見出し画像

女子大生、セックス依存症になりました〜2話〜『失敗した初体験』

「恥ずかしいから、付き合っていることは周囲に言わないで」

 先輩がそう言ったから、わたしはふたりの関係を秘密にした。



 交際してから初めて、二人きりで外食に出かけることになった。彼の実家は都内でも有数の大病院を経営している。だから、当然どこか高級なレストランで外食になるのかと思った。
 けれど彼の希望は、意外にもファーストフードだった。



 最初に行ったのは、大学から遠く離れた駅前のマクドナルド。知り合いに会う心配のない場所で、わたしたちは待ち合わせた。
 ハンバーガーをかじりながら、彼は気軽な口調で言った。

「今度、セックスしよう」


 あまりに唐突で、わたしはすぐに返事ができなかった。

「……何回かデートしてからでもいいですか?」
 まだ心の準備ができていなかったのだ。

「セックスしないなら、付き合えない」
 彼が立ち上がろうとしたとき、わたしは思わず叫んでいた。

「セックスします!」



✳︎


 その場で次に会う日を決め、会場となるホテルも予約した。わたしは、格式はあるけれど手頃な値段の都内のホテルを選んだ。その手際を満足そうに眺める彼の様子を見て、今の幸せを失わずに済んだことに、少し安堵した。

 尊敬できる相手と、心だけでなく体もつながれるなんて。
 未知の体験に、期待感もあった。


 その日、ホテルに入った彼は慣れた手つきでルームサービスを注文した。
 少し格式のあるホテルに、そんな仕組みがあることを、わたしは知らなかった。学生なのに、どうしてこんなに色々知っているのだろう。
 感心してそう伝えると、彼は「うちの家族はホテルに泊まると、よく部屋でお茶をするんだ」と教えてくれた。

 彼の家族の話を初めて聞いて、わたしは嬉しくなった。彼の世界に少し触れられた気がしたからだ。



 食事を終えると、彼は唐突にわたしにキスをした。
 それが初めてのキスだった。

 最初は軽く唇を重ねるだけで、ついばむようにやさしく。だがすぐに、むさぼるような激しいキスへと変わっていった。


 わたしが思い描いていたキスは、軽く唇を重ねるだけのもの。口の中に入り込むキスは、知識としては知っていたが、現実のこととは思えなかった。

───こんなことが本当にあるなんて。

 思わず体を引きそうになったが、彼は離してくれなかった。


✳︎


 初めてのキスは甘かった。
 直前に軽食を食べたせいか、口の中に残っていたデンプンが唾液によってグルコースに分解されたのだと、頭の片隅で考えた。緊張でおかしくなりそうだったから、どうでもいいことを考えて気を紛らわせていたのだ。

 深いキスを続けると、何だか心地よくなってきた。そこで交互にシャワーを浴びに行った。


 初めてのセックスは、途中までは順調だった。
 人肌はあたたかく柔らかい。触れられると、少しくすぐったくて心地よかった。


「もしかして、はじめて?」

 彼が驚いたように聞く。
 セックスはおろか、キスも初めてだと告げると、彼はニヤリと笑った。



✳︎



 すべてが初めてだと告げたにもかかわらず、彼は性急だった。彼は経験豊富で、セックスを楽しんでいる様子だった。
 わたしは怖くてたまらなかった。

 でも、彼の様子を見て、そういうものなのだと必死に合わせようとした。
 胸をすくいつづける焦りと孤独感も、セックスの瞬間だけは遠のいた。それが少し嬉しかった。


 しかし結局、わたしは彼を受け入れきれなかった。体の芯が固くなり、まるでその場所に入っていかない。無理に途中まで押し込まれると、局部を傷つけ出血した。

「あれ?生理になった?」
と彼は言った。

 わたしはズキズキと引き裂かれる痛みに、そうじゃないと答えた。

「生理じゃないの?」と再び尋ねられた。



 結局、痛すぎて最後まで続けられなかった。
 その時の彼の落胆した顔に、わたしは蒼白になった。
 もうダメだ、と思った。
 セックスができないなら、付き合い続けられないだろうと、涙が止まらなかった。
 彼はふて寝してしまい、そのまま朝を迎えた。わたしは一晩、眠ることができなかった。



 その、なんとも言えない空気の中でお別れをして家に帰ると、彼からメールが届いていた。



✳︎

⇩次回 『初彼のデートDV』

いいなと思ったら応援しよう!

安城つばさ いただいたチップは、創作活動の経費に充てさせていただきます🫶