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🌙リボルテの街 | 閑話 | ローズの見た贈りもの

この物語は、チュチュ・テイルの世界を旅する記録の、少しだけ脇道にそれた小さなお話です。

はじめまして。
コスメ様のサポートキャット、ローズです。
本日は、旅人エトワールさんの代わりに、私がお話いたします。

これは、エトワールさんのオルゴール制作に立ち会った時のお話です。



今日も、コスメ様はアルトの工房を訪れています。

サーカス島へ向かう前に、姉妹の皆様へ贈るプレゼントのご相談に。

「アルト」

「ムーン姉さまの贈りもの、もう少し星を増やせないかしら」

「フェアリーのガラスケースに入れる花びらを、もう少し淡く……」

「シュガーのお菓子の家は……」

「うーん……」

そう言ったあと、コスメ様は真剣な表情で悩んでいるようでした。

コスメ様は、ご自分のものなら迷いません。

ですが贈りものになると別です。

私には少し不思議でした。

喜んでいただけそうなものを選べば、それで十分な気もするのですが……。

私は紅茶を用意しながら、その様子を見守ります。

「まだまだ、かかりそうだな」

ふっと笑いながら、アルトが紅茶のカップを受け取りに来ました。

紅茶をいただきながら話しているうちに、話題は旅人エトワールさんのオルゴール制作へと移っていきました。

「そういえば、旅人さんの方はどうなの?」

コスメ様が、ふと思い出したように尋ねます。

アルトは小さく笑いました。

「だいぶ悩んでるよ」

「あら」

そして少し考え込むように窓の外へ視線を向けます。

「……でも、ひとりで悩み続けると、余計に分からなくなることもあるわよね」

そう呟いたあと。

コスメ様は、ふいにこちらを振り返りました。

「ローズ」

「少し、お手伝いしてあげて」

私は一瞬だけ言葉に詰まりました。

私がお手伝いを?

もちろん、お断りする理由はありません。

ですが――

少し意外だったのです。

コスメ様が、そこまでエトワールさんを気にかけていらっしゃるとは思っていませんでした。

「……かしこまりました」

そう返事をしながら、私は静かに頭を下げます。

旅人エトワールさん。

コスメ様は、あの方のどこを気に入られたのでしょう。

エトワールの手伝いを頼まれるローズ


その夜、リボルテにあるアルトの工房へ向かうと、エトワールさんは小箱を前に考え込んでいました。

「こちらでしょうか……」

しばらくして、

「いえ、やはりこちらでしょうか……」

さらに少し経って、

「でも、こちらも素敵ですね……」

私は静かに見守っていました。

――それにしても、さっきから同じような事を繰り返しています。

悩むエトワールを見つめるローズ


「……ずいぶん迷われるのですね」

つい、思った事が口に出てしまいました。

はっとした表情のエトワールさんと目が合います。

エトワールさんは困ったように笑いました。

「その通りかもしれません」

少し気まずくなってしまって、私は机の上へ視線を落とします。

正直なところ、私にはどれも素敵に見えました。

……そこまで悩まなくても。

そう思いながら、エトワールさんが並べているパーツを眺めます。

私は、その中で、夜空のように見えたパーツをオルゴールの箱の横に並べます。

その時です。

「星柄が好きな夫婦のようなのです」

エトワールさんは、そう呟きました。

その言葉を聞いた瞬間。

私にはただの飾りだったものが、誰かを思い浮かべるためのものに見えました。

……だから、あれほど迷っていたのでしょうか。

私はもう一度、机の上のパーツへ視線を落としました。

先ほどまでと、少し違って見えます。

……どんなオルゴールになるのでしょう。

気づけば、私も少しだけ完成を楽しみにしていました。

数日後。

オルゴールが完成したと聞いて、コスメ様は珍しくリボルテの工房へいらっしゃいました。

「完成品を見てみたいの」

そう仰って。

完成したオルゴールを前に、エトワールさんは少し緊張した様子です。

蓋が開かれます。

やわらかく広がる、あたたかい音色が流れました。

「素敵ね」

コスメ様は、目を細めます。

「想いのこもった、とても優しい音色だわ」

私は紅茶を置きながら頷きました。

「きっと喜ばれます」

ですが、エトワールさんは少し不安そうに、

「本当に、これで良かったのでしょうか」

小さく、そう呟きました。

完成したはずなのに。
まだ迷っているようにも見えます。

その言葉に、コスメ様はくすりと笑います。

「贈りものって、渡す前が一番ドキドキするわよね」

「これで良かったのかしらって、何度も考えてしまうもの」

そう言って、完成したオルゴールへ視線を向けました。

「たくさん悩みながら、お相手の事を考えて選ぶ時間って、とても素敵だと思うの」

「その時間ごと、大切な贈りものだわ」

コスメ様の言葉が、静かに胸の中へ落ちていきました。

夜遅くまで小箱を並べ替えていた姿。
何度もリボンを選び直していた姿。

そして、星柄の好きな夫婦の話をしていた時の表情を思い出します。

……迷われていた、あの時間も。

完成したオルゴール


それからしばらくして。

リボルテの街も、サーカス団のショーパレードの話で賑わってきた頃。

コスメ様はいつものように、ときめきの庭のアルトの工房へ向かわれました。

私は、次のご予定に合わせてお迎えに行きます。

「コスメ様」

「あら、ローズ」

「お時間です」

「あと少しだけ」

そう仰いながら、コスメ様は目を輝かせて机の上を見つめています。

そこには、完成した美しい贈りものが並んでいました。

長女 ムーンキャット様には、星の雫を閉じ込めたガラス細工。

三女 フェアリーキャット様には、花を閉じ込めたガラスケース。

四女 シュガーキャット様には、お菓子の家の小物入れ。

「ローズ、見て。とっても素敵なの」

コスメ様は嬉しそうに言いました。

「さすが、アルトだわ」

贈り物の横には、たくさんのリボンが広げられていました。

輝く銀色。
薄紫のストライプ。
小花の散りばめられた柄。
ドーナツ模様。

今は、プレゼントを包む時に使うリボンをお探しのようです。

コスメキャットから、姉妹への贈り物


「やっぱり、こちらかしら」

コスメ様は一本のリボンを手に取ります。

けれど、しばらくすると首を傾げました。

「でも、ムーン姉さまには少し可愛らしすぎる気もするのよね」

そう言って、別のリボンへ手を伸ばします。

「シュガーなら、このリボンを見ただけで喜びそうだけれど」

「フェアリーなら、こちらの方が喜ぶかしら」

しばらく考えて。

「でも、お花の色と合わない気もするのよね」

また悩み始めます。

私は、その様子を静かに見つめていました。

「アルトはどう思う?」

コスメ様が尋ねます。

アルトは机の上を一度見渡しました。

そして、

「どれでも喜ぶと思うぞ」

そう答えます。

「それでは困るの」

コスメ様は頬を膨らませました。

「ちゃんと選びたいのよ」

アルトは小さく笑います。

「知ってる」

工房に静かな笑い声が広がりました。

私は、そっと目を細めます。

一本のリボンを前に悩むコスメ様。

「でも、こちらも素敵なのよね」

そう言って、また別のリボンを手に取ります。

その姿を見ていると、夜空色のリボンを前に考え込んでいたエトワールさんを思い出しました。

……なるほど。

少し似ているのかもしれません。

コスメ様は、あの方のどこを気に入られたのだろう。

そう思っていましたが。

……少しだけ、分かった気がしました。



[作者より]

今回は、コスメキャットのサポートキャット、ローズの視点から見たエトワールをお届けしました☺️

ローズは、コスメキャットを支える有能なサポートキャットです。

プリンセスキャット四姉妹には、それぞれ個性の違うサポートキャットたちがいて、主であるプリンセスキャットや旅人エトワールをどんな風に見ているのか考えるのも、私自身とても楽しい時間です🤭

そしてエトワールが次に向かう先は――

イベントが始まる、賑やかなサーカス島🎪✨️

どんな出会いが待っているのでしょうか。

また少し疲れた夜に🌙

チュチュ・テイルの世界へ遊びに来ていただけたら嬉しいです☺️


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