Hot Burrito #1 歌詞と対訳
楽曲について
Hot Burrito #1 / written by Gram Parsons, Chris Ethridge
グラム・パーソンズ(以下GP)率いるフライング・ブリトー・ブラザーズ、1969年発表の1stアルバム「黄金の城(The Gilded Palace of Sin)」に収録。シングル・カットされたわけでもなく同アルバムも特に商業的成功を収めたわけではありませんが、カントリー・ロックという革新的なサウンドを世に広めた同アルバムの中でも白眉のバラードということで人気が高いです。作者はGP自身と、同バンドのベーシストであるクリス・エスリッジ。
カヴァー・バージョンはいくつかありますが、特に有名なのはエルヴィス・コステロが1981年に発表したカヴァー・アルバム「オールモスト・ブルー(Almost Blue)」収録分(タイトルは「I'm Your Toy」と改題)。尖りまくった活動初期のイメージとは対象的に切々と歌い上げるコステロのバージョンに、彼のsongwriterとしてのルーツを垣間見ることができて興味深いです。
曲を聴く前にイメージしたいこと
……君は今、別の男性の元へ。でもかつて君に愛し合うことの手引をしたのはこの僕だ。君にオモチャ扱いされても、僕は君以外考えられない……と、切々と歌い上げるバラードです。
アルバム自体がカントリー・ロックの代表作と称され、この曲もペダル・スティール・ギターを中心としたカントリーアレンジですが、歌詞に関してはカントリー的なものはあまり感じません。「君」「彼」にまつわる「僕」の心境、その解像度が曲が進むにつれ上がっていくという点では、筆者はこの曲に極めてソウル的なものを感じます。「The Dark End of the Street」などソウル・クラシックのカヴァーを同アルバムに含めているように、GPの根っこにはソウル・ミュージックがあり、この曲はGP流のソウル・ミュージックであると筆者は解釈します。
とはいえ熱い想いを直球で伝える真正ソウルという感じではなく、女々しく僻んだ「カントリー的なブルーの心境」が入っているのがGPらしさ。過去に「Hickory Wind」「Sin City」「Return of the Grievous Angel」といった彼の作品を訳しているうちに浮かび上がるのは、GP本人のダメ人間クズ人間っぷり。そんな前提があると、どうしてもイタい男が粋がって元カノに想いを募らせる感じの翻訳になってしまいました(笑)。そういうちょっと斜に構えた感じはコステロにも通じ、コステロの歌唱で聴くとコステロが書いた曲のように聴こえるから不思議です……それではどうぞ!
歌詞と対訳
You may be sweet and nice
君は確かに 愛らしくて優しいけど
But that won't keep you warm at night
だからといって穏やかな夜を過ごせると思うなよ
'Cause I'm the one who showed you HOW
なぜって 君に教えてやったのは この僕だろ
To do the things you're doing NOW
君が 彼と今やってることの 手ほどきを
He may feel all your CHARMS
彼はきっと 君に魅力を感じて
He may hold you in his ARMS
その両腕で 君を抱きしめるだろう
But I'm the one who let you in
でも 君を本当に受け入れるべきなのは僕だ
I was right beside you then
かつて 確かに君の傍らにいたように
Once upon a time
昔 昔のこと
You let me feel you deep INSIDE
君の意のままに 僕は君の沼にハマった
And nobody knew, nobody saw
誰も知られず 誰にも見られない場所で
Do you remember the way you CRIED?
君がどんな風に叫んでいたか覚えているかい?
I'm your toy, I'm your old boy
結局僕は 君のオモチャ 君の元カレ
But I don't want no one but you to love me
でも僕は 君以外に愛されたいと思わない
No, I wouldn't LIE
ああ、嘘なんて言うもんか
You know I'm not that kind of GUY
僕がそんな男じゃないってこと よく知っているだろう
Once upon a time
昔 昔のこと
You let me feel you deep INSIDE
君の意のままに 僕は君の沼にハマった
And nobody knew, nobody saw
誰も知られず 誰にも見られない場所で
Do you remember the way you CRIED?
君がどんな風に叫んでいたか覚えているかい?
I'm your toy, I'm your old boy
結局僕は 君のオモチャ 君の元カレ
But I don't want no one but you to love me
でも僕は 君以外に愛されたいと思わない
No, I wouldn't LIE
ああ、嘘なんて言うもんか
You know I'm not that kind of GUY
僕がそんな男じゃないってこと よく知っているだろう
deep inside……I feel you deep inside=僕は君の内側の深い部分まで感じる。直訳するとちょっと艶かしくなってしまいますが、最近は「沼る」という便利な言葉があり、この部分にピッタリはまりました。
I'm your toy……そもそも「空飛ぶブリトー兄弟」という珍妙なバンド名。ヌーディ・スーツで着飾ったりヴィジュアル重視の割にライブ演奏が酷かったり、粋がったミュージック・ビデオといい、あらゆる面で(GPの)厨二病的なイタさが表出するこのバンド。アルバムや曲のタイトルに無意味に「ブリトー」を付けたがる結果、この曲は「良い曲なのにタイトルが最悪な曲」の代表例となりました。というわけでコステロがこの曲のカヴァーを収録する際は、いたたまれなかったのか「I'm Your Toy」と改題しています。
