So far(& beyond)|短編|家具文学
家具文学とは・・・
日常空間に静かに佇む家具の目線から、人の生活や価値観を描き出す文学ジャンルである。家具が見つめる日常のささやかな動作や配置の変化を通して、個人の営みや生き方の内面を静かに浮かび上がらせるーー
これまで(と、これから)
私は知っているよ
あなたにとって私は安心出来る場所
出会いから今までの“おもい”が重なって
私の左側半分は沈み込んで戻らなくなった
私は知っているよ
あなたは一人の時間がとても好き
電話したり歌をうたったりぼーっとしたり
一日中この場所から動かないことに幸せなんだ
私は知っているよ
あなたがとても繊細な人だってこと
いつも誰かと会って家に帰ってくると
うまくみんなと話せたかなと一人で泣いている
私は知っているよ
あなたに大切な人ができたってことも
あの人は右側半分でいつも話を聞いてくれるね
二つの“おもい”がつり合ったなら私も嬉しい
私は知っているよ
そろそろお別れの時が近いことを
これまで“おもい”を預けてくれてありがとう
これからは両側が同じだけ沈んでいくね
作者コメント
我が家のソファは妻が持ってきたものだった。
安物の二人掛けソファで、片側の座面だけやわらかく沈み込んでいた。
それは彼女がずっとそちら側に座っていたことを示している。
この度、新しいソファを購入して、元のソファは引き取ってもらうことになった。
私はそのボロボロのソファに想いを馳せてしまった。
沈み込んだ分だけ、あのソファは幸せだったんじゃないかな。
そして新しいソファを迎え入れた時、彼女はこう言ったんだ。
「あのソファさ、この家の雰囲気に合ってないと思ってたんだよね、新しいの買えてよかったー♪」
まあ・・・そんなものなのかな・・・?

また新しい文学ジャンルを生み出してしまいましたが、お楽しみいただけたのであれば幸いです。
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