なぜ北欧でもアメリカでもなく、ポルトガルのインテリアなのか。
インテリアの話題になると、北欧やアメリカが語られることが多いです。
機能美や合理性、完成度の高さ。
そして、歴史。
どれも素晴らしく、僕自身も影響を受けてきました。
それでも、なぜか強く惹かれ続けているのは、ポルトガルのインテリアです。
写真家としてポルトガルを訪れたのは、一度きりです。
エリセイラの街を歩き、光の強さや影の深さ、壁に残る色彩を目にしました。
滞在時間は決して長くありませんでしたが、その感覚は帰国後も不思議と残り続け、今ではポルトガルのインテリアについて学ぶ時間が、日常の一部になっています。
心を掴まれたのは、どこか渋さとポップさが同居しているところです。
古い建築の重みを受け止めながら、色や素材で軽やかさを加えていく。
そのバランス感覚が、とても職人的で、写真を撮るときの感覚と重なります。
特に印象的だったのが、ワラの編み細工で作った照明です。
かつて抱いていた「ワラ=南国リゾート」という先入観は、ポルトガルの職人の手仕事によって心地よく裏切られました。
ポルトガルの伝統的な「Cesto de Vime(柳のカゴ)」を現代の感性でアップデートした、まさに「渋くて洗練された」一品でした。

照明もテーブルもワラの編み細工で作られています。
ポルトガルのデザイナーたちは、この素朴な素材を現代の洗練された空間に招き入れる天才だと思います。
滑らかな石のテーブルの足元に、ざっくりと編まれたカゴがひとつ。
完璧に整えられたミニマリズムの中に、人の手跡を感じさせる「揺らぎ」をあえて置く。
そのバランスの妙こそが、僕がこの国のインテリアに惹かれる理由なのかもしれません。

帰国後、調べてみたらこの街の名店でした。
照明空間では、北欧が「整えられた光」だとしたら、ポルトガルの光はもっと自由で、少し粗さを残しています。
洗練された整った光ではなく、クラフト感溢れる自由な空間が目につきました。
その遊び心が、写真を撮っていても面白く引き込まれた理由でもあります。
また、古い建築を生かしながら現代的に住みこなす姿勢にも惹かれます。
完璧に整え直すのではなく、時間の痕跡を受け入れながら更新していく。
それは写真において、完成された一枚を目指すよりも、積み重ねの中で世界を記録していく姿勢と重なります。

北欧でも、アメリカでもなく、ポルトガル。
それは流行や情報量の多さではなく、純粋に自分の感覚がもっとも素直に反応した場所だからです。
一度訪れただけの記憶と、その後に重ねてきた学びを行き来しながら。
ポルトガルのインテリアは、僕にとって最高の被写体であり、思考の起点です。
その理由を、これから少しずつ言葉にしていきたいと思います。
静岡県浜松市を拠点に「光を描き、光を灯し、光を写す」をコンセプトに照明デザインスタジオを営んでいます。

「写真家で培った視点」で、光と空間をデザインしています。
light office ~ LIGHTING DESIGN STUDIO ~
