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腸は「第2の脳」? ⑤マイスナー神経叢とリーキーガットと過敏性腸症候群

これまでの4回の連載記事で、私たちのお腹の中にいる、刺胞動物から受け継がれた「2枚の網タイツ(腸管神経系)」が、現代社会のストレスや栄養不足、血糖値の乱高下によってボロボロになっている可能性を見てきました。

4回までは、主にアウエルバッハの神経叢に注目してきましたが、今回はマイスナー神経叢にスポットライトを当ててみます。

(AIさんに作ってもらった漫画風の挿絵も入れてみますね。スマホで見ると字が小さいですが。。。)


マイスナー神経叢と「門番」の仕事


小腸と大腸の粘膜のすぐ裏側には「マイスナー神経叢」が存在する。アウエルバッハが「動きの指揮者」なら、マイスナーは腸のバリア機能を司る「検問所の門番」だ。

マイスナー神経叢は、腸粘膜のすぐそばで常に現場を監視している。

  • 感知: 流れてきた食べ物が十分に分解されているか、有害な毒素はないかを察知する。

  • 調整: その情報をもとに、腸液の分泌を命じたり、腸上皮細胞同士の結合(タイトジャンクション)を締めたり緩めたりして、吸収の可否を判断する。

マイスナー神経叢が門を開ける機能を持っているのは、体を守るための防御反応としての意味がある。肥満細胞を刺激してヒスタミンを放出させ、タイトジャンクションを開け、血管から水分を腸管内へ引き出すことで、有害物質を一気に「下痢」として洗い流そうとするのだ。


すなわち、マイスナー神経叢は、生理的(健康的)な反応として一過性にリーキーガットの状態を作ったりする。能動的にタイトジャンクションをコントロールしているのだ。

一方、小麦などに含まれるグルテン(の成分であるグリアジン)は、腸の上皮細胞にある受容体に結合し、ゾヌリン(Zonulin)というタンパク質の過剰分泌を促す。このゾヌリンが細胞骨格を変化させ、タイトジャンクションを強制的(病的)に開いてしまう。

そうすると、本来通してはいけない有害物質が侵入することにより腸の炎症が引き起こされ、放出された炎症物質(サイトカインやヒスタミンなど)がマイスナー神経叢を刺激してしまう。

健康な人なら、このぐらいの「ボヤ騒ぎ」はすぐに治してしまうかもしれないが、もともと有害物質を多く持ってたり、修復機能が弱かったりという弱点持ちの人なら、このボヤがきっかけで、マイスナー神経叢に影響がおよぶ。

「リーキーガット」においては「食べ物(グルテンなど)や腸内細菌」のみが注目されがちだが、実は、その背後でマイスナー神経叢という門番が刺激されて正常な判断ができなくなり、パニックを起こして門(タイトジャンクション)を開けっ放しにしてしまうことがバリア崩壊を長引かせる理由となると考えられる。


過敏性腸症候群(IBS)とは?


ここで、管理栄養士国家試験にもよく出てくる過敏性腸症候群(IBS)について考えてみたい。

IBSとは、器質的な異常がないにもかかわらず、下痢、便秘、あるいは下痢と便秘を交互に繰り返し、腹痛、腹部膨満感などのおなかの症状を示す疾患だ。精神的ストレスと深くかかわりがあるといわれており、致死的な疾患ではないが、生活の質が著しく損なわれる疾患である。

管理栄養士の国家試験では「器質的な異常がないにもかかわらず」という、他の炎症性腸疾患とは違うポイントを問う問題が出ている。

興味深いことに、近年、このIBSとマイスナー神経叢の関わりについては、かなり研究が積み上げられ、解明が進んでいる。

IBSの患者さんの腸では「マイスナー神経叢が『過敏』になっていて、肥満細胞から分泌されるヒスタミンなどの物質も多くなっている」ということが分かっている。

リーキーガットから腸の炎症というボヤ程度の火事がきっかけで、炎症性サイトカインによりマイスナー神経叢が刺激される、と先ほど述べたが、そうやって刺激された結果、『過敏』な状態になってしまうのだ。

『過敏』になったマイスナー神経叢は異常に興奮して、SOS信号となるような化学物質を分泌するようになり、これが肥満細胞を引き寄せる。

たくさんの肥満細胞がマイスナー神経叢に接近し、近場でヒスタミンなどを放出すると、マイスナー神経叢はますます刺激され興奮を続ける。このために、ちょっとの刺激でも耐え難い腹痛が起こったりする。

このように、「神経と免疫の悪循環」から抜け出せなくなること。これが、IBSがなかなか治らない原因かもしれない。

そのため、グルテンフリー食を試すとIBSの症状が和らぐケースがあるのは、このリーキーガットの要因の一つを取り除いているからではないか、と推測されています。(※症状には個人差があります)


残酷なパラドックスと「地獄」の正体


ここで一つ、残酷なパラドックスが起きていることもお伝えしたい。 第2回でお話しした通り、ストレスがかかると、脳や神経系で大量の栄養(コリンやビタミンB1など)が消費される。その結果、腸などの現場に回る分が足りなくなり、慢性的な『燃料不足』に陥りやすくなると考えられる。


このような状態では、腸を動かすエネルギーはないのに、肥満細胞との悪循環によって、痛みを感じるセンサーだけが過敏に研ぎ澄まされてしまう。つまり、腸を動かす力は残っていないのに、痛みだけは敏感に感じてしまう。この逃げ場のないツライ悪循環こそが、IBSの苦しみの正体の一つなのかもしれない。

「器質的な異常がないにもかかわらず」というのは、あくまでも、内視鏡検査などで見る限りは普通に見える、とか、出血はしてない、というだけで、ミクロレベルではこのようなことが起こっているのだ。


この門番(マイスナー神経叢)が正常な判断力を取り戻すにはどうすればいいのでしょうか。

次回は、いよいよ最終回です!網タイツさん達の再起動のロードマップをお届けします!!


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