの間がある……」

「……というと?」

「何かを媒介ばいかいに、召喚される……。魔法であるやつ、でもここはゆがんでいるから幻想げんそうが現実に反映はんえいされるんだと思うよ。ほら見て?」

私は周りを見渡した。

あちこちに——色々なものが、浮かんでいた。

よろいに身をつつんだ人達や、さむらい獣人じゅうじん——あらゆるものが、ぜこぜになっていた。

麒麟きりん……どうやら可視化かしかされ過ぎたようですね……では私達も』

そう言われ——スマホから、AIの機能がパッと消えたかと思うと——

……巨大な幻想げんそうの門が、開かれた。

そこに——巨大な虹色にじいろうずが現れ……。

麒麟きりんが、姿すがたを現した。

そして——数ひきの龍が、そのあとに続いた。

『という事は、あの方も起きているはず……。それでは少し、乗ってください』

そう言われ——私達は、龍に乗せられた。

空を、飛ぶ。

見渡すと——龍、鳳凰ほうおう、太鼓をらしている存在そんざい等が、あちこちにただよっていた。

そして私達は——江戸城えどじょうへと、移動する。

そこに何があるんだろうと——想いをせながら……。


第9話 了

第10話  壊れゆく父と、守られる娘

本作はマガジンでまとめて読めます。
👉 全話はこちら。


いいなと思ったら応援しよう!

灯の旅人|創作と人の心を観測する人 ここまで歩いていただき、ありがとうございます。 もし何か感じていただけたなら、その想いをそっと置いていっていただけると嬉しいです。