🌙巡る想い⑬ 巡りの中で、手を伸ばす
この物語は、チュチュ・テイルの世界を旅する記録です。
シルエットで描かれた猫たちや動物たちが暮らす、やさしい世界✨️
白いうさぎの旅人 エトワール の旅日記として綴っています。
はじめての方は、ぜひ固定記事からご覧ください🌙
光の流れにそって、月の庭にある、ガラス張りの温室の奥へと歩みを進めます。
すると、地面の奥深くへと続く階段があらわれました。
そして、階段の奥へと導くように、光の粒子が静かに引き寄せられてきます。
ルートは迷いなく、光の粒子とともに階段を下っていきます。
ぼくも、後を追うように足を進めます。
足音は、ほとんど響きません。
けれど、一段一段、確かに"深く"へと進んでいる感覚がありました。
やがて――視界が、静かにひらけます。
そこには、これまで見たことのない光景が広がっていました。
地上から伸びる大きな根が、幾重にも重なりながら、この世界の奥へと伸びていました。
呼吸をするように、淡く光を帯びながら。
まるで、"流れ"そのものが形になっているようでした。

上に広がる空間を見上げると、さらさらと、細かな土が落ちてきています。
光を含んでいるように、やさしく舞いながら、ゆっくりと地面へと降り積もっていきます。
地下のはずなのに――この場所は、どこか明るく、静かな光に満たされていました。
ぼくは、思わず足を止めます。
「この根の先には、はじまりの花が咲き続けてるんだ」
ルートは目を閉じて、空気に含まれる光を吸い込むように、深く呼吸しながら教えてくれます。
はじまりの花。
淡く光る根の先に広がる地上に、何か大きなものの気配がしました。
「……ここだね」
ルートは、大きな根の重なりをたしかめるように、そっと手でなぞりました。
けれど、やがて、その手が止まります。
「流れは、ここまで来てる」
ルートは、小さく言いました。
「でも……最後のところで、止まってる」
少しだけ間をおいて、
「この光……たぶん」
「エトワールを、呼んでる」
ぼくは、根の奥を見つめました。
そこには、細い光がありました。
今にも消えそうで、けれど、まだ消えてはいない光です。
なぜか、見過ごしてはいけない気がしました。
ぼくは、そっと手を伸ばします。
触れた瞬間――
あのときの泡のぬくもりが、よみがえりました。
……これは。
どこかで、
手を伸ばせなかった光のようでした。
手を離してしまえば、
また、どこにも届かないままになる。
そんな気がしました。
ぼくは、そのまま、もう一方の手も重ねます。
触れるというより――
そこに、寄り添うように。
ほんのわずかに。
止まっていたものが――
やわらかく、ほどけました。
根の奥にあった細い光が、すうっと、先へ流れていきます。

ルートが、息をのみました。
「……つながった」
ぼくは、自分の手のひらを、そっと見おろしました。
記憶のすみに追いやっていた、
おぼろげな輪郭と、重なるぬくもり。
……あのとき、
手を伸ばせなかったことを、
はっきりと思い出しました。
あのまま、何も言えなかったことも。
ちゃんと届いていたら。
――何かが、少しだけ
違っていたのかもしれません。
そのとき。
奥のほうに、やわらかな光の揺れを感じました。
光は、粒子のようにふわふわと漂いながら、集まっては離れ、また集まり――
かすかに、猫の輪郭を形づくっています。
けれど、その姿は定まりません。
見ようとした瞬間、やわらかくほどけて、
どんな形だったのか、わからなくなってしまいます。
――見えているはずなのに、きちんと見ることができない。
そんな、不思議な存在でした。
けれど。
この場所のすべてが、
その光を中心に巡っていることだけは、
はっきりと感じられました。

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