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特殊な「ベリフィケーション」の語はなぜ広がった?

「ベリフィケーション」の語を「バリデーション済の分析法が個別の試験室で問題なく実施できるか確かめること」の意味で使う用例は食品分析関連に多いようです。なぜそうなったのか推定してみました。


読者からのアドバイス

実は「ベリフィケーション」の語は、私の書籍執筆過程で生まれた宿題でした。「よくわかる最新分析化学の基本と仕組み[第3版]」の原稿がほぼ書き上がったころ、食品分析業界のかたから
「ベリフィケーションの語も入れた方が良い」
とのアドバイスをいただきました。初版と第2版にこの語はありませんでした。

「ベリフィケーション」の語を知ってはいましたが、自分は日常的に使いません。どんな解説をすれば良いのか、JISと日本薬局方を調べましたが、どちらにも載っていません。とりあえずJIS Q 17025:2018から「検証」の語を本文に書き、元の語はverificationであることを脚注に書きました。しかし、カタカナの「ベリフィケーション」がどこから来たのか、この説明で良かったのか、出版後も宿題として残りました。

大元は米国薬局方か?

ネットで公開されている情報を調べた限りでは、公的規格における「ベリフィケーション」または「verification」の語の取り扱いには3パターンあるようです。
①「バリデーション済の分析法が個別の試験室で問題なく実施できるか確かめること」の意味
②広く「検証」の意味
③使用しない

私が見た範囲では、米国薬局方(USP)だけが①で、JIS、ISO、VIMは②、ICHと日本薬局方は③でした。USPもverification単独で①の意味というわけではなく、1226章のタイトルは「公定法のverification」です。しかし、1225章がバリデーション、その次が1226章なので、分析法のバリデーションとベリフィケーションがセットになっている感じです。

このUSP発祥の「ベリフィケーション」を解説した文書では、当然①の意味で使われています。2013年に埼玉県衛生研究所報に掲載された「地方衛生研究所の医薬品試験検査における新たな課題」、Agilentによる解説「分析メソッドのバリデーション」でUSPを引用しながら使用されています。

USPとは無関係な用例

一方、USPを典拠とせず、何に基づいて使っているか不明な「ベリフィケーション」の用例もあります。
Agilent「ICP-OES による土壌分析ワークフローの自動化」、農林水産省「データの信頼性を客観的に証明するためにできること」、厚生労働科学研究費補助金報告書「食品微生物試験法の国際調和に向けた研究」、2005年にフードシステム研究に掲載された「食品の安全性を確保するための高品質な分析のための仕組み」、SUNATEC「残留農薬の検査結果に求められること」「有害物質検査~本当に意味のある残留農薬・カビ毒の検査~」「自社の検査業務支援」が見つかりました。

土壌分析の一例以外はすべて食品分析での用例です。私の知り合いに聞いてみたところ、食品分析では最初にアドバイスしてくれたかた以外にもう一人、「ベリフィケーション」の語を使うというかたがいました。環境分析のかた一人にも聞きましたが、使ったことはないとのことでした。

SUNATECはこの語を多用していると言ってよいですが、この会社は「食品分析士」の資格制度を運営しています。教育課程の中で「ベリフィケーション」の語も教えるのか、興味がわきます。

私の仮説

これは完全に私の推測ですが、日本で「バリデーション済の分析法が個別の試験室で問題なく実施できるか確かめること」の意味で「ベリフィケーション」の語が使われ始めたのは、直接間接にUSPの影響ではないでしょうか(間接とは、FDAなどの米国機関を想定)。医薬品分析では日本薬局方とICHが、環境分析ではJISが強制規格ですから、これらの分野で米国の規格が影響を及ぼすことは無く、食品分析にのみ影響があったということではないでしょうか。

「ベリフィケーション」の使用上の注意点

個人的な感想ですが、「ベリフィケーション」という言葉は、バリデーションと対になっているように見えて、専門用語っぽいところがクセモノかなと思います。カタカナ語としてはJISにも日本薬局方にもありません。JIS Q 17025:2018の「検証(verification)」は、「バリデーション済の分析法を検証する」意味でも使えますが、材料や化合物などにも使う広い意味の言葉です。また、バリデーション自体も「検証」に含まれます。
「ベリフィケーション」を組織内で使用する場合には、別組織では使われていないかもしれないこと、別の意味かもしれないことを、認識しておく方が良いと思います。

タイトル画像はCopilotで生成

追記
2026年8月13日から、「ベリフィケーション」に関する続きを書き始めました。