Desperados Waiting For The Train 歌詞と対訳

楽曲について

Desperados Waiting For The Train / written by Guy Clark
テキサス出身のシンガー・ソングライター、ガイ・クラーク(1941年生)。タウンズ・ヴァン・ザント等とともに商業主義とは一線を画すアウトロー・カントリーのソングライター・シーンで活動し、その活動は後に「アメリカーナ」と呼ばれる音楽の源流になります。
この楽曲は、35歳で発表したガイのデビューアルバム「Old No. 1」に収録( L.A. Freeway の項もご参照されたし)。作詞作曲はガイ自身ですが、本人以前にジェリー・ジェフ・ウォーカー、リタ・クーリッジ、デイヴィッド・アラン・コーなどが先取りして歌っているのを見ると、ソングライターとしての注目度はデビュー以前から非常に高かったのでしょう。
極めつきはジョニー・キャッシュ、ウェイロン・ジェニングス、ウィリー・ネルソン、クリス・クリストファーソンからなるカントリーのスーパーグループ「ハイウェイメン」によるカヴァー。1985年9月に発表されると、ビルボードのカントリー・チャートで15位を記録しています。その後もナンシー・グリフィスが1998年にカヴァーするなど、まさに世代を超えて歌い継がれている名曲と言えます。

曲を聴く前にイメージしたいこと

この曲はガイ自身が、祖母の恋人で幼少期に親しくした老人ジャック・プリッグ(Jack Prigg 1886 - 1970)を偲んで書いたと述べています。ガイの父が第二次世界対戦に従軍中、ジャックは祖父代わりとして、幼いガイを床屋に連れて行ったり、西部劇を見せたり、子ども用プールに連れて行ったりしたそう。アウトローの雰囲気漂う流浪の石油掘削工ジャックから少年ガイは人生の多くを学んだ、ということが歌詞の内容から伝わってきます。
拙note のプロフィール記事に「英語の歌詞は、ほぼ100%何らかの形でライミングが盛り込まれている」と記述していますが、この曲はライミングらしいライミングがほぼありません。多くの翻訳をしていると稀にそういう曲に出会いますが、総じて実体験やストーリー仕立ての内容の際にライミングの優先度を下げる傾向があるように思えます(例:Green, Green Grass of Home)。敢えてライミングをしないことで実録としての説得力を持たせる、というのもある種の songwriting的様式なのかもしれません。
さらに、楽曲のモチーフに西部劇が用いられるのも特徴的。同じ傾向は同胞タウンズ・ヴァン・ザントの「Pancho and Lefty」にも見られますが、70年代に失われたアメリカ的自由の象徴としてのアウトロー像を西部劇のヒーローに見出しているのでしょう。
ゴールドラッシュを機に整備された鉄道=train も、この曲における最重要アイテム。いかなる冒険を経ようとも、人生とは目的地=死に向かう旅路。終着駅に向かう汽車を待ちながら、若者と老人は最後に心を通わせる。歌詞を通じて実体験を克明に記録せんとするガイの気迫が伝わってきます。誰のためでもなくガイが自分のために書いた極めてパーソナルな曲ですが、そんな曲だからこそ、心揺さぶられずに聴くことはできない。これこそが songwriting の本質という気がします……それではどうぞ!

歌詞と対訳

I'd play the Red River Valley
俺が「赤い河の谷間」を歌うと
And he'd sit in the kitchen and CRY
彼は キッチンに座って泣いていた
And run his fingers through seventy years of livin'
そして 70年の人生を指でなぞっては
And wonder, "Lord, has ever' well I've drilled gone DRY?"
気にかけるんだ 掘った油田が全て枯れたのではと
We was friends, me and this old man
この老人と 俺は 友だちだった
We was like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように
Like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように

He's a drifter and a driller of oil wells
彼は放浪者で 油井の採掘人だった
And an old school man of the world
そして いわゆる昔気質の男だった
He taught me how to drive his car when he's too drunk to
車の運転を教えてくれた時は ずいぶん酔っ払っていた
And he'd wink and give me money for the girls
親に内緒で 女遊びに使う金をくれたりもした
And our lives was like some old western movie
俺たちの生き様はまるで 古い西部劇のようだった
Like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように
Like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように

From the time that I could walk he'd take me with him
独り立ちした俺を 連れて行ってくれたのは
To a bar called the Green Frog Cafe
「緑の蛙のカフェ」そんな名前のバーだった
And there was old men with beer guts and dominoes
ビールっ腹でドミノに興じる ジジイどもが 
Lying 'bout their lives while they'd played
賭けながら語る それぞれの人生は 全部ホラだったな
And I was just a kid that they all called his sidekick
みんな ガキだった俺のことをヤツの相棒と呼んでいた
We was like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように
Like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように

One day I looked up and he's pushin' eighty
いつのまにか 彼は80歳目前になっていた
And there's brown tobacco stains all down his chin
彼のアゴ周りは タバコの汚いシミでいっぱい
Well to me he's one of the heroes of this country
それでも彼は 俺にとって誇れる英雄の一人
So why's he all dressed up like them old men
あのジジイどもと 同じような身なりだとしても
Drinking beer and playin' Moon and Forty-two
ビールと賭けドミノに耽る奴らと同じだとしても
Just like a desperado waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように
Like a desperado waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように

And then the day before he died, I went to see him
彼が死ぬ前日に 俺は彼に会いに行った
I was grown and he was almost gone
俺はそこそこ大人になって 彼はもう末期だった
So we just closed our eyes and dreamed us up a kitchen
俺たちは目を閉じて あのキッチンの光景を思い出した
And sang another verse to that old song
そして例の古い曲に 別の歌詞をつけて歌ったんだ
"Come on, Jack, that son of a bitch is coming"
さあジャック、お迎えのクソ野郎が来たようだぜ
And we're desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように
Like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように
Like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように
Like desperados waiting for a train
汽車を待つ ならず者一味のように

  • 冒頭の I'd は play が過去分詞ではないので、文法的には I would の略になりますが、歌詞全体の文脈から判断して I had か I did の略として意訳しています(2行目の he'd も同様)。他にも We was とか、あえて文法的に誤った表現をするのは歌詞を「崩す」一種の技法なのかもしれません。

  • Red River Valley……西部開拓時代の古いアメリカ民謡。ゴールドラッシュの元で西海岸を目指す白人男性が、立ち寄った「赤い河の谷間」近くの村で出会ったネイティブ・アメリカン女性との儚い恋を歌っています。

  • 20世紀初頭、テキサスで石油が発見され「噴出時代」と呼ばれる空前の石油ブームが起こります。アメリカは世界有数の産油国となり、石油エネルギーは様々な産業を下支えしますが、第二次世界大戦を経て次第に斜陽化。70歳を過ぎたジャックが「掘った油田は全て枯れたのか」と嘆くに至る、というわけです。

  • desperado……これも西部開拓時代の無法者を示す言葉。イーグルスの同名楽曲の邦題「ならず者」のインパクトが強くそれに倣いましたが、複数形になっているため、「ならず者一味」として主人公と老人の絆を表現しているのは今回の翻訳のポイントです。

  • Green Frog Cafe……ガイの出生地であり幼少期を過ごしたテキサス州モナハンズに実際にあったお店だそうです。店舗の実名を出す点も、この曲がガイの実体験に基づく内容であることを強調しているように思えます。

  • Moon / Forty-two……どちらもテキサス発祥の、ドミノでプレイするゲームの名称。筆者はドミノについて詳しくないのですが、日本における麻雀みたいな位置づけなんですかね。いかにも西部劇に登場する荒くれ者が興じてそうな娯楽です。

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