欧州を見て、日本の終末期医療と介護を考えるドイツ・フランス・オランダを歩いて見えた「日本に足りないもの」



日本では「欧州の介護は素晴らしい」「北欧やドイツを見習え」という言葉をよく耳にします。

しかし、実際に現地を訪れ、ホスピスや在宅ケア、介護保険制度を見てみると、日本で紹介される情報はごく一部に過ぎません。

そこには、日本とは全く異なる制度設計や思想がありました。

今回は、ドイツ、フランス、オランダなど欧州各国のホスピス・介護保険・家族介護制度の講演を聞いたので、それをメモとしてまとめながら、日本の制度が今後どうあるべきなのかを考えてみます。




ドイツのホスピスは「病院」ではない

日本ではホスピス病棟というと、

  • 病院の一病棟

  • 医師・看護師中心

  • 医療が主体

というイメージです。

しかしドイツでは違います。

終末期ケアは

  • 在宅ホスピス

  • 訪問ホスピス

  • 入所ホスピス

  • 緩和ケア病棟

が明確に役割分担されています。

在宅を支える巨大な仕組み

ドイツでは

  • SAPV(専門在宅緩和ケア)

  • AAPV(一般在宅緩和ケア)

  • Ambulanter Hospizdienst(訪問ホスピス)

という複数の制度が存在します。

医師だけではありません。

  • 看護師

  • ボランティア

  • ソーシャルワーカー

  • チャプレン

  • 家族

が一体となって支えます。

「病院に運ぶ」のではなく、

最後まで地域で支える

という思想が制度全体に貫かれています。


ボランティアが医療制度の一部になっている

今回もっとも印象的だったのが、

ベルリンやケルンの訪問ホスピスです。

例えばケルン北部では

  • 人口約10万人を担当

  • コーディネーター2名

  • ボランティア約30名

という体制。

ボランティアは100時間以上の研修を受け、

「死にゆく人への関わり方」

を学びます。

仕事は医療ではありません。

ただ、

本人のそばにいる

ことです。

「一人ではない」

という安心を届ける。

これがホスピスの重要な役割なのです。


参考URL

・ドイツ連邦合同委員会(SAPV)
https://www.g-ba.de/richtlinien/64/

・ドイツ保健省(Hospiz)
https://www.bundesgesundheitsministerium.de/service/begriffe-von-a-z/h/hospiz




フランスのホスピスは病院色が強かった

一方で、

パリの有名なジャン・ガルニエ・ホスピスは、

率直に言えば

病院の延長

という印象でした。

建物も病院そのもの。

生活感はあまり感じられません。

また、

終末期セデーションを積極的に行う文化も特徴でした。

フランスでは2016年に

深い持続的鎮静が法制化されています。

苦痛を取ることを重視する文化が背景にあります。


安楽死との距離も国ごとに違う

欧州と言っても一枚岩ではありません。

例えば

オランダ

ベルギー

では安楽死制度があります。

一方、

フランスは長年反対してきました。

しかし近年、

「死への援助法」

が国会で議論され、

制度は大きく変わろうとしています。

一方で、

カトリックの影響は今も強く、

安楽死への反対も根強く残っています。

欧州は決して

「安楽死賛成一色」

ではありません。



アメリカでも在宅ホスピスが主流

印象的だったのが

ジミー・カーター元大統領です。

98歳で

「病院での治療をやめ、自宅で穏やかな最期を迎えたい」

として

在宅ホスピスへ移行しました。

アメリカでは

ホスピス医

訪問看護師

介護職

栄養士

チャプレン

ボランティア

など多職種チームが自宅を支えます。

緩和ケアを受ける場所も

  • 自宅44%

  • 老人ホーム33%

  • ホスピス病棟14%

と、

病院中心ではありません。


ドイツ介護保険が日本と決定的に違う点

もっとも驚いたのは

家族介護への現金給付

です。

ドイツでは、

家族が介護を担う場合、

介護保険から現金給付を受けることができます。

さらに、

現物サービスとの組み合わせも可能です。

つまり

「全部家族」

でも

「全部サービス」

でもありません。

両方を組み合わせられるのです。



日本には現金給付がない

日本は

介護保険導入時、

家族介護への現金給付を採用しませんでした。

理由の一つとして、

現金給付が

女性を家庭へ固定化する

との懸念があり、

サービス給付中心の制度が採用されました。

理念としては理解できます。

しかし、

現実を見ると、

家族介護はなくなりませんでした。

結果として

  • 家族介護は続く

  • 現金給付はない

  • 無償労働のまま

という状況になっています。

制度設計の理念と現実との間には、大きなギャップがあります。


ボランティア文化も大きく違う

ドイツでは

ボランティアは

制度の周辺ではなく

制度そのものです。

100時間を超える研修を受け、

専門スタッフと連携し、

患者や家族を支えています。

日本でも地域包括ケアが掲げられていますが、

ボランティアへの教育や支援はまだ十分とは言えません。


社会保険だけでは支えきれない

今回学んだ最大のことは、

欧州は

医療保険だけでも

介護保険だけでも

支えていないことです。

そこには

  • 公助

  • 共助

  • 互助

  • 自助

が明確に位置付けられています。

さらに、

ボランティアや家族介護も

制度の一部として設計されています。


日本が学ぶべきこと

日本は世界最速で高齢化が進んでいます。

財政制約も厳しくなります。

だからこそ、

病院を増やすことだけでは限界があります。

今後必要なのは、

  • 在宅ホスピスの充実

  • 専門緩和ケアチームの整備

  • ボランティア育成

  • 家族介護者支援

  • 介護離職防止

  • レスパイトケアの拡充

  • 現金給付を含めた介護者支援の再検討

でしょう。

欧州の制度をそのまま輸入することはできません。

しかし、

「何を社会が支え、何を家族に委ねるのか」

という設計思想から学ぶことは数多くあります。

超高齢社会の日本だからこそ、医療・介護・福祉・地域・家族・ボランティアの役割を改めて問い直す時期に来ているのではないでしょうか。



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