『東 京<reprise>』舞台脚本②
※作品詳細、Storyは「『東 京<reprise>』舞台脚本①」を参照ください。
登場人物
遠野 三明(とうの みつあき)(25)
電車に乗ろうとしない男。元バンドマン、現会社員。5年前は大学生。
近野 美嘉(こんの みか)(26)
電車に乗ろうとしない女。
森下 陽子(もりした ようこ)(31)
インフォメーション窓口の職員。5年前も同職。
関 晴海(せき はるみ)(31)
忘れ物承り所の職員。5年前も同職。
吾妻 古都会(あずま ことえ)(27)
東京グランスタのカフェ「Drip Maria」の店長。5年前は同店のアルバイト。
内田 幸夫(うちだ ゆきお)(23)
東京駅勤務のJR職員。5年前は上京したての学生。
高良 マチ(たから まち)(25)
東京在住のOL。はじめに仕事を依頼する。5年前は大学生。
濱 はじめ(はま はじめ)(32)
謎の男。5年前は無職。
江藤ひかる(えとう ひかる)(33)
出版社勤務のライター。5年前は違う出版社に勤めていた。
新橋 京一(しんばし きょういち)(30)
旅行代理店の社員。プロジェクトチームのチーフ。5年前も同職。
荒川 優香(あらかわ ゆうか)(29)
旅行代理店の社員。京一の同期だが部下にあたる。5年前も同職。
月島 アキラ(つきしま あきら)(30)
役者志望の男。今回、夢を諦めることを決意。5年前も同職。
日比谷 周次(ひびや しゅうじ)(45)
タクシーの運転手。5年前は日本中を放浪する自由人。
【脚本②】
※この作品は2014年当時の環境や状況をもとに描かれています。
#2 カフェ
はじめ 「何故って・・・えーっと・・・」
東京駅グランスタにあるカフェ「Drip Maria」
席に座っている女・高良マチ(25)。
今到着したであろう、はじめ。
カウンターでは、カフェの店長・吾妻古都会(27)が作業をしている。
マチ 「約束のお時間から1時間半も経ってますが?」
はじめ 「いやぁ、あの、あれなんすよ、タクシーの運ちゃんのノリが悪くて、やいのやいの言ってる間に、その、タクシーに轢かれたていになって」
マチ 「は?」
はじめ 「いや、冗談です、あの、僕めちゃめちゃ低血圧で、目覚ましとか何個もセットしてたんですけど、いや、目は覚めたんすよ、そりゃあもうバッチリ、そしたらこの雨じゃないすか、僕めちゃめちゃ癖っ毛なんですけど、寝癖とかもうハンパなくて、この上なくハンパなくて、もう全然あの・・・すいません寝坊しました」
マチ 「もういいです」
マチ、財布を持って立ちあがる。
はじめ 「あ、いや、ホントすいません!」
マチ 「飲み物」
はじめ 「え?」
マチ 「コーヒーでいいですか?」
はじめ 「ああ、いや、大丈夫です、僕自分で出しますから」
マチ 「・・・」
はじめ、カウンターに向かう。
マチ、そのまま座る。
はじめ 「あ、すいません」
古都会 「いらっしゃいませ、おはようございます」
はじめ 「えっと、マックスコーヒー的なヤツあります」
古都会 「え?」
はじめ 「知らない?マックスコーヒー?」
古都会 「わかりますけど・・・」
はじめ 「脳ミソにガツンと来るような、甘いヤツないすか?」
古都会 「それでしたら、こちらのカラメルミルクコーヒーはいかがでしょうか?」
はじめ 「じゃあそれで、砂糖3個付けてください」
古都会 「あ、こちら元から甘めになってますよ」
はじめ 「うん、それでも付けてもらえる?一応、保険っていうか、ね」
古都会 「か、かしこまりました」
はじめ 「はい、380円」
古都会 「ありがとうございます、丁度いただきます、少しお時間いただきますので、お席でお待ちください」
はじめ 「はーい」
古都会 「ありがとうございました」
はじめ、席に戻る。
古都会、コーヒーを作りに下がる。
マチ 「・・・」
はじめ 「えーっと、何でしたっけ」
マチ 「とりあえず、はじめまして」
はじめ 「ああ、はじめまして、濱はじめって言います、これでも仕事はマジメです」
マチ 「・・・」
はじめ 「・・・遅れてすいませんでした」
マチ 「高良マチといいます」
はじめ 「ああ、はい、どうも」
マチ 「一つ聞きたいんですけど」
はじめ 「はい」
マチ 「本当に、お金さえ払えば何でもやっていただけるんですよね」
はじめ 「ええ、犬の散歩から浮気調査、あと額によっては法外なことまで」
マチ、テーブルの上に、半分に切り裂かれた写真を置く。
マチ 「・・・この男なんですが」
はじめ 「はい」
古都会、コーヒーをもって現れる。
古都会 「お待たせいたしました、カラメルミルクコーヒーでございます」
はじめ 「お、ありがとー」
古都会 「ごゆっくりどうぞ」
古都会、席から離れようとする。
マチ 「その男を、取り返しがつかないぐらい不幸な目に合わせて」
はじめ・古都会「・・・え?」
#3 休憩室
陽子 「どゆこと?」
休憩室で休んでいる、森下陽子(31)と関晴海(31)。
二人と話している古都会。
古都会 「いや、わかんないんですけどぉ、私が思うに、やばい仕事の依頼とかじゃないでしょうか?」
陽子 「マジぃ?」
晴海 「陽子、これはきっとアレよ、やばい仕事の依頼じゃない?」
陽子 「うん、今古都会ちゃんがそう言ったから」
晴海 「あれ、うそ?」
古都会 「はい」
陽子 「話聞いてなさいよ、春海」
晴海 「あれえ?」
そこに、食事をもって現れる、幸夫。
幸夫 「おはようございまーす」
陽子 「うぃー」
晴海・古都会「おはよー」
陽子 「古都会ちゃん、それで?」
古都会 「え、ああ、それで、聞きすぎたら私も危ないと思って、すぐ離れちゃいました」
陽子 「ええ、そうなの?もったいない、もっと深追いしないと」
古都会 「だってぇ、怖いじゃないですかぁ」
幸夫 「え、なになに?何の話すか?」
晴海 「幸夫君、冷静になって聞くのよ」
幸夫 「え、あ、はい」
晴海 「古都会ちゃんが・・・殺し屋に狙われてるの!」
幸夫 「ええ!?」
陽子 「はい晴海、アンタがまず冷静になろうか、話がぶっ飛んでるから」
晴海 「え?」
古都会 「晴海さん、私は狙われてないです」
晴海 「あれ、そうなの?」
陽子 「アンタは妄想が先走りすぎてんのよ」
幸夫 「あの、話が全然見えないんですけど・・・」
陽子 「古都会ちゃんのお店に、甘党の殺し屋が来たって話」
幸夫 「殺し屋?」
古都会 「いや、まだそうと決まったわけじゃないんだけど」
晴海 「わかったわ陽子」
陽子 「何?」
晴海 「殺し屋は千葉か茨城の人間よ」
陽子 「なんでよ」
晴海 「いい?その男は普段からマックスコーヒーを飲んでる人間ってことでしょ?そしたら千葉か茨城の人間ってことになるじゃない」
陽子 「うん、まず千葉と茨城の人は普段からマックスコーヒーを飲むとは限らない、あと、今マックスコーヒーは全国のコンビニでも販売されてるから、千葉と茨城の人とは限らない」
晴海 「もしくはマックスコーヒーに砂糖3個というのが何かの暗号になっているかもしれないわね」
陽子 「話聞いてる?」
幸夫 「あの、また置いてけぼり食らってるんすけど」
古都会 「あ、ごめんね」
陽子 「あんたにゃあとで話してあげるから、ちょっと黙ってて」
幸夫 「ええ、そんなぁ」
晴海 「幸夫君つまり殺し屋はね」
陽子 「ややこしくなるから春海も黙ってようねー」
晴海 「ええ」
陽子 「で、古都会ちゃん、そのあとは?」
古都会 「えっと・・・そのあとは、何か男の人が写った写真見たり、資料眺めたり・・・」
陽子 「へー、犯行の打ち合わせかねぇ」
晴海 「その男はきっとターゲットね、可哀そうに、消されるわ」
古都会 「あの、ちなみに私、不幸な目に合わせて、ぐらいしか聞いてないので、殺し屋って決まったわけじゃ」
陽子 「いや古都会ちゃん、それは間違いなくなく殺し屋よ」
古都会 「ええ、その自信はどこから・・・?」
陽子 「その方が面白そうだから」
古都会 「ええ?」
陽子 「ねぇねぇ、春海、あとで見に行っちゃう?」
晴海 「え~行っちゃう行っちゃう?」
古都会 「ちょっとやめてくださいよぉ、変に刺激しちゃったら怖いじゃないですか」
陽子 「大丈夫よ、バレないように行くから」
古都会 「陽子さんも春海さんも仕事あるじゃないですか」
陽子 「あ、そうだった」
古都会 「ていうか、私は今日それどころじゃないんですぅ・・・」
陽子 「あれ、何かあんだっけ?」
古都会 「ほらぁ、前話したじゃないですか」
陽子 「え?何だっけ?」
古都会 「取材ですよ」
幸夫 「え?」
陽子 「ああ、そういえば言ってたね、今日だったんだ」
古都会 「そうですよぉ、ただでさえ朝からドキドキしてるのにぃ」
幸夫 「え、取材って何すか?」
古都会 「あ、ごめん、幸夫君には言ってなかった」
幸夫 「え?」
古都会 「今日ね、うちのカフェにフリーペーパーの取材が入るの」
幸夫 「え?そうなの?古都会さんが取材受けんの?」
古都会 「うん」
幸夫 「ええ、何かすげぇ」
陽子 「ほんとよねぇ、初めて会った時は可愛いらしい学生バイトちゃんだったのに、今じゃ取材受けちゃうようなカリスマ店長だもんなぁ」
古都会 「いや、カリスマ店長って」
陽子 「つーか可愛い子の所ばっか取材行きやがって、私の所にも来いよフリーペーパー」
晴海 「あれ、陽子ジェラシー?」
陽子 「うるさい、どうせ30過ぎた独身女の所に取材なんてこないわよ!」
古都会 「あの、一応、女性が店長を務める飲食店の特集らしいので」
陽子 「わかってるっつの」
古都会 「あ、それに、仕事中の陽子さんカッコイイですよ、別人みたいで」
陽子 「え、それは何?仕事中以外はカッコよくないってこと?」
古都会 「いやいや!そういうわけじゃ」
陽子 「あらごめんなさいね揚げ足取っちゃって、リア充様の励ましのお言葉、ありがたく頂戴いたしますわ」
古都会 「ご、ごめんなさいぃぃぃ」
晴海 「ちょっと陽子」
陽子 「・・・ぷっ、冗談よ」
古都会 「へ?」
陽子 「インフォメーションに取材なんて来るわけないでしょ、来たとしても道聞かれるぐらいよ」
古都会 「ええ、からかわないで下さいよぉ」
陽子 「ははは」
古都会 「怖かったぁ」
晴海 「そういえば古都会ちゃん、時間大丈夫?」
古都会 「え?あ!もうこんな時間、戻らないと!」
陽子 「店長さんは大変だ」
古都会 「じゃあすみません、お先に」
晴海 「いってらっしゃい、あとで殺し屋のその後、教えてね」
古都会 「は、はい」
幸夫 「あ、古都会さん」
古都会 「ん?」
幸夫 「取材、がんばって下さいね」
古都会 「あ、うん、ありがとう、じゃあ失礼します」
陽子 「うぃー、ま、いろいろがんばれー」
古都会 「はい」
古都会、休憩室を出ていく。
陽子 「・・・さて、午後も笑顔張り付けて頑張るかぁ」
晴海 「今日傘の忘れ物多そうだな」
陽子 「そっか、雨だもんね」
晴海 「ねぇ陽子、うちにも来ると思う?」
陽子 「何?取材?」
晴海 「殺し屋」
陽子 「ええ?何しに?」
晴海 「んー、凶器落しちゃったとか」
陽子 「いや、だとしても絶対来ないでしょ」
晴海 「そっかぁ・・・」
陽子 「なんでちょっと残念そうなのよ」
幸夫 「・・・あ」
陽子 「ん?」
幸夫 「そうだ」
陽子 「どうしたの?」
幸夫 「あ、いや、殺し屋の話と関係あるかわかんないんすけど」
陽子 「うん」
幸夫 「その、実はホームにもいたんすよ、変な人」
陽子 「変な人?」
晴海 「殺し屋?」
幸夫 「いや、それはどうかわかんないすけど、あの、二人いたんすよ」
陽子 「二人?」
幸夫 「はい、男と女一人ずつ、少し離れてホームに立ってるんす」
陽子 「それがどうしたの?」
幸夫 「それが・・・全然乗らないんすよ、電車に」
陽子 「え?」
幸夫 「朝のピークから、ずーっと何時間も、ホームに立ったまんまなんです」
陽子 「何それ?」
幸夫 「ね、変でしょ?」
晴海 「具合が悪い、とか?」
幸夫 「て思うじゃないすか、だから俺話しかけてみたんすよ、女の方に、大丈夫ですか?って」
晴海 「そしたら?」
幸夫 「そしたら・・・大丈夫です・・・って、超小っちゃい声で」
陽子・晴海「・・・」
幸夫 「なんなんすかねー、ホームなんて電車に乗るか降りるかしかないじゃないすか、なのに二人ともぼーっと突っ立って、暗い顔してるんすよ、何がしたいんすかね?」
陽子 「・・・暗い顔?」
幸夫 「はい、なんていうか、幽霊みたいな、てか、もしかして幽霊だったりして!」
陽子・晴海「・・・」
幸夫 「あれ、どうしたんすか?」
陽子 「あの・・・もしかしてさ・・・」
幸夫 「はい」
陽子 「その二人、アレじゃないの・・・?」
幸夫 「アレって・・・?」
陽子 「・・・飛び込み志願者」
③へつづく。
※本作はフィクションです。登場する人物・場所・店名・出来事は実在のものとは関係ありません。
