タイミー⑪|口コミの"怖い男性"が気になったけど、貸衣装クリーニング工場に挑戦した話
このタイミー行ってみたいな。
以前からずっと気になっていた仕事。
でも、勤務時間は8時間。
今までの私は、
4時間までの仕事しか選んできませんでした。
長時間労働も不安。
でももうひとつ、
応募をためらった大きな理由がありました。
それは口コミでした。
「常連タイミーで嫌な人がいる」
と書かれていたのです。
以前、雑貨店のタイミーで苦い経験をしてから、
口コミは慎重に確認するようにしていました。
それでも、この特別な仕事は、
タイミーでしか出会えない気がする。
これを逃したら、もうチャンスはないかも。
そう思った私は、人生で初めて
貸衣装クリーニング工場のタイミーに
挑戦してみることにしました。
これは私が45歳から“100の人生初”に挑戦している
『ミケチャレ』シリーズの第48弾。
心配性で考えすぎてしまう私が、
勇気を出して一歩踏み出すリアルな体験談です。
覚悟を決めて向かう
今回応募したのは、
特殊衣装やアパレル商品を扱うクリーニング工場。
いわゆる貸衣装のクリーニングです。
勤務時間は9時~18時。
休憩1時間を挟んだ実労8時間。
作業内容は、
クリーニング補助・アイロン作業・軽作業
と書かれていました。
何よりも私が気になっていたのは、
数ある中の「ひとつ」の口コミでした。
「常連の坊主のおじさんがいる。笑顔で話しかけてくるのに、事実ではない悪口を言いふらしてくる。」
そんなようなことが、
長文で書かれていました。
なんかちょっと怖い。
今回は長時間だし、大丈夫かな…
そんな不安を抱え、
ドキドキしながら現場へ向かいました。
口コミの坊主の人がいた
今回の職場は、
いくつもの工場が立ち並ぶ
工場地帯の一角にありました。
大きなトラックが行き交い、
道を歩く人の姿はほとんどありません。
クリーニング工場は、
灰色の倉庫のような建物でした。
指定された場所に車を停め、
事務所へ向かいました。
事務所のドアを開けると、
そこには数人の若い女性が働いていました。
みんな20代くらいで、
服装もカラフルでおしゃれ。
クリーニング工場というより、
アパレル関係の事務所のような
華やかな雰囲気です。
ひとりの社員さんに声をかけると、
「こちらでお待ちください」
そう言われ案内されたのは、
事務所の一角の休憩スペースでした。
そこには既に、
タイミーらしき人が2人座っていました。
60代くらいの白髪交じりの女性と、
50代くらいの坊主の男性。
……あれ?!
もしかして、あの口コミの人かな。
坊主の男性を見て、
私は少し身構えました。
「おはようございます。」
緊張しながら声をかけると、
2人とも「あ、おはようございます。」
とそっけない反応。
その後は、どちらも下を向いて
スマホをじっと見つめています。
シーンとした空気に居心地が悪くなり、
行きたくもないお手洗いに行くことにしました。
お手洗いから戻ると、
ちょうど仕事開始の時間。
私たち3人は、
おしゃれな女の子に案内されて
工場内へ向かいました。
──この数時間後、
その坊主の男性とあんな話をすることになるとは、
この時の私は思ってもいませんでした。
きらびやかな倉庫内
工場内は予想外の景色でした。
わーすごい!
広くて天井の高い倉庫。
倉庫内は、
たくさんのライトに照らされて
眩しいほどです。
周りは至るところにラックが並び、
ウエディングドレスや着物、タキシードなど、
きらびやかな衣装が吊るされています。
そして一番驚いたのは、
流れていた音楽でした。
工場での流れていると言えば、
FMやAMラジオという勝手な想像をしていた私。
でも大音量で流れていたのは、
ミセス、米津玄師、バウンディ…
今流行りのおしゃれなJ-POPでした。
私たちタイミーは、
大きなアイロン台の前に案内されました。
縦一列に並ぶ6台のうち、
私が指定されたのは、
真ん中のアイロン台でした。
私の前には坊主の男性。
後ろには白髪交じりの女性。
後ろに男性じゃなくてよかった。
なんだか少しだけホッとしました。
初めての業務用アイロン
「午前中はこのアイロンがけをしてください。」
そう言って私に渡されたのは、
子どもの着物の装飾品セットの山でした。
半襟や帯はアイロンがけし、
小物は汚れを確認する。
そして、セット表を見ながら、
過不足がないか確認する仕事でした。
これならできそう。
少しホッとしていると、
後ろの女性タイミーさんが話しかけてきました。
「あなた初めて?初めてなのにアイロン触れるなんてラッキーだよ。」
話を聞くと、
初回のタイミーは衣装を畳んだり、
靴を磨いたりする単純作業がほとんどのこと。
ラッキーなんだ。よかった!
その女性から簡単にアイロンの使い方を教わり、
さっそく作業に取りかかります。
初めてさわる鉄の業務用アイロン。
スイッチを入れ、
そっと蒸気を出すボタンを押すと──
「ジュワーーーッ!!!」
ものすごい勢いで出る蒸気。
うわ、びっくりした!
さすが業務用アイロン。
自宅のものとは威力が違います。
最初は、
恐る恐るアイロンをかけていましたが、
そのうちにどんどん楽しくなっていきました。
ジュワージュワーと蒸気を出していると、
なぜか私の周りだけ、蒸気で白くかすんでいます。
前にいる坊主の男性を見ても、
モクモクと蒸気が上がっている様子はありません。
あれ、なんでだろう。
すると、
後ろの女性が声をかけてくれました。
「足元のペダルを踏むんだよ。」
言われた通り足元のペダルを踏むと、
アイロン台の下に空気がシューッと吸い込まれ、
蒸気が一瞬で消えていきました。
すごい!
まるで機織り機のように、
ペダルを踏んだり離したりしながら、
何十本もの帯にアイロンをかけていきました。
昼休みと坊主の男性
12時になり、
昼休みがやってきました。
いつものタイミーなら、
ここで帰宅するタイミング。
でも今日は18時までの仕事です。
「お昼は外に出てもいいし、
朝の休憩コーナーで食べてください。」
そう言われ、
私は迷わず外に出ました。
あの狭い休憩コーナーで、
初対面のタイミーさん達と1時間過ごす勇気は
ありませんでした。
でもそこは工場地帯。
飲食店なんてひとつもありません。
私は5分ほど車を走らせ、
コンビニでおにぎりとアイスコーヒーを購入。
その駐車場で食事を済ませ、
早目に工場に戻りました。
戻ったのは15分前。
休憩コーナーには、
あの坊主の男性が座っていました。
うわー、気まずい。
でも待つ場所はそこしかありません。
少し身構えながらも、
「おつかれさまです」と声をかけ、
少し離れて座りました。
すると意外な事に、
男性は笑顔で話しかけてきました。
「今日初めてですか?」
口コミに、
「笑顔で話しかけてくる」
と書いてあったことを急に思い出し、
少し緊張が走りました。
私は初めてだということを伝え、
精一杯の笑顔で質問を返しました。
「ここは長いんですか?」
すると男性はこう話し始めました。
「ここは募集が出た当初から来ています。リピートの人も多いけど、たまに単発の変な人も来ますよ。」
私はその“変な人”という言葉が気になり、
突っ込んで尋ねてみました。
すると突然、
男性は少し困ったような表情に変わりました。
「ここのレビュー見ました?俺、その変な人に、
“常連の坊主に嫌がらせされた”って書かれちゃって。」
あ、あの口コミのことだ!
「私もその口コミで、応募をためらいました!」
なんて言えるはずもない。
あまり気にしていなかった振りをして、
「見たような気がします」と曖昧に答えました。
男性の話では、
「その女性の服装の汚れや不衛生な臭いが気になった。きれいな衣装を扱う仕事だからと、念のため社員さんに伝えた。そしたら、あのような書き込みをされた。」
ということらしい。
さらに、
その件でタイミー事務局にも連絡したものの、
「坊主だけでは個人特定ができないため、
口コミの削除はできない」と言われたそう。
そうだったんだ…
「それは酷いですね。削除できたらいいのに…」
私はいつの間にか、
その落ち込む男性が少し気の毒になっていました。
パーカーをひたすら畳む
午後の作業が始まりました。
私が担当したのは、
山のように積まれた黒い無地のパーカーを、
決められた形に畳む仕事でした。
イベントのスタッフパーカーかな。
そんなことを想像しながら、
ひたすら手を動かしました。
でも単調な作業のせいか、
時間がまったく進みません。
何度も時計を見ても、
針がほとんど動いていないように感じました。
たたみ続けること3時間。
大音量で流れるBGMが、
折れそうな心を何とか助けてくれました。
やっと終わった…
ずっと立って作業していていたので、
私の足腰は悲鳴を上げていました。
でも、あと2時間…
なんとか気力を振り絞って、
一生懸命働きました。
テーブルクロスのアイロンをかけたり、
衣装をハンガーかけたり。
同じ作業を長時間続けるわけではなかったので、
気持ち的には助かりました。
8時間やり遂げた
無事に8時間勤務を終え、
事務所で一言あいさつをして外に出ました。
もう足腰はボロボロ。
でも、
「8時間やり切れた」という満足感と、
「私でもできた」という小さな自信が残りました。
急いで帰らなきゃ。
家では子どもたちが、
お腹を空かせて待っています。
お昼に買ったアイスコーヒーは、
氷が溶けてほとんど水になっていました。
ぬるくなったそれを一気に喉に流し込み、
足早に家に帰りました。
✨「自分で感じる」ということ
事前に読んだ口コミに、
少し怯えて行ったタイミー。
でも、そこで出会った男性は、
私が想像していた人とは少し違っていました。
男性から話を聞くと、
彼には彼の言い分がありました。
もちろん、口コミを書いた女性にも、
そう感じた理由があったのだと思います。
今回は、
たった「ひとつ」の口コミに引っ張られ、
その仕事に応募することさえ怖くなっていました。
私は、少しの情報から、
その奥にあるものまで深く想像してしまう。
そして、その恐怖心から、
考えすぎて動けなくなることがある。
でも今回、勇気を出して挑戦したことで、
その思い込みは違っていたと気づくことができました。
自分の目で見て、自分の耳で聞いて、
「自分で感じること」はやっぱり大切なんだ。
これからは、人の意見も受け止めながら、
その時の「自分が感じること」をもっと大切にしていきたい。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました!
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