【読書メモ】『この夏の星を見る』(著:辻村深月)
「大人はこの一年を、コロナがどうなるかわからない中で、『様子見』の年にしてしまいたいのかな、と、私はそれも悔しいです。今年の私たちだって、何か、『これをやった』と胸を張れるものは必ず作れる。大人たちに見せつけてやりましょう」
久しぶりの辻村さん、図書館より。何かに導かれるかのように、予約していました。
物語の始まりは2020年春、主人公は「茨城の高2、亜紗(天文部)」、「渋谷の中1、真宙(理科部)」、「長崎の高3、円華(吹奏楽部)」と、普通であればあまり接点が出来なさそうな面々の3人ですが、、
コロナ禍との特殊な環境に翻弄される中で、彼らが「スターキャッチコンテスト」という天文活動を通じてつながっていく様子を描いた物語となります。
同じ時間帯に空を見る。そのための約束をした、というただそれだけのことが、どうしてこんなに特別に思えるのか。
"空は一つ、つながっている、つながっていく"、なんてフレーズを思い浮かべながら、じっくりと浸らせていただきました。
「スターキャッチコンテスト」とは、同じ規格の天体望遠鏡を使って、指定された天体を素早く望遠鏡に導入する競技で、2015年度から行っています。
実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。それはわかる。だけど、彼らの時間がまるごと何もなかったかのように言われるのは心外です。子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。きちんと、そこに時間も経験もありました
2020年の新型コロナ(武漢肺炎)による世界規模のパンデミックの最中、様々な制限を設けられた中高生たちが「これをやった」と胸を張れるようになるまでの、との保護者目線もない交ぜにしながら、息子たちの"軌跡"とも重ねあわせながら読み進めてしまいました。
今年の子たちは、いろいろ我慢してきたから、やらせてあげたいですよね。
息子の世代は「中学の修学旅行はキャンセル」、中学最後の大会(バスケ部でした)もどうにも中途半端に終着。高校に入ってからは、部活はそれなりにできて、「高校の修学旅行は行けました」が、一つ上の世代はどちらもダメだったんじゃなかったかな、、
まぁ、なんです、若者から"青春"を奪っていけませんよ、ともあらためて。
実は、北極星は時を経て、かわっていきます
そういえば一つ驚いたのが、、北極星が「時代とともに変わっていく」とのことでした。今現在は「ポラリス(こぐま座のα星)」がいわゆる「北極星」とのことですが、約三千年前はこぐま座で二番目に明るい「コカブ(こぐま座のβ星)」が、さらに遡っての約五千年前は「ツバン(りゅう座のα星)」が、「北極星」だったそうです。
一方、今から約八千年後の未来には「はくちょう座のデネブ」が、その後の約一万二千年後には、今現在「織姫」と呼ばれている「こと座のベガ」が「北極星」になるとのこと。
なんというか、時間の流れがあまりに雄大過ぎて、フッと、宇宙(ソラ)にすい込まれてしまうような感覚にもなりました。
コロナの年じゃなかったら、私たちはこんなふうにきっと会えなかったから。どっちがいいとか悪いとか、わからないね。悪いことばかりじゃなかったと思う
空は一つだし、ソラは自由だし、そしてつながっている。失ってしまったもの、奪われてしまったものは確かにあるけれど、そんな中でも得ることが出来たもの、これから見出していけるものもまだまだあるでしょう、との、希望を祈りにこめて。
で、この"物語"は手元に置いておきたいなぁ、なんて思っていたら、ちょうど、6月17日に文庫版が発売されるとの事で、予約させていただきました、上下2巻。
また児童書としてもノベライズされているようで、小学中学年位なら十分に読み解ける物語になっていると思います(学童などでの蔵書にしてあげたいくらい)。
と思ったら、映画にもなるのですね、、7月4日公開、タイミングが合うようだったら観にいきたいところ、なんて思いながら。
