My Ever Changing Moods 歌詞と対訳
楽曲について
My Ever Changing Moods / written by Paul Weller
今や英ロック界の重鎮として知られるポール・ウェラー。彼がかつて率いたポップ・ロックバンドであるスタイル・カウンシル(The Style Council)が1984年に発表したデビュー・アルバム「カフェ・ブリュ(Café Bleu)」に収録され、先行シングルとしてもリリースされた楽曲です。
ただしアルバム・バージョンがピアノのみをバックにしっとり歌い上げるバラード調なのに対し、シングル版はソウル・ポップ風の軽快なアレンジの上、歌詞の一部をカット(後述)。いろいろあってややこしいのですが、本稿の内容はシングル盤におけるカット前の歌詞を完全収録した12インチ・シングル版に基づいています。
シングル版は全英チャートで5位、さらにアメリカの Billboard Hot 100 では最高位29位を記録。バンド唯一の全米Top40ヒットとなりますが、この影響でアルバム「カフェ・ブリュ」は、アメリカではこの曲からタイトルを拝借し「My Ever Changing Moods」として発売されることとなりました。
ポール自身が作詞作曲したこの楽曲は本人のお気に入りなのか、ソロ・アーティストに転じて以降もアレンジを変えつつライブで演奏され続けています。また日本の女性アーティスト BONNIE PINKが、2012年のシングル「街の名前」のカップリングとしてカヴァー・バージョンを収録しています。
曲を聴く前にイメージしたいこと
当時のポール・ウェラー自身の心境を色濃く反映した、自叙伝的な作品と筆者は解釈しています。彼のキャリア最初のバンド、ザ・ジャムをまさに人気絶頂のタイミングで解散させ(The Ghostsの項もご参照ください)、自分のやりたい音楽を追求するために結成した新グループ。その新しい船出を象徴する記念碑的な作品です。
タイトルの「My Ever Changing Moods」は、気まぐれという意味が転じて、音楽性を変え続けながらも自分の信念だけは決して曲げないポール自身の姿を(逆説的に)うまく言い表しています。一見ジャズの名曲?と思わせるくらい響きが良いですよね。
歌詞の前半では、ザ・ジャムの成功に安住することへの葛藤や、その初期においてパンク的批判精神があった音楽性の変化を「丸くなった」と受け取られることへの複雑な思いが描かれています。一方でその背景にはレコード会社上層部から政治色を抑えるよう圧力をかけられたと思わせる箇所もあり、理想と現実の狭間で揺れる彼の苦悩が浮かび上がります。
さらに3番以降では、無責任な大人たちによって未来を背負わされる子ども世代に言及し、そこから権力者や社会への批判に大展開。その怒りは最後の4番で頂点に達するわけですが、ちょっと過激すぎたのかシングル盤でこの部分はカットされています(笑)。
スタカンはこの後もファンを置き去りにする音楽的実験を貪欲に繰り返し、その意欲に反比例するようにセールスは落ち込み、最終的にレコード会社にアルバムリリースを拒否され自然消滅に至るわけですが、気まぐれどころか「こんな生き方しかできない」という頑固者ポール・ウェラーの矜持たるこの曲は、その後のソロ・アーティストとしての劇的な復活劇を見届けた上で聴くと、彼の人間的魅力がより浮き彫りになりますね……それではどうぞ!
歌詞と対訳
Daylight turns to moonlight
日差しは 月灯りへと変わり
And I'm at my BEST
俺は今 最高の気分さ
Praising the way it all works
全て順調だと 自画自賛しながら
And gazing upon the REST
安らぎの日々を 見据えてる
The cool before the WARM, the calm after the STORM
温かさの前の涼しさ 嵐が去った後の穏やかさ
The cool before the WARM, the calm after the STORM
温かさの前の涼しさ 嵐が去った後の穏やかさ
I wish to stay forever
ずっとこのままでいたいと思う
Letting this be my FOOD
この状況に甘んじて食っていければ
Oh, but I'm caught up in a whirlwind
ああ、でも 逃れられない この情熱と
And my ever changing MOODS
俺自身の 気まぐれな心からは
Bitter turns to sugar
辛辣さが 甘さに変わって
Some call a passive TUNE
受け身の曲になったと言う奴もいる
But the day things turn sweet for me
でも 現実に甘さを享受する日々は
Won't be too SOON
俺には到底 訪れそうにない
The hush before the silence, the winds after the blast
静寂の前の沈黙 炸裂した後の爆風
The hush before the silence, the winds after the blast
静寂の前の沈黙 炸裂した後の爆風
I wish we'd move together
俺達 一蓮托生だったはずなのに
This time the bosses SUED
お上の奴らが 俺達に文句を言ってきた
Oh, but we're caught up in the wilderness
ああ、でも俺達 逃れられない この焼け野原と
And an ever changing MOOD
気まぐれな心からは
Teardrops turn to children
涙 すなわち 子どもたちのことだ
Who've never had the TIME to commit the sins
この子たちには 罪を冒す時間すら無い
They pay for through another's evil MIND
他者の邪悪な心の 代償を負わされているから
The love after the HATE, the love we leave too LATE
憎しみを経た愛 それはもはや 手遅れの愛
The love after the HATE, the love we leave too LATE
憎しみを経た愛 それはもはや 手遅れの愛
I wish we'd wake up one day
ある日ふと 目が覚めたら
An' everyone feel MOVED
誰もが感動する日であってほしいと願う
Oh, but we're caught up in the dailies
ああ、でも俺達 逃れられない 現実世界の日常と
And an ever changing MOOD
気まぐれな心からは
Evil turns to statues
悪人が 銅像になり
And masses form a LINE
大衆が その前に行列を作る
But I know which way I'd run to
でも俺は知っている どちらの道を選ぶべきか
If the choice was MINE
俺に選ぶ権利があればの話だが
The past is knowledge, the present our mistake
過去は「叡智」を 現在は「過ち」を そして
And the future we always leave too late
未来は「後回し」を積み重ねた結果だ
I wish we'd come to our senses
俺達 いいかげん気づくべきだろう
And see there is no TRUTH
あいつらに 真理なんてあるものか
In those who promote the confusion
混乱を 助長するだけ助長して
For this ever changing MOOD
この気まぐれな心を かき乱す奴らに
the winds after the blast……1980年代初頭のイギリスは、北アイルランド紛争にフォークランド紛争と国際的な問題を多数抱え、冷戦中の米ソを尻目に世界で最も激しくドンパチしていた国でした。このラインを含む第2コーラスは核保有国でもあるイギリスそのものの暗喩、と捉えることができるのかもしれません。
children who've never had the time to commit the sins……songwriting は基本的に、1小節に1ラインといった区切りのいい構成に言葉を収めますが、時折こうして音楽的区切りに対し歌詞を逸脱させるケースがあり、ポール・マッカートニーやギルバート・オサリバンなど特にイギリス人のソングライターがその技法を用いる傾向にあるようです。
