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あなたの「ふつう」が価値になる 「ありそうでなかったモノ」の作り方

「ニッチな商品をよく思いつきますねえ」

来店したお客様から、そんな言葉をよく言われる。
私は、文房具のお店をやりながら、オリジナル商品を販売している。
その商品はどれもこれも、ちょっとした不満を解決してくれる「ありそうでなかったモノ」ばかり。

レシートをスマホできれいに撮影するための道具や、

デジタルな番号やアルファベットを書くことができるテンプレートなど、

大手のメーカーは手を出していないような、かゆいところに手が届くアイテムを作ったり仕入れたりしながら、6坪しかない小さなお店を8年近く営んできた。

売上規模はだいたい3000万円。
オンラインストアの売上が8割で、あとは実店舗やイベントでの販売や、文具の紹介記事のライター業や、メーカーへの商品開発のアドバイス業務なども行って生計を立てている。

一方で、移動販売車を作って日本を北海道から鹿児島まで売り歩いたり、海外に出向いてポップアップイベントを開催したり、確定申告に特化したイベントを開催してみたりと、様々なアイデアを実践してきた。

どうすれば、このようなアイデアが形になるのか。

そんなことを尋ねられることも増えたので、今回は会社に所属していても、個人事業主であっても、副業でちょっとものづくりに興味がある状態であっても、誰でもすぐに実践できる「ありそうでなかったモノの作り方」をご紹介してみたいと思う。
しかも、そのアイデアの材料になるのは特別な技術や知識じゃない。
誰もが日々感じているであろう「ふつう」という形の資産だ。

この一見ネガティブに見える「ふつう」をアイデアに変えて、ありそうでなかった商品やイベントを企画する方法を今回は書いていきたい。


なぜ「ありそうでなかったモノ」を目指すのか

そもそもうちのお店がなぜ、こんなにも「ありそうでなかった」商品にこだわっているのか。
それは、そもそも資本もなく、立地もよくない小さなお店が真正面から流行を追いかけても大きなお店に負けてしまうことが目に見えているからだ。

ライバルがたくさんいる市場で戦っても、小さい側が目立つことはできないし、長く続けることもできないことはわかりやすいだろう。

でも、だからといって「世の中に無かった奇抜なもの」を作ればいいというわけでもない。
このニュアンスこそが心底大事だと思っている。

「ありそうでなかった」という感覚には主に2つの要素が込められていると私は感じている。

①これまで誰かが作っていたと思うぐらいに、特別な技術や資本を必要としていない感じがすること。
②需要はあるし、目にすればほしいと思えるけど、目にするまではそのほしいという感覚にもお客さんが気づけなかったということだ。

①は、開発やコストの面で非常に重要な要素だ。
最新の技術や、独自開発の技術、そしてそれらを取り入れるための莫大な予算をかけて実現するものは、うちのような小さなお店ではハイリスクハイリターンすぎる賭けとなる。
既製品として誰もが目にしているのに、誰も思いつかなかった(またはニッチ過ぎて商品化には至らなかった)アイデアを商品にできるということが、小さなお店が新しい商品を世の中に出す上では重要だと感じている。

②は、どちらかといえばお客様側の需要に関する要素だ。
目にしたり、説明を受ければ欲しいと思えるかというのは、実際の市場の需要を把握できているかどうか。
さらに深く考えれば、商品としてお客様に驚きや納得感があるかどうか、そして購入してもらえるかどうかに直結している。

そんな商品が作れれば苦労はしない……と思われるかもしれないが、意外とできるのに、開発過程が泥臭すぎて狙っている人が少ない分野だと私は感じている。

例えば、私のお店で初めて作ったオリジナルの文房具である「ハードタイプのノートカバー IDEAL」という商品は、まさに「ありそうでなかった」というキャッチコピーまでつけてクラウドファンディングを行った商品だ。

元々は、取引先のメーカーさんの商品として販売されていた「薄型のハードカバーのスケジュール帳」が参考になっている。
私自身もその使い勝手を気に入っていたのだが、1年で廃盤となってしまったことをきっかけに、このハードカバーの「外側だけ」を作れませんかと、メーカーの社長さんに相談したことから開発がスタートした。

元々は、内部にスケジュール帳になっているノート部分を一体にして接着していたものを、ノートの表紙を差し込んで使えるポケットシールに変えてもらうことで、自分の好きな薄型ノートをハードカバー化する商品として企画した。

これなら、内側のノートはスケジュール帳でも方眼でも無地でも、市場にすでに存在する様々なノートを差し込むだけで様々なノートに対応することができるので、スケジュール帳特有の「賞味期限」、つまり1年の始めにしか定価で売れないという弱点も補うことができる。

結果としても、122万円の支援をいただいて商品化に成功。
今でも当店の人気アイテムとなっている。

このように、既製品として製造技術が既に成立しているものを、可能な範囲でアレンジして別の商品に変えることが可能となるということを、この商品化の経験以来、私は大切にしている。
そして、その商品化のアイデアに必要だと思うのが、先にも紹介した「ふつう」という感覚だったりする。

①ハードカバーのノートは頑丈だけど、値段が高くて重たいという「ハードカバーのノートのふつう」
②薄型のノートは安くて持ち運びやすいけど、カバンの中で他のものに潰されてぐちゃぐちゃになってしまうことがあるという「薄型ノートユーザーのふつう」
③ハードカバーの薄型手帳を手に取ったことで、その利便性を知った私自身の新しい「ふつう」
④取引先の文具メーカーさんは、「ハードカバーの製造は設備があるのでいつもの業務で作れるというふつう」

①と②は、ノートを使っているユーザーさんの視点での「ふつう」
③は、ノートを販売している私たち文具店の「ふつう」
④は、取引先のメーカーさんの「ふつう」

いろいろな「ふつう」が影響し合うのを認識した上で、「ふつう」から無理無く一歩飛び出した先で、「ありそうでなかった」商品は成立したのだ。

図にするとこんな感じだろうか。
軽いが脆い薄型ノートと、頑丈だが重いハードカバーノートがあるというのが「ふつう」という認識の中で。

薄くてハードカバーなアイテムを、取引先のメーカーさんが発売し、「薄型のハードカバー」という概念が登場した。
薄型ハードカバー手帳は廃盤となってしまったことで、市場から消えてしまったが、私の頭の中には「薄くて頑丈で軽めのハードカバーノートってタブレットみたいで便利!」という新しい「ふつう」が知識として刻まれた。

さらに、取引先のメーカーが「ハードカバーだけ」を作る製造にも対応しているという、メーカーさんにとっての「ふつう」を問い合わせて確認することができたことで、薄型ノートは他社のものを仕入れてカバーだけオリジナルで作って組み合わせて販売するというアイデアにたどり着いたわけである。

いくつかの「ふつう」は、あなたにも実感があるものだったかもしれない。
ノートの特性については、文房具が好きであれば思い当たるものだろうし、ハードルがあるとすれば「薄型のハードカバー手帳を使ってみて、ふつうをアップデートした」という経験と、「メーカーに製造可能かを問い合わせをして、メーカーの製造対応範囲というふつうを知った」という2点だろう。
更に言うなら、ハードカバーノートと薄型ノートの「ふつう」から一歩出た程度の「ちょっとだけふつうじゃない」といった踏み出し具合も、商品の良さを理解してもらうことにも一役買っている。
つまるところ、様々な「ふつう」を知れば、あなたにもこのような「ありそうでなかった」商品が作れるかもしれないのだ。

では、この何度も繰り返される「ふつう」とは一体何なのだろう?
ここからはその正体について考えていきたいと思う。

「ふつう」ってなに? 無印良品で10年働いて見えてきたこと

なぜ私がこんなに「ふつう」にこだわるのか、不思議に思ったかもしれない。
それは、私自身の経歴にその理由がある。

実は、私は大学卒業後10年間。
無印良品を運営する株式会社良品計画という会社で社員をしてきた。

とはいっても、商品を開発する部門や広報を担当する部門などにはいたことはない。
10年間ずっと店舗で店長などの業務を現場で行ってきた。

それでも、無印良品のことが好きだったので、勝手に無印良品の歴史を調べたり、関わりのあるデザイナーさんの活動などを勉強したりしながら、店舗スタッフの教育などに役立ててきた。

そんな無印良品の商品のデザインに深く関わってきたデザイナーである「深澤直人さん」の書籍に「ふつう」というものがある。
これは、深澤直人さんが15年間「ふつう」という連載をされていた内容を書籍化されたものなのだが、タイトルになるぐらい「ふつう」にこだわったデザイナーさんがアドバイザリーボードメンバーをつとめる会社なんだなという視点をずっと持ちながら、私は無印良品で働いてきた。

無印良品にはそもそも「ふつう」な感じのする特徴の少ない商品が多いと私は思っている。
中には数十年に渡って、同じ形で販売され続けているものもあるし、無印良品の商品はずっと品揃えが変わってないんじゃないか?と思っているお客様も多かった記憶がある。

でも、実際に働きながら見ていると、商品は少しずつだが入れ替わっているのだ。
もちろん、製造元が変わったり、原料が変わったりという理由や、新しいものを開発しないとお客様に飽きられてしまうといった営業上の理由もあるのだと思う。
しかし、それでも無印良品に行くと変わらない安心感というか、「ふつう」な感じが薄れないのはなぜなのか、ずっと気になっていた。

自分なりにたどり着いたのは、良品計画に入社した頃(2008年ぐらい)にみつけた、深澤直人さんとロングライフデザインで知られるナガオカケンメイさんの対談が収められた音源だ。
そこでは、「普遍と普通」の違いについて深澤直人さんが語っておられた。
その時に得た私なりの知見を要約すると以下のような内容だ。

「普遍」は海の波の音を聞くと落ち着くとか、「夕日が美しい」といった人類にとってとても長い期間たくさんの人が共感できる内容だ。
しかし、「普通」はもっと短い期間で成立しているのだという。

カレーを食べるのにスプーンを使うとか、日本の現代を暮らす私達にとっては共感できる「ふつう」だけれど、100年遡れば食生活も家庭環境も変わるので変わってしまっている。
「ふつう」は時代や生活形態によっても変わっていくものなのだ。

ただ、日本の食生活はそんなすぐには大きく変わらない。
「G型しょうゆさし」のデザインで知られる森正洋さんは、無印良品の白磁の食器シリーズを手掛けたあと、深澤直人さんに「売る側が飽きなければ30年はいけるよ」と話したという。
言い換えれば、30年経てば日本の食生活も変わり、食器に求められる「ふつう」も変わりうることを考えながら、無印良品の商品はデザインされているとも言えるのだ。

他に例をあげる場合、今現在の無印良品ではモバイルバッテリーを取り扱っていることがわかりやすいと思う。
これは、スマートフォンが私たちにとって「当たり前」の存在になったから取り扱っているわけで、20年前の無印良品には当たり前のようになかった。

もっと言うならば、バブル最盛期に勢いよくブームとなった頃の無印良品は「ブランド社会へのアンチテーゼ」だったし、ふだんは捨てられているわけあり食品を安く販売する場所だったけれど、現在の無印良品は規模が大きくなったので、そのような食品を販売しようとしても全店舗に供給できない。
そのために「不揃いシリーズ」という、品質に影響のない見た目の選別などを除いて捨てる食材を減らした商品開発などを行っているし、大きな市場である中国では、日本の信頼できる「ブランド」として人気を得ているという話も退任後の元会長さんが取材に対して語ったりもしていた。

私自身が「ふつう」というテーマに人よりも関心がある理由はこんな背景から来ている。
無印良品で10年体験してきたのは、どのような商品が世の中にあって、その商品ラインナップの中で「これでいいな」と思える名脇役がたくさん置いてある空間の時代に合わせた変化だったようにも思う。
しかも無印良品には衣服雑貨、生活雑貨、食品と幅広いジャンルの商品があり、不慣れなジャンルにも10年かけて薄いながらも触れることができた。
言い換えれば、世の中の「ふつう」が少しずつ変わる現場をずっと眺めてきたので、日本の市場の「ふつう」を少なからず感じながら、商人としての成長をさせていただいた場所だったりするのだ。

さて、熱く語ってきた「ふつう」という言葉だけれど、国や時代によって変わる結構不安定なものだということがなんとなく伝わったのではないかと思う。
更にいえば、日本全国で通用する常識としての「ふつう」もあれば、無印良品のような日本市場における商品の中での「ふつう」というものもあるし、あなたの会社では伝わるけれど他の会社では非常識と言われる「ふつう」もある。

そして、多様化が進んだ現代社会においては、あなただけしか感じていない「ふつう」もまた存在している。
その揺れ動いていく「ふつう」の中にこそ、あなただけにしか作れない「ありそうでなかったモノ」のヒントが隠されているのだ。

「ふつう」とは、あなたが鍛えあげた「センス」である

センスがあるとかないとか、創造性があるとかないとか。
そんな話になったとき、「ふつう」という言葉はどちらかというとネガティブな意味合いで使われがちだ。

けど、実はそのセンスとは、その人にとっての「ふつう」に対する別の呼び名に過ぎないのだと私は考えている。
もちろんそれは、あなたを突然ミュージシャンや芸能人として取り立ててくれるようなド派手なものではないのだけれど、どんな人にも少なからず輝くものがあるのではないかと思っている。

ただし厄介なことに、その能力はどちらかと言えば、自分がいつもいる場所から離れた時に初めて、その輪郭が見えてくる性質を持っていたりもする。

例えば私は、無印良品で10年間毎日のように、本部の指示をスタッフに朝礼でわかりやすく伝えるということをやり続けてきた。
主婦さん、社員志望のスタッフ、フリーター、大学生など、本当に様々な人にそれぞれの知識や出勤頻度などに応じて説明するのはもちろん大変だけれど、やらずには通れない道だ。
それは、店長としては当たり前の業務だったので「ふつう」だと思っていたのだけれど、独立してからも補助金申請のやり方をわかりやすく書いて説明することで、すごくバズる記事になるといったことも何度も体験してきた。

商品を紹介するという技術も無印良品で働いたからこそ身についたことのように思える。
というのも、無印良品の商品にはよくも悪くもたくさんの情報が書かれていない。
商品タグに3行ぐらいの説明文が載っているだけのケースが多くて、あまり接客をするタイプの店員さんがいないので安心して買い物できるというお客様からの声も聞いたことがあるくらいだ。
そんな中でも、家具などの専門知識が必要なものは自分なりに展示会などで商品特徴を掴み、スタッフに情報共有をして言語化してお客様にも伝えなければならない。

そんな、どちらかといえば無口な商品と向き合い続けた結果、商品をどのように説明すればいいのか?といった技術の向上につながっていった様に思える。

このように、私は「文具や雑貨が好き!」ということと、「説明はたぶんうまい方」ぐらいの武器も知識も少ないところからスタートしたのだけど、私にとって「ふつう」だった文具や雑貨の知識はかなりマニアックな方だったみたいで、ちょっとした取り柄ぐらいの認識だった「説明はできるぞ」という能力は、お店を支える大きな力になってくれた。

それは、社外に出て、お店を初めて情報を発信するという環境に立って初めて、「センスがいいね」と呼ばれるようになったものだ。
言い換えてみれば、いつもの会社では「あたりまえ」と思われている能力や興味が、他の場所に持っていけば「当たり前じゃない」「すごいセンス」だったりすることもあるのだ。

それではそのセンスを発揮するには、会社を辞めて独立するとか転職するしかないのか。
それも1つの手段ではあるけれど、実際にどちらも経験してきた身としては必ずしもそうではないと思う。

ここからは、あなたやあなたの所属する会社が「ふつう」や「あたりまえ」と思っている技術や知識をどうすれば、認識してもらえるようになるのか。
そして自分自身でも理解できるようになるのかを説明していきたい。

あなたの「ふつう」に刺激を与える情報を見たら、SNSでシェアしてみよう

あなたの「ふつう」の価値を測る一つの方法としてまずオススメしたいのは「SNSでの情報発信」だ。

すごくベタだし、ガッカリしたかもしれない。
けれど、これってすごく大切なことなのだ。
しかも、そもそもの目的である「ありそうでなかったモノ」を作るためにも重要になってくる。

例えば、あなたが所属している会社や、あなたのお店でSNSを運用する事になったとしよう。
自社の商品のことや、ちょっとした挨拶、日々の出来事を投稿するのは当たり前のこととして……すぐにネタがなくなる。
そんな知り合いを私自身も何人も見てきた。

しかしながら、そもそも発信を続けなければ誰にも見てもらえない。
そこでオススメしたいのが、すごいと思った「他社」や「他メーカー」の情報発信をシェアすることだ。

例えばこの投稿を見てほしい。
うちのお店兼自分自身のXのアカウントで行った投稿だけど、古巣の無印良品のコアラパンの悲しい過去について反射的にポストしたものに過ぎない。

4.9万いいねを獲得したものの、別に無印良品から1年分のコアラパンが贈呈されるわけでもなければ、アフィリエイト収益なんかもない。

この、三菱鉛筆さんの新商品のボールペンの投稿だって1800以上のいいねを集めているけれど、プレスリリースされた商品写真と内容をリンク付きで紹介しているだけでなんの利益もない。
将来的に仕入れはしたいと考えているので、その反応を知れたのは大きいけれど、基本的には人の宣伝をしているだけだ。

しかしながら、現在うちのXのアカウントは2.4万人を超えるフォロワー数になったのは、こういった利益にならない情報共有があったからこそだと思っている。

基本的にSNSは、知り合いでもない限りフォローするのは、なにか有益な情報を共有してくれるアカウントなのではないだろうか。
そんな中で、投稿する情報が何もない中で必要になってくるのは、あなたが「ふつう」と思っている日々触れている業界の最新情報だったりもする。

例えば、文具業界では衝撃的だったニュースで、ドイツのLAMYというメーカーを三菱鉛筆が買収したことによって生まれた「ジェットストリーム搭載のLAMYのボールペン」のリリース情報。

最新情報として投稿した時に盛り上がったのはもちろんだけど、その後も投稿する度に100以上のいいねを獲得したりもする。
専門分野にとっての「ふつう」は、他の業界に身を置く人にとっては「え!そんなことあったの!?」という驚くべき情報だったりする。

でも、あなたにとっては「ふつう」に見えるために価値がないと思いこんでしまっているケースも少なくないのだ。
そういった情報を、「知ってるのが当たり前だろ」となめてかからずに、一般の人でもわかるような言葉でわかりやすく説明するという活動をやり続けると、少なくとも発信の方向性が定まるし、投稿頻度も上昇する。

更に言えば、業界では当たり前な情報なのだけど、一般の人には理解されづらい「ふつう」と、簡単に理解を得られる「ふつう」というものも見えてくる。
これは、ありそうでなかったモノを作ろうとした時に、どの程度お客様の「ふつう」から離れていても理解してもらえるのか……というはみ出し加減を学ぶのに実は適しているトレーニングになるのだ。

ちなみに私の場合は、Xとインスタグラムは営業日は必ず1投稿、noteでの記事も週1回以上を目標に淡々と更新し続けている。

これはあとから気づいたことであるが、自社商品だけを紹介していたらなかなか難しいことだった。
自分がいいと思った商品を仕入れ、きちんと写真撮影を行い、自分の目線でおすすめすることで、どういった商品にニーズがあるのかといった市場調査も行うことができた。

また、先にも紹介したように補助金の申請で調べた内容をnoteにまとめるだけでなく、自分自身のオンラインストアとnoteの活用方法や韓国で視察してきた文具のイベント情報等を誰に頼まれたわけでもないのにまとめて発表している。
そんな面倒くさいことやりたくないと思うかも知れないけれど、自分自身の頭の中を整理するのにも役立つし、簡単な報告内容なら文才があるとかないとかも気にしなくていい。
写真をたくさん撮っておいて、現地の状況をちょっと紹介するだけでもいいのだ。
このように、お節介にも似た情報発信は、やろうと思えばできるし意外とたくさん読んでもらえたりする。

おかげさまで、Xは先程紹介した通り、2.4万人のフォロワー数となり、インスタグラムは1万人、noteは1.1万人のフォロワー数にまで成長した。
このように、自分の「ふつう」に価値を感じてフォローし、投稿を見てくれる人たちを集めるという努力をすることによって、自分の所属する会社を見てもらう機会も増えて、なんなら仲良くなった他社のアカウントに紹介してもらえたりする機会も増えてくる。

ここで大事なのは、いいねの数につられて「炎上」や「誰かを貶める投稿」は行わないことだ。
基本的にポジティブにすごいなと思ったり、いいなと思ったことを、自分の「ふつう」という枠から分かりやすい言葉と画像で伝えていくことを淡々と続けながら、どのような情報が好まれ、どのような情報が拡散するのかを学び続けなければ意味はない。

そして、情報発信を続けていけば、アウトプットのためにインプットが必要になり、「ふつう」の深みがドンドンと深まっていく。
どういったネタが自分のアカウントなら反応があるのかということはもちろん、ネタへのセンサーがドンドンと敏感になってくるし、自分の業界のどういったものが話題になっているのかといった他のアカウントの情報もタイムラインに勝手に出てくる。
私の場合は様々なプロダクトを見すぎたせいか、インスタグラムの広告で最新のプロダクト情報が届いて、そのままXで投稿してバズったというケースさえ記憶している。

ここまでくればしめたもの。
自分の業界でこんな商品が需要があるのに出てないな……ということが、ふとしたきっかけで見える瞬間まで出てくる。
このようなアウトプットからインプットまでのサイクルが、自分の持っている資産である「ふつう」という感覚を、何も自分自身に発信することがなくても鍛え上げていくことができる方法だと感じている。

「ありそうでなかったモノ……かな?」と思ったら、簡単なサンプルを作ってみよう

さて、人のことばっかり発信してどうするんだと思い始めた人もいるかもしれない。
でも、ここまでくるとあなたの会社やお店の作ったものを投稿すると想像を超える相乗効果が始まる。

例えば冒頭でも紹介したこの「アナログにデジタルな番号が書けるテンプレート」
試作まで完成したものの、原価がかなり高くなってしまったことから、本当に需要があるのか?と不安になり、Xでまずは反応を見てみることにした。

心配をよそに、6000を超えるいいねを頂くことができた。
一方で、たくさんの不特定多数の人にご購入いただける可能性が高いことからメーカーにも商品の仕上げについて安全性の徹底をお願いし、金額が上がったとしても加工方法にもしっかりこだわってリリースすることができた。
金額についてもコメント部分でアンケート調査をとることで、高い価格でも購入したい人がいるのか?ということを実際の反応を通じて確認できたことも非常に大きい。

自分の「ふつう」というこだわりに共感してくれるフォロワー数がある程度多くないと、そもそも反応してもらえる数が少ないために拡散せず、本当に届けたい人に届かないという残念な結果にも繋がりかねない。
そういった意味でも、オリジナル商品ができてからアカウントを作って発信していくのではなく、事前から自分の興味関心に基づいた情報発信をしておいた方がオススメなのである。

更に遡ってみると、このテンプレートはメーカーで試作をお願いする前に、自分のお店にある3Dプリンターで超簡易的なサンプルを作って発信していた。

近頃は、3Dプリンターも価格が安くなり、人気のBambu Labの入門機種ならタイミングによっては2万円台から手に入れることができる。
本格的な3Dデザインをしようと思うと難易度は高いかもしれないが、2次元でデータを作って厚みをつけるだけならCADなどのソフトが使えなくても十分サンプルは作れたりする。
原材料にかかる金額も数百円にすぎないので、ひとまず数を打ってみることをおすすめする。

テンプレートのシリーズとして、このように丸シールを使ってドット文字を貼ることができるニッチなテンプレートも、本当に需要があるのか不安で仕方なかったが、4000を超えるいいねを獲得したことで安心して商品開発にゴーサインを出すことができた。

ただ、先に情報発信をするとパクられたりするのでは?と心配になる方もいると思うが、意匠登録であれば最初の公開から 1年以内なら遡って申請することもできたりする。

なにより、弁理士さんにお願いすれば特許では60万〜80万円の申請費用がかかり、とったとしても製法を変えて申請されるなどのテクニックは色々と存在している。
需要があるかどうかわからないアイデアを試さずに、大事に抱えたまま終わったり、事前の申請にお金をかけてリリースした割に売れなかった……といった事態に陥るぐらいなら、思い切ってSNSで需要を問うたほうが早いのでは?と私は思ってしまう。

もちろん、自信があったのに全然反応が悪い商品もあるし、Xでの反応ほど商品化しても売れなかったというケースも有り得る。
今回のケースでも、3Dプリントしたサンプルの投稿だけで言えば、サインペンで書くテンプレートよりも丸シールを貼れるテンプレートの方が反応は良かったが、実際に売れたのはサインペンで書くテンプレートだった。

そういったギャップも自分の肌感覚で学びながら、トライアンドエラーを繰り返すことで少しずつ、どの程度アクセルを踏むべきか、途中でブレーキを踏むべきかといった感覚を養っていくことができる。

例えば、SUZURIというサービスを使えば、画像をアップするだけで、割高ではあるがマスキングテープも商品として販売してみることができる。

ここで画像をアップすることで、出来上がった完成イメージがXで反応がよかったのを見届けてから、オリジナルのマスキングテープを作成するというルートも昨年は実践してみた。

自分の「ふつう」が商品として成立するようになると、どんどんとアイデアをキャッチアップしては、SNSで試して反応が良ければ売ってみるという流れが加速していく。
大きな失敗は防ぎながら、商品開発を行うことができる下地が揃うのである。

「ありそうでなかったモノ」の商品開発は、1企画10万円で十分

さあ、簡単なサンプルを使って「ありそうでなかったモノ」の反応を見た結果、イケそうだなと思ったらどうするか。

私の場合は、まずメーカーに最小ロットでの見積もりをとってみる。
もちろん作る数が少ない場合は、製造コストも高くなりがちだ。
しかしながら、始めから大量の在庫を持つことを考えることはおすすめしない。
SNSでのサンプルへの反応と、実際にお金を払って買ってくれるかどうかは別問題なのだ。

たとえば、1000円で作れるものを100個作ったとしたら、10万円ですむ。
10万円なら企業からすれば取れないリスクというほどではないだろうし、副業だったり個人事業主であっても、1年に1度挑戦するぐらいの価値はあるだろう。

先ほど例にも出したマスキングテープの場合、マスキングテープを巻き起こしたカモイさんのサイトでオンライン上でも見積もりが取れる。
最小ロットの場合、税込195円で380個から作ってくれる。
計算すると、7万4100円で、オリジナルのマスキングテープを仕入れることができるのだ。

ちなみに2200個作れば、1個あたり税込139円でつくれるので利益率はよくなるのだけど、必要な予算は30万5800円に跳ね上がる。
こうなってくると、資金も多めに必要になってくるし、2200個の在庫をどれくらいの期間で売り切れるかといったことも考える必要がある。

それならば、はじめは380個で作ってみて、売り切れてから2200個のロットに移行してもいいし、30万円の予算が出せるならそもそも、10万円で3つ企画を立ててみたほうがリスクを分散できる。

そういう意味では、在庫を持たずに需要を確認できる「クラウドファンディング」をして試すぞ!というのも一つの方法なのだけど、繰り返し試してきた結果、「意外とネットストアでそのまま売れるぞ」という案も押しておきたい。

なんせ初めての商品だ。
もしかしたら、数百万円……いや、数千万円も売れてしまうかも……なんて夢を持つのは当たり前なことだと思う。
しかし、「ありそうでなかった」ものほど、初動はそこまで動かないことも多かったりする。

例えばレシートスキャンボードという、ドケットストアで最もヒットしたオリジナルアイテムも、自信の割に結果はボチボチなものだった。
ありそうでなかった商品は、分かる人には伝わるが、必要性を感じていない人もまだ世の中にたくさんいる、これから市場を育てていかないといけないアイテムだ。

なにせクラウドファンディングで最初に相談した会社には、社内チャットで3人しか反応がなかったというくらい酷評されたアイテムだったのだ。

2024年から電子帳簿保存法で電子取引データの保存が義務化されることから、領収書をスマホのカメラでスキャンすることが増えると見込んで思いついたのがこのアイテムだった。

ただ、商品を思いついて仕掛けたのは、2022年の8月。
まだ、領収書をスマホのカメラでスキャンするという行為も、そこまで定着していないタイミングだったのだ。

実際に他のクラウドファンディングのサイトでクラウドファンディングを行った結果も、先程お見せした通り67万円と大爆発はしなかった。
ちなみにクラウドファンディングには魅力を伝えるためにたくさんの写真を取らなければならないし、余裕があれば動画も欲しい。
更には販売予定価格よりも割引して販売することが一般的であるために、利益率も多くは望めない。

さらに15%から20%のプラットフォームを使用するためにかかる手数料もかかるため、たくさん売れても利益は出ておらずあくまで宣伝と割り切っているメーカーさんの話を聞いたこともある。

逆にたくさん売れた場合にも、一時的に商品の発注にかかるお金をどう用意するのかや、大量の商品の配送をどうするのかといった問題が発生する上に、なにか商品の仕様にトラブルがあった場合には、大量かつ同時に対処に追われる可能性もある。

しかし、そんなアイテムも見限らずに丁寧に販売し続けていけばヒットすることもある。
電子帳簿保存法が義務化された2024年の1月には、Amazonのスキャナーのランキングでなんと1位を獲得。
1年間で、レシートスキャンボード単体で1000万円近い売上を達成することができた。

ヒットするまでには、Xで全く予想しない形で話題になることもあった。
オプション品として販売をしていた400円の低反射シートが、漫画家さんがイラストをスマホのカメラで気軽に電子化するために使われ始めたのだ。

誰もが知るような漫画雑誌の編集部からも注文が入ったため、誰かが広めてくれたのだと思うのだけど、YOUTUBEを見てもどこをみても人気の出どころがわからず……
Xでその出どころを知ってる人がいないかと聞いてみた所、その投稿が思わぬバズにつながった。

こういった形で、ヒットした商品にも売上が上がらない期間が存在したりする。

そういった経験から、私はこのごろはオンラインストアで普通に少量作って販売してみるというやり方に移りつつある。
クラウドファンディングは、自信のあるアイテムをアピールするお祭りとしてはいいのだが、サイトに載せたからといって伸びるとは限らないのだ。

それよりも、自分のSNSで商品の良さをきちんと紹介しながら、地道に販売してみるといったアプローチでも、いい商品であれば結果は出てくる。
前の章で紹介したステンレス製のテンプレートも、オンラインストアのプラットフォームであるBASEの予約販売機能を活用することで、2025年だけでも2860円の商品を1000枚近く販売することができた。

試作品でコメントを頂いていた相手にも、販売を開始したことをお伝えすると反応してくださることも多いので、一つ一つの地道な広報活動もクラウドファンディングと同じぐらい大事だと改めて感じることができた。

さらに、近頃はパソコン用のアプリも、ClaudeというAIを利用すれば自分で作って2か月程度でリリースできる時代になってきている。
私自身、2か月で7万円程度払い、Appleへの申請やサーバー代などを含めても10万円かからずに「WAKU」という付箋メモアプリを2026年6月にリリースしたばかりだ。

商品説明とダウンロードページまで含めて、AIを活用して作ってもらったのだけれど、そもそもプログラミングのことなどわからない私であってもここまでつくれてしまうことに驚いた。

無料で実験的に配布していることもあり、リリースから1週間で350回程度ダウンロードして使っていただいている。
今後こういったアプリが世の中に溢れることも考えられるので、物質的なモノづくりの持つ意味を増していく気もするけれど、なにより手軽に在庫も抱えずにリリースできる側面もあるので、興味のある人は早めに触ってみることをオススメする。

実際に「ありそうでなかったモノ」は、「ふつう」からどうやって生まれたか

ここでは、私自身が体験してきた「ありそうでなかったモノ」が「ふつう」からどうやって生まれたのかを見ていこう。
実際に作っているときには認識できず、SNSで発信してからわかった後付のことも多いけれど、それも含めてご紹介していきたい。

①レシートスキャンボードの場合

うちのお店で最も売れたレシートスキャンボードは、売れた結果だけ見ればそういうものなのだなと思ってもらえるかも知れないけど、開発は結構大変だった。

領収書や書類をスマホのカメラでスキャンする技術は、もちろん開発より前の時点でも存在していた。
会計ソフトのアプリでも、スマホでのスキャンには対応していたのだが、その時点ではどちらかというと「経費の登録」を簡単にするための手段として使われていた。
もっと噛み砕いて言えば、領収書のデータを紙の原本の代わりに保管するというよりも、日付や金額を自動で読み取って入力してくれるのが楽だよねぐらいの使われ方だったのだ。
乱暴に言えば、日付や金額が認識さえできれば、そこに不満はでなかった。

これが2022年時点での「ふつう」だったのだ。

しかしながら、2022年から領収書をスマホのカメラで撮影してデータにした場合も、紙の原本を廃棄してOKという条件の緩和が始まった。
これにより、在宅勤務のスタッフや出張時の領収書をサクッと撮影してしまえば、紙の領収書を会社まで郵送したり、出勤して提出する必要がなくなった。

さらに2024年には、電子帳簿保存法が義務化されるというイベントとともに、2023年10月からは「インボイス制度」もスタート。
このインボイス制度というのが曲者で、領収書に書かれたTからはじまる13桁の番号を、発行した側が本当に番号と一致する事業者(お店や会社)なのか受け取った側が検索して確認しなくてはならない……というめちゃくちゃ面倒な作業が追加されたのだ。

これは1つ1つ領収書を目視で確認して、パソコンに入力して検索……なんていことはしていられない。
領収書の情報をスキャンして、自動でインボイス番号まで確認してくれるようなシステムが、ここではじめて必要となってきたのだ。

こうも様々な制度や、経理の手間が増えるとなると、会社もシステムを導入して対応しよう!という機運が高まってくる。
その時にあなたが経営者なら、家電としてスキャナーを事務所に導入するだろうか?
それとも、各自が持っているスマートフォンにアプリだけ入れてもらって、カメラできれいに撮ってねとお願いするだろうか?

となると、ハードウェアの購入が不要な、スマホでのスキャンが増えることが容易に予想されるようになる。
紙の原本なしで、スマホのカメラで撮影した領収書だけを残すとなると、文字が読めなかったり、しわくちゃで確認しづらかったりすることは会社としては避けたいだろう。

ここではじめて、経理の人の目線に立った時、領収書のスマホスキャンの「ふつう」が変わるのでは……? と考えたわけだ。

手元にあったクリアホルダーを使って、領収書のシワを伸ばして撮影しようと実験してみると、どうも天井照明の反射が文字を白飛びさせてしまうことがある。
それならば、反射しにくい透明な素材はないものか……

そう考えて、取引先であるデスクマットの老舗「MIWAX」さんに問い合わせをしたところ、事務所のデスク用に使われていた、蛍光灯の反射をさせにくい低反射の素材を見つけることができた。
デスクマットのメーカーなら「ふつう」に使ってきた素材を、領収書のシワを伸ばして撮影するための道具に転用することで、レシートスキャンボードは誕生したのである。

②丸シールを貼るためのテンプレートの場合

続いて、途中に3Dプリンターで作成したサンプルが好評だったと紹介した「丸シールでドット文字が貼れるテンプレート」の場合はどうだろう。
ここでもいくつかの「ふつう」をうまく組み合わせることで、商品を成立させていたりする。

これまでにもご紹介した通り、私は10年間無印良品で勤務してきた。
無印良品には御存知の通り「しるしのない」商品が並んでいる。

それはそれでかっこよく、ミニマルな空間づくりにはもってこいなのだが、中身に何が入っているのかわからない……
テプラなどのラベルプリンターを使えばある程度きれいになるのだけど、文字のフォントが当時は選べなかったり、なんとなく「事務所感」が出てしまうことが個人的に不満があった。

そこで、独立したタイミングで「カッティングマシン」という、ステッカーを好きな形で切り出せる機械を購入した。
これならば、透明な部分などもなく、文字の形そのままのステッカー(お店のウィンドウなんかに貼られているやつ)を作ることができる。

実際に無印良品の店舗で行ったワークショップも好評で、シンガポールの無印良品でもワークショップをさせていただく展開もあった。
しかしながら、カッティングするステッカーは、貼るのもコツがいるし、製造も人の手がかかるので値段が高くなる。
よほどのこだわりがない限り手を出す人は少ない、ラグジュアリーといってもいいラベリング手法になってしまっていた。

ラベルプリンターなら手軽で安いけれど、よくある事務所の感じに落ち着く。
カッティングしたステッカーならかっこいいけれど、値段も高いし販売するのも難しい。

そこである日思いついたのが、市販の丸シールで文字をきれいに貼れたらどうだろう?という突拍子もないアイデアだった。
市販の丸シールは、300円程度で文具屋さんで販売されているし、なんと1950枚も入っていたりする。
これをガイドに沿って貼ることで、カッティングしたステッカーのパーツとして使うことができるのではないかと考えたのだ。

丸シールは単体では、むしろラベルプリンターよりも本体代を考えなくていい分安いが、だれもが一度は目にしたことがある「ふつう」のシールである。

その使い道を、テンプレートというガイドと、お客さんが自ら貼るという一手間で、ありそうでなかった場所に連れて行っているのである。
「ふつう」に使われている安いものを、他のなにかと組み合わせて「ありそうでなかったモノ」にするというのは、ハードカバーノートと同じような流れを汲んでいる。
この組み合わせての販売は、私自身がメーカーだけでなく、仕入れて販売するお店では「ふつう」であることも、商品開発に一役買っているような気がしている。

③デジタルな「枠」に付箋を貼るアプリ「WAKU」の場合

「ふつう」を他の分野に活かすというやり方は、実はアプリでも活用できるとこの頃の取り組みでわかってきた。
むしろ、物質的な文房具を販売している私が、アプリを開発するのであれば、技術力では戦えないので、こういった視点の違いを取り入れるしかないと思っている。

私たち40代以上の人には特に共感してもらえると思うのだけど、昔のパソコンのモニターの枠はすごく広かった。
これはもちろん技術的な問題によるところだけど、そこで生まれたモニターの「枠」というキャンパスに、ちょっとしたメモやタスク(やっちゃいけないけどパスワードとかも)を付箋で貼り付ける経験は、当時の「ふつう」な使い方だったように思う。

しかしながら、現代のパソコンは技術の進化とともにドンドン薄く、軽く、そしてモニターの枠が細くなっていった。
ディスプレイの有効活用としてはもちろんありがたい進化なのだけど、付箋を貼る場所は失われていったわけである。

そんな私の不満などお見通しというかのように、使用しているMacには「スティッキーズ」という付箋アプリが標準搭載されている。
もちろん使ってみたのだが、なんだか使い勝手が納得行かない。
他のアプリを起動したらその背後に消えてしまうし、常に最前面にすることもできるのだが、他のアプリでの作業の邪魔になるので、その機能はあまり使う気にならない。
結局どこに貼ったか見失いがちで、イライラしてしまうのである。

ふっと視線を向けると視界に入るような……そんな手軽なものがあればいいのに。
そんな時に、かつて私たちが「ふつう」に使っていた「モニターの枠」の存在を思い出したのである。

視界の端に常にありながらも、画面の中には入ってこない。
当たり前のことだけど、それがすごく大切だったのだ。
そこで私は「WAKU」というアプリを作り、常にパソコンのモニターの端っこの定位置に控えていて、カーソルでクリックしたり2本指でフリックすると呼び出せるようにしてみたのだ。

初めて作ったアプリなので、無料で公開したということもあるけれど、WAKUの使い心地は結構好評をいただいており、1週間足らずで350回ダウンロードされた。

こういった、異分野から見たアプローチは、コードが書けない私たちでもAIの力で参入しやすくなったことにより、様々な形で発展していくのではないかと個人的に期待している分野だ。

なにより、デジタルなアプリは在庫を抱えなくて済むし、一人で作って動きも検証できるので、「ふつう」を組み合わせて「ありそうでなかったモノ」を作るトレーニングとしてもオススメしたい。

「ありそうでなかったモノ」を、いろいろなところで見せてみる

ありそうでなかったモノを、作ることができたあとも、実はやるべきことはたくさんある。

レシートスキャンボードの場合は、販売してくれそうな他のお店に営業をかけてみたり、海外への販売ができないのか……といったことも検討した。
一方で、大手メーカーに模倣品を5分の1の価格で作られるといったケースも、商品が有名になることで発生した。

ここまでくれば、ニッチな隙間商品がちょっとした「割れ目」まで成長したと言えるかもしれない。
私のようなワンオペ店舗にとっては、非常にありがたい商品となってくる。

ただ、大きな規模のメーカーさんであれば、この売上で何人の社員を食べさせていけるんだ??と考えるのも当然だろう。
ならば、同じ様に「ありそうでなかったモノ」をどんどん開発していくというのも一つの手段だが、個人的におすすめしたいのは、商品をお店に卸すための展示会に出展してみたり、どのような技術や知見を使ってこの商品を作ったのかを詳細にnoteやHPで発信していくことである。

私たちのようなお店が仕入れる商品を探しに来る、ギフト・ショーやFRATといった商品展示会への出展は、お客様への販売とはまた違った刺激が得られて面白い。
自分のお店では売れている商品が、他の大手のお店では接客頻度が少ないので商品説明が難しそうという感想をもらったり、バイヤーさんの目線を知ることができる。

そして、バイヤーさんによっては「この商品をこんな技術を使って、こんなものを作れませんか?」と質問してくるケースも非常に多い。

そもそも、商品を作ろうと考えて工場を探そうとしても、どういった商品の相談ができるのか、どこで探したらいいのかわからない!……というのが、ものづくりを外部にお願いしている私たちのような個人事業主の悩みである。
ハードタイプのノートカバーも、レシートスキャンボードの低反射シートも、メーカーさんがオリジナル商品を展開していたことから、うちのお店は繋がる形となって始まった。

これは言い換えると、オリジナル商品を作って卸販売をすることが、工場の技術を目に見える形で宣伝していた状態にも近い。

通常、メーカーさんは守秘義務などの観点から、受注した仕事の詳細などを公開できないケースも多いと思う。
しかしここまでの「ありそうでなかったモノ」を作るとというこの一連の試みを通して、SNSの発信力を鍛えながら、自社技術を使った様々な商品例を実物として展開することができると考えるとどうだろう。

さらに、AIがネット上の検索をどんどん便利にしている現状を考えると、自社の取り組みや技術をオープンに公開しながら、定期的に情報を投稿している会社のほうが、AIも紹介しやすい材料がたくさんあると判断しやすくなることも容易に想像できる。

また、ありそうでなかったモノの活躍の舞台は必ずしも展示会だけに留まらない。

©️Yoshiki Maruyama

2023年に思い立って始めた、移動販売車での日本縦断も一つのチャレンジだった。
北海道から鹿児島まで、複数回に分けて様々な場所でオープンしたのだけど、SNSで前からつながっていたフォロワーさんや、移動販売の文具屋さんという切り口からお店や商品のことを知ってもらうことにもつながった。

切り口や場所を変えるだけで、取り扱っているものは同じなのに、全然違うお客さんに繋がれるというのは、これまでになかった市場や人脈を作るうえでは非常に重要な方法だと考えている。
これもただ、モノづくりをしているのではなく、「商品」として何かを売っている「お店」という誰でも立ち寄れる場を提供するということが、SNSとは違った新しい交流を創出してくれていると感じている。

例えば、2025年には、東京の高円寺で「確定申告」をテーマにしたイベントを開催した。
レシートスキャンボードという確定申告特化型の商品を、ただオンラインで売るのではなく、取引のあるスキャナーメーカーさんやシェアスペースを利用する個人事業主さん、更には税理士さんも巻き込むことで、気軽に確定申告の不安も相談できる異色のイベントに発展した。
こういった企画も、オリジナル商品やSNSでの発信があるからこそできることだし、商品に実際に触れてもらう場も創出できるので非常に面白い。

台湾で2026年に開催した「ありそうでなかったモノ」を販売するポップアップストアでは、threadsでの投稿が4000いいねを超えるバズにつながったことで4日間で30万円以上の売上を獲得することができた。
AIの登場により、現地の言葉に翻訳したSNSの投稿が容易になっているからこそ起きた奇跡とも言えると思う。

このように、「ありそうでなかったモノ」を基盤に据えると、他にないアイテムであることもあって、イベントをやるにしても独自の切り口で攻めることもできるようになるし、お客様も新鮮な気持ちで商品を見ていただけることが多い。
ぜひ、「モノをつくった」で終わらず、その先に待っているお客様との交流も勇気を出してやってみてほしい。

あなたの「ふつう」が、誰かの「ふつう」に繋げるモノ

自分の常識は他人の非常識。
そんな言葉も聞いたことがあるけれど、私が「ふつう」だと思っていることが、誰かにとって「ふつう」ではなかったりもする。

会社の中の「ふつう」も、社会の中での「ふつう」も、日本の中での「ふつう」も、他の国での「ふつう」も、誰かにとっては「ふつうじゃない」だったりするのだ。
さらにそれは、スマートフォンの存在が世界を変えたように「時代」によっても変わるわけで、「ふつう」というのは想像以上に揺れ動いていくものなんだなあということが、このnoteをここまで読まれた方には、少し伝わったのではないかと思う。

「ありそうでなかったモノ」は、その「ふつう」がそれぞれに違うということを前提に、情報発信やモノのアウトプットを通して理解を深め、あなたとだれかの「ふつう」を繋ぐモノなのではないかと私は思っている。
シンプルに言ってしまえば、自分の得意なことで、誰かの不満や悩みを解決してあげることであり、特別なことを言っているわけではないと思う。

ぜひあなたにできるところから一歩踏み出す手助けに、このnoteがなったなら嬉しい。

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