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女子大生、セックス依存症になりました〜1話〜『初めてのお付き合い』


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高校生のころまで、わたしは人をひたすら避けて、
空気のように生きようとしていた。
ただただ人が怖かった。

学校という空間で呼吸をしているだけで、無数の針に全身を突き刺され続けるような、逃げ場のない苦しさを抱えていた。



「家族以外は信じるな」
父には常に、そう言い聞かされていた。



わたしはいつも、人が怖くて孤独で、
そしてとても寂しかった。
ひとりでいるのは辛い。
けれど、それ以上に、人と一緒にいることのほうが苦しかった。
だから、結局、わたしはずっとひとりでいた。


「お前が選んでくる友だちは残念なやつばかりだ。……それは、劣ったやつを選んでおけば、
自分の劣等感を刺激されなくて済むからだぞ。」

 そう、父に言われていた。
どんな友だちを選んでも父は納得しない。
わたしが自分で何かを選び、決断すること自体が、父には気に食わなかったのだ。
それは友だち一つとっても、そうであった。

わたしには、友だち選びの正解がわからなかった。結局、父に選んでもらうしかない。
けれど、父は決して選んではくれない。

そして、繰り返すのだ。
「家族以外を信じるな」 と。

✳︎

わたしは人と距離をとって過ごしているうちに、
「ぼっちキャラ」から抜け出せなくなった。
気づいたときには、もう遅かった。
勇気を振り絞ってクラスメイトに話しかけても、
困ったようにくすくす笑われ、結局は避けられて
しまう。


わたしは選択を間違える。

だから、人との距離をとり、一人で生きようと
してきた。
けれど、本当は一人になりたかったわけじゃない。わたしは、これ以上父から友人たちの悪口を聞きたくなかっただけなのだ。


それに、「自分はダメな人間だ」と繰り返し
自覚させられることも、耐えられなかった。
だから、一人でいることを選んだ。

───ただ、それだけだ。


けれど、わたしの事情なんて誰も知らないし、
きっと誰も興味を持たない。
こうして、わたしはもう長いこと、学校で人を遠ざけ、ひとりきりで過ごす「変人」になってしまった。


時の流れも、決してわたしの味方をしなかった。
成長とともに、さらに心が血が吹き出すように
痛み出して、ますます人が怖くなる。
あまりにも人と距離を取りすぎたせいだ。


この地獄から抜け出すには、もう一度、人に近づかなければならない。
けれど、いまさら変わろうとしても、周囲は戸惑い、わたしが変わろうとすることを許してはくれなかった。


 ───大学に入れば、環境は変わる。


 わたしは、最後の望みをそこに託した。


わたしは、顔が勝手に赤くなる赤面症を抱え、
さらに場所によって言葉が出なくなる場面緘黙症
にも苦しんでいた。
中学時代には、いつも人を遠ざけ、ひとりで過ごす「変人」として扱われ、ひどいイジメにも遭った。
そのうえパニック発作を起こし、以後は過呼吸の
症状にも苦しめられるようになった。



それでも、成績だけは常にトップクラスを維持した。やがて学区内で最もレベルの高い進学校へ進み、その中でも成績順で最上位のクラスに所属し、三年間ひたすら勉強漬けの日々を送った。


✳︎


わたしは大学に入って変わることができた。
この大学は地元から遠く離れた新天地。
ここには誰も過去の私を知る人はいない。
わたしを管理する家族もそばにいない。

だから、本当はなりたかった社交的で明るい自分を演じてみることにしよう。

話しかけようとすると身体中から汗を吹き出す。
でも、諦めずにたくさんの人に話しかけた。
ひたすら話しかけて、みんな仲の良い友達だと
心から思い込んだ。



話しかけた人の全員の顔と名前を覚えて会って
2回目からは、必ず自分から挨拶した。
喉がひりつくように乾いたし、人からは笑われたこともあるけれど、諦めなかった。



心が血を吹き出したが、必死に蓋をした。
そうして毎日、我慢を重ねる生活をしていたら、
頭の中に薄いカスミがかかりはじめた。
頭の芯がぼんやりして体に力が入らない。
へらへらと笑うことしかできず、深く物事を
考えられなくなった。


だが、それは、かえって都合が良かった。
社交的な自分を演じやすくなった。
周囲はそれに騙されて、社交的なキャラとして
受け入れてもらうことに成功したように思う。


だからだろうか。
大学3年生の冬の終わりに当時、同じ研究室だった
一つ上の先輩から付き合わないかと言われたのは。


✳︎


研究室の先輩から付き合わないかと言われたとき、わたしは大学3年生だった。

天にも舞い上がる気持ちだった。
こんなわたしと付き合いたいと思ってくれる人が
いるのだと感動した。
高校生の頃の自分に教えてあげたい。
わたしには友だちもできて、彼氏までできたよって。わたし、がんばったねって。


彼はけっして格好の良い見てくれではないけれど
陽気で話上手な気配りやなので、過去、たくさんの女性と付き合っていたと、噂で聞いたことがある。
学校の授業は真面目に受けないけれど、要領の良さで乗り切ってしまう。
頭の回転がとても早くて、彼の周りには昔から
人が溢れていた。
尊敬もされていて、眩しいリーダータイプ。

本来のわたしとは随分タイプの違う人間だ。
だから、先輩としての彼を心から尊敬していた。


先輩に、どうしてわたしと付き合おうと思ったのか、聞いてみたら、
「あまりにもつばさが
後輩としてダメすぎたから。
面倒を見てたら情がうつった」
のだという。


……ペットみたいな感じだろうか。


たしかに、先輩には迷惑をいっぱいかけた。
当時、わたしは、なにかを決定する際に、
なにひとつ自分の意思で決められないという、
悪癖があった。
これが、さまざまな分野で悪さをしていて、
先輩にもたくさん迷惑をかけたのだ。


今思えば、先輩はどこか上から目線で、対等な恋人
にはなれなかったけれど、当時のわたしには
分からなかった。


だって、子どもの頃から、わたしには対等にやりとりをしてくれる存在が、いなかったから。
相手が上で、自分が下の構図が当たり前だったから。


 ──だから、気が付かなかった。



だれかのいいなりになるのがわたしにとっては
当たり前。
そうすることが自分を守ることだって思ってた。



だから、お付き合いが始まると、大変な思いをすることになった。



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