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第8話:売れるとわかっていた「近道」を、あえて歩まなかった理由

私たちは2016年10月に自社ECサイト「AMVEL UMBRELLA STORE」を立ち上げました。一方で、Amazonや楽天市場といった大手ショッピングモールへの出店を開始したのは、創業から丸6年が経過した2022年末のことでした。

ECビジネスにおいて、大手モールへの出店は「最も早く売上を立てるための近道」です。圧倒的な集客力を持つモールに出店すれば、私たちの傘が今よりも早く、多くの人に売れることはわかっていました。

それでも私たちは、その誘惑をあえて我慢し、自社ドメインのオンラインストアのみで販売を続ける道を選びました。

なぜ、そこまで頑なに自社ストアにこだわったのか。 理由は極めてシンプルです。

「プラットフォームの集客力(アルゴリズム)で売れているうちは、本当にブランドが選ばれているわけではない」と考えたからです。

モールの中では、私たちの傘は無数の「競合商品」と並べられ、検索結果の1枚のパネルとして消費されます。そこでは、私たちがどれだけ「引き算の設計思想」や「素材づくりの背景」を実直に語ろうとしても、比較されるのは価格やポイント還元率、あるいは表面的なデザインだけになってしまいます。

まずは自社ドメインのストアにおいて、アンベルというブランドの存在を認識し、私たちの思想に共感して「指名買い」をしてくれるお客様との関係を確立させる。その強固な土台が作れていなければ、たとえモールに出店して一時的に売れたとしても、長期的な成功は絶対にあり得ないという強い確信(危機感)がありました。

この「遠回り」とも言える選択の結果、私たちの自社ストアには、他では見られないような変化が起き始めました。

現在、私たちのストアには、お客様から非常に長文で、熱量の高いレビューが毎日のように届きます。 「持って驚いた。カバンに入れっぱなしでも全く重さを感じない」「本当に日陰を持ち歩いているように涼しい」といった喜びの声。

それだけではありません。 「秒速プリーツは思ったほど秒速ではないが、他よりははるかに畳みやすい」「生地が薄くてペラペラするが、軽さを考えれば納得」「縮めるのに少し力がいるが、この軽さなら目をつぶれる」といった、製品の弱みやトレードオフの関係までも、お客様がロジカルに理解した上で、納得して愛用してくださっている声が並んでいます。

さらに、私たちが最も嬉しかったのは、修理(リペア)に関するレビューです。 「1年保証の対応が丁寧だった」「街の修理屋で高額な見積もりと数週間の待ち時間を提示された骨の折れが、アンベルに頼んだら550円と送料だけで1週間で直って戻ってきた」「修繕しながら一生大切に使いたい」

こうした、単なる「売り手と買い手」を超えた、深い信頼関係と対話は、安易にモールの自動的なシステムに頼っていたら、決して築くことはできなかったはずです。

こうして自社ストアでの指名買いの土台を築きつつ、私たちがモールへの出店へと舵を切ったのには、時代背景の大きな変化がありました。

2020年から2021年にかけて、コロナ禍の度重なる行動制限により、世の中の人流は激減しました。「外出」そのものが減るなか、傘という道具の需要も当然落ち込み、私たちもじっと様子を見るしかない時期が続いたのです。

そして2022年。ようやく行動制限が解除され「ウィズコロナ」が定着し、街に人流が復活し始めました。 このタイミングで、お客様が「より購入しやすい環境」を整えることが必要だと判断し、利便性と選択肢を高めるために、満を持してモールへの出店を開始したのです。

安易な近道を選ばず、遠回りでも本質的な土台を作り、時代とお客様の動きに合わせて販路を広げてきたこと。このブレない一歩一歩こそが、今のアンベルの強固な経営基盤であり、私たちの誇りです。

(第9話へ続く)

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