タイミー⑥|アラフィフが催事販売に初挑戦!自信をなくした私を救った人生の先輩
「絶対受かる!」
そう思っていた面接に落ちました。
前職と同じホームセンター。
経験もある、
自信もあった。
落ちるなんて想像していなかったから、
思った以上にショックでした。
私には価値がないのかも…
そんな考えが、
ずっと頭の中でぐるぐるしていました。
何にもやる気が出ず、
ただ時間だけが過ぎていく毎日。
考えれば考えるほど、
マイナス思考になっていく。
その悪い癖が、
私自身をさらに苦しめました。
でもある日、
ベランダから晴れた空を見て、
ふと思ったんです。
閉じこもっていても何も始まらない。
何かしていた方が、
気がまぎれるような気がしました。
単発でもいい。
少しだけ外に出てみよう。
その時、
私が働ける場所はタイミーだけでした。
だから、気持ちが変わらないうちに、
急いでアプリで仕事を探しました。
どうせなら、
元気をもらえそうな場所で働きたいな。
そう思った私は、人生で初めて
期間限定の催事販売に挑戦してみることにしました。
これは私が45歳から“100の人生初”に挑戦している
『ミケチャレ』シリーズの第37弾。
心配性で考えすぎてしまう私が、
勇気を出して一歩踏み出すリアルな体験談です。
よく買い物に来る、
この町で一番大きなショッピングセンター。
今日の仕事場は、
その中にありました。
いつもとは少し離れた、
砂利の駐車場に車を停めます。
へー、こんな場所あったんだ。
いつもとは違う裏側からの景色が、
なんだか新鮮に見えました。
送られてきた地図を見ながら、
従業員出入り口を探します。
人気のない薄暗い通路を進むと、
いくつかの鉄の扉がありました。
え、どこから入るんだろう…
何度か入口を間違えながらも、
今度こそは…と、
一番大きい扉を控えめにノックしました。
扉を開けると、
守衛さんが立っています。
「ここに名前を書いてください」
言われるがままバインダーに名前を記入すると、
次は手荷物チェックとのこと。
鞄を大きく開き、
上からカメラで撮影をするみたい。
こんなので、何が分かるんだろう?
少し不思議に思いながら、
言われるままに手続きを終えました。
無事に入館パスをもらい、
守衛室の奥にある、光が漏れる奥の扉を抜ける。
ああ、いつもの通路だ。
まばゆい店内。
見慣れたお店。
たくさんのお客さん。
でも今日の私は、
お客じゃなくて従業員。
なんだか少し不思議な気分でした。
おじいさんとの出会い
今日の仕事は、
有名なクリームパンのお店でした。
ショッピングセンターの一角で開かれている
期間限定の催事場。
屋台のような小さなスペースに、
70代くらいのおじいさんがひとり。
商品を並べながら、
忙しそうに動いています。
「すみません、今日タイミーで来た〇〇です。」
そう声をかけると、
満面の笑みで迎えてくれました。
「入館証はもらった?荷物はこの裏に置いてね。」
とても明るくて、
ハキハキしたおじいさん。
怖そうな人じゃなくて良かった…
緊張していた私は、
少しだけほっとしました。
初めての仕事に募る不安
私に任されたのは、
クリームパンの箱詰めや、
レジの対応がメインでした。
冷蔵のクリームパンのほかに、
常温のお饅頭やクッキーもある様子。
すると、おじいさんが、
商品の説明をしてくれました。
「このお饅頭はね…」
「こっちは期間限定味でね…」
次から次へとあふれ出る知識。
一度には覚えきれない…
焦りながらも、
とりあえず必死にメモを取りました。
商品の説明が終わると、
今度はレジの使い方です。
昔ながらのレジで、
商品名が書かれたボタンを押すタイプ。
操作はシンプルだけど、
文字が小さく、少しにじんで読みづらい。
さらにPayPay決済もあると知り、
内心ちょっと不安になる。
お客として使ったことはあるけれど、
店側の操作は初めてだったから。
「ゆっくりでいいからね。すぐ隣にいるから。」
私の不安を感じ取ったおじいさんは、
優しく声をかけてくれました。
隣にいてくれるなら、
なんとかできそうかな…
とても心強くて、
不安も少し和らぎました。
安心して過ごせた時間
お客さんが来るまでは、
おじいさんと世間話をしました。
仕事について悩んでいた私は、
おじいさんにいろいろ尋ねてみたのです。
「なぜこの仕事をしているのか。」
「この仕事の魅力は何か。」
おじいさんは嬉しそうに、
たくさん話してくれました。
昔はこの母体の会社で管理職をしていたこと。
定年になり、
催事担当として全国を飛び回っていること。
そして、
タイミーで来てくれる人と一期一会の出会いを、
いちばん楽しみにしていること。
そんな話をしているうちに、
お客さんがポツポツ集まり始めました。
私は、ドキドキしながら、
商品を箱詰めしたり、レジを打ったりします。
分からないことは、
すぐにおじいさんが助けてくれました。
大きな声での呼び込みは、
最初は少し恥ずかしかったけれど、
頑張って声を張り上げました。
家に閉じこもっていた私にとって、
それが思った以上に気分転換になりました。
そして、楽しく時は過ぎていきました。
──あの“ワンオペの1時間”が始まるまでは。
突然の宣告
お昼の12時。
接客にもレジにも、
少しだけ慣れてきた頃でした。
おじいさんが、
突然こう言いました。
「じゃあ、お昼休憩行ってくるから、
1時間、店番お願いね。」
………えっ?!
私ひとりで???
一瞬、頭が真っ白になりました。
求人には、そんなこと一言も書いていなかった。
書いてあったら、応募していない。
「ちょっと待ってください。無理です!」
思わず本音が出ました。
するとおじいさんは、あっさりと、
「みんなそう言うけど、大丈夫。」
「もっとレジできない子もいたから。」
……いや、そういう問題じゃない。
始まってまだ2時間。
ワンオペは、さすがにきつい。
心配性の私は、
プレッシャーで押しつぶされそうでした。
不安で固まる私をよそに、
「何かあったら電話してね」と言い残すと、
おじいさんは颯爽と人ごみの中へ消えていきました。
地獄のワンオペタイム
「い、いらっしゃいませ…」
さっきまで出ていた声が、
不安でうまく出なくなっていました。
お願いだから混まないで…
そう願った瞬間でした。
お客さんが、ひとり。ふたり。
気づけば、目の前に行列ができていました。
ちょっと待って。
半分泣きそうになりながら、
箱詰めをして、レジを打つ。
すると──
今日初めて売れるお饅頭。
えっと、ボタンどこだっけ…
レジの文字がにじんで見つからない。
焦りで視界までぼやけていきます。
ポップの値段を確認しに走り、
とりあえず金額を手入力。
その間にも、
行列はどんどん伸びていきます。
分からない。
でも、誰にも聞けない。
もう無理かも…
そう思って、
おじいさんに電話をかけようとした、その時。
「おまたせ〜」
少し早めに、
休憩から戻ってきてくれました。
そこから一気に行列は減り、
少しの平穏が戻りました。
変な汗でびっしょりの私に、
おじいさんがひと言。
「遠くから見てたけど、ちゃんとできてたよ。」
その一言に、
ちょっと嬉しくなる自分。
でも──
……見てたのかい!
それなら手伝ってよ!
心の中で、全力ツッコミ。
嬉しさと戸惑いで言葉が出ない私を見て、
おじいさんはニコニコと微笑んでいました。
ピンチも楽しむおじいさん
「ちょっと落ち着いたし、売り上げ確認するね。」
そう言って、
おじいさんはレジのお金を数え始めました。
すると──
クリームパン1個分、金額が合わない。
きっと私だ…
青ざめながら、
「ごめんなさい」と謝ると、
「こんなの、よくあるから気にしなくていいよ。」
おじいさんはさらっと笑いました。
けれど、レジのお金は今マイナス。
平気そうに見えて、
少し困っている様子でした。
落ち込んでいる私に、
おじいさんは言いました。
「ちょっと見てて。」
次に来た男性のお客さんは、
クリームパンを2個購入。
おじいさんは、
世間話をしながら接客を続けます。
レジの間も話が止まらず、
男性も楽しそうに笑っていました。
その男性が帰ったあと、
おじいさんがぽつり。
「今の、売り上げ上げてないから。
これでプラスになったでしょ?」
──レジを打たずに、
お金だけ受け取っていたのです。
レシートを求められないように、
ずっと話し続けていたらしい。
ミスを責めない。
失敗さえも、ゲームみたいに乗り越えていく。
私にはない発想でした。
最後まで忙しかったけれど、
とても楽しく仕事ができました。
あたたかいクリームパン
終業の時間になり、
お礼を言って帰ろうとすると、
おじいさんが小さな袋を差し出しました。
「これ、持って帰って。」
中にはクリームパン。
「さっきプラスになった分ね。頑張ってくれたから。」
──私のミスを、
そっと帳消しにしてくれた1個でした。
「いいんですか…ありがとうございます!」
受け取ったひんやり冷たいクリームパン。
でも、胸の奥はじんわりあたたかくなっていました。
帰り際の守衛室。
荷物チェックに少しドキドキしながら、
私はそのクリームパンを大事に抱えて帰りました。
✨面接よりも心に残ったこと
面接に落ちて、
自分を否定されたような気持ちになっていました。
ワンオペで必死だった私に、
おじいさんがけてくれた一言。
「ちゃんとできてたよ。」
その一言が、
面接の結果よりも、ずっと心に残りました。
自分を認めてもらえたようで、
少し救われた気がしました。
落ちたのは、
私に価値がなかったからじゃない。
ただ、その場所に合わなかっただけ。
そう思えたとき、
少しだけ自分を肯定できた気がしました。
一生懸命やっていれば、
ちゃんと見てくれている人がいる。
あの日のタイミーは、
それを静かに教えてくれました。
だからもう少し、
自分に合う場所を探してみようと思います。
焦らなくてもいい。
私を認めてくれる場所が、きっとある。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました!
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