The Gambler 歌詞と対訳
楽曲について
The Gambler / written by Don Schlitz
ナッシュビルを代表するソングライターにして songwriting という文化の発展に大きく寄与したドン・シュリッツ。というのも現在に至るまでナッシュビルで主流になっているソングライターの表現形式「イン・ザ・ラウンド」は彼からインスパイアされて始まったという記述があるのです。詳しくはコチラ。
筆者の手元にある資料「THE READER'S DIGEST Country and Western SONGBOOK」によると、この楽曲はシュリッツが1976年、同年に他界した父親を偲んで書いたとのこと。父親はギャンブラーでは無かったが、父親との関係に向き合うためにこの曲を書き上げたそうで、この時シュリッツはまだ23歳でした。
当初この楽曲はボビー・ベアにより歌われたもののヒットせず。しかし発表以降、ジョニー・キャッシュ等多くのミュージシャンにじわじわと注目されていきます。そして制作から2年を経た1978年、バンドからソロ歌手に転向したばかりの米歌手ケニー・ロジャースにより採用され、同年11月のアルバムタイトル曲としてシングル・カット。すると全米カントリー・チャートで第1位、Billboard Hot 100でも第16位を記録する大ヒットとなりました。
曲を聴く前にイメージしたいこと
行き先のない列車で出会った老ギャンブラー。彼は1杯のウイスキーと引き換えに自身が勝負事で培った人生訓を主人公に語る。「耐える時、退く時、逃げる時を見極めろ」。ひととおり語った後、彼は眠りにつきそのまま息を引き取る。そして彼の残した言葉は主人公の心に“切り札”として残る……。
この楽曲で語られているギャンブルの競技は、歌詞の中に hold 'em / fold 'em や dealing、hand といった専門用語が含まれることから、ポーカーの一種「テキサス・ホールデム(Texas hold 'em)」であると推測します。ビヨンセの楽曲にも同名曲がありますよね。
テキサス・ホールデムにおける駆け引きは、賭けること以上に、相手の顔色を読んで「いつ勝負から降りるか」が重要。筆者はギャンブルの類を一切やらないのですが、この翻訳にあたり色々調べて、パチンコみたいな射幸心を煽るばかりのヤツならともかく、このホールデムみたいな人生観に通じる奥深い知的エンターテインメントなら、ちょっとやってみようかなという気にもなりますね。そんな気にさせる魅力がこの楽曲にはあります。
カジノ大国アメリカですから、人生の浮き沈みも駆け引きの結果、みたいな考えが人々の根底にあり、それが多くのアメリカ人にこの楽曲が受け入れられている理由なのでしょう。それにしても、こんな歌をモノにしてしまう若干40歳(!)ケニー・ロジャースの老成っぷりにはミュージック・ビデオを見るたびに驚かされます。筆者は50歳になったばかりですが、貫禄無さすぎ。ポーカーでもやればもうちょい大人っぽくなるんかいな……それではどうぞ!
歌詞と対訳
On a warm summer's evenin' on a train bound for nowhere
生暖かい夏の夕暮れ 行く宛のない列車の中で
I met up with a gambler, we were both too tired to SLEEP
出会った1人のギャンブラー お互い疲れすぎて眠れない
So we took turns a-starin' out the window at the darkness
俺たちは交互に 車窓の暗がりを眺めていたが
'Til boredom overtook us and he began to SPEAK
いよいよ退屈になると 彼はこう語り始めた
He said, "Son, I've made a life out of readin' people's FACES
小僧、俺は人の表情を読むことで人生を生き延びてきた
And knowin' what their cards were by the way they held their eyes
持ち札が何かお見通しさ 相手の目をじっくり見ればな
So if you don't mind my sayin', I can see you're out of ACES
言わせてもらうぜ お前、エースを持ってないんだろう
For a taste of your whiskey I'll give you some advice"
そのウイスキー1杯と引換えに アドバイスをくれてやる
So I handed him my bottle and he drank down my last swallow
ボトルを渡すと彼は とっておきの一杯を飲み干して
Then he bummed a cigarette and asked me for a LIGHT
さらにタバコを1本ねだり 火を貸せとまで言ってきた
And the night got deathly quiet and his face lost all expression
夜のしじまの中で 彼はポーカーフェイスを貫いたまま
Said, "If you're gonna play the game, boy, you gotta learn to play it RIGHT"
こう言った ゲームをするなら「流儀」を学ばなきゃな
You got to know when to hold 'em, know when to fold 'em
見極めるんだ 耐えるべきか そして退くべきかを
Know when to walk away and know when to RUN
いつ立ち去るべきか そしていつ逃げるべきかを
You never count your money when you're sittin' at the table
カジノ台に着いている間は 決して金勘定をするな
There'll be time enough for countin' when the dealing's DONE
ゆっくり数えていいのは 勝負が終わったその後だ
Every gambler knows that the secret to survivin'
ギャンブラーの心得さ 生き残るための秘訣とは
Is knowin' what to throw away and knowing what to KEEP
何を損切りし 何を手元に残すかを知ることだ
'Cause every hand's a winner and every hand's a loser
弱い役で勝つこともあれば 強い役で負けることもある
And the best that you can hope for is to die in your SLEEP
そして 眠ってそのまま死ねるなら 本望というやつだ
And when he finished speakin', he turned back toward the window
彼は話を終えると 窓の方に向き直し
Crushed out his cigarette and faded off to SLEEP
タバコを揉み潰して ゆっくりと深い眠りについた
And somewhere in the darkness, the gambler, he broke even
闇の彼方へと旅立った勝負師の生涯は 損も得も無かったが
But in his final words, I found an ace that I could KEEP
彼の最後の言葉は エースとして俺の持ち札に残った
You got to know when to hold 'em, know when to fold 'em
見極めるんだ 耐えるべきか そして退くべきかを
Know when to walk away and know when to RUN
いつ立ち去るべきか そしていつ逃げるべきかを
You never count your money when you're sittin' at the table
カジノ台に着いている間は 決して金勘定をするな
There'll be time enough for countin' when the dealing's DONE
ゆっくり数えていいのは 勝負が終わったその後だ
when the dealing's done……deal は本来「取引」ですが、ポーカーにおけるディールとは「ゲームの1ラウンド」を、もしくはディーラー(カードを配って場を仕切る人)がカードを配る動作のことを示すそうです。
'Cause every hand's a winner and every hand's a loser……この hand もポーカー専門用語。将棋の一手・二手と同様に「手」と表現することもありますが、ポーカーは持ち札の組み合わせで勝負を決めるので麻雀に倣って「役」のことと解釈し文脈を踏まえて少々意訳しました。弱い役でも強い役でも、相手を上回っていれば勝つ…。相手の顔色をうかがって駆け引きするマインドスポーツとしてのポーカーをうまく表現しているラインで、筆者は気に入っています。
この曲の大ヒットによって自らの代表曲を手にしたケニーですが、味をしめたのか(笑)調子に乗って自らが主演する同名のTVドラマシリーズを制作。90年代まで続くロング・シリーズになったので、ケニーさんの「攻める時は攻める」ギャンブラー気質は、良い方向に作用したのですね。
