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#41 本番前夜~なぜ1月入試を受けるのか~

男子8.00 女子7.50 全体7.76
何の数字でしょうか。

こちら、首都圏模試センターが発表している、
2026年入試の「平均出願数」なんです。

かつて、「中学入試は七・五・三」という言葉がはやりました。
出願7校、受験5校、合格3校。
これが中学受験のいわあば「王道の流れ」だというのです。
しかし、2026年入試のデータを見ると、七・五・三よりも出願数が増えてきているのが分かると思います。
出願が増えている要因の一つは、やはり1月校を受けることが定着している ということが挙げられます。


前受受験の意図

中学受験を経験していない保護者の方は驚くかもしれません。
大前提として、中学受験は第一志望の1校受けて終わりではありません。
むしろ複数校を受験することが前提になっています。特に2月1日の東京・神奈川の解禁より先に、前受として1月に埼玉・千葉を受けることが定着しているのです。

最近では2月と合わせて、10校以上出願する家庭も珍しくありません。その理由を考えていきます。

理由その① 模試の代わりに
中学受験の模試は、12月で終わりになります。
その後、東京の中学受験解禁の2月1日まで1か月以上間が空きます。この期間、本来やってはいけないことではありますが、小学校を休んで直前期の追い込みをかけるご家庭も多数います。
小学生は最後まで伸びます。いや、最後の1か月が一番伸びる時期かもしれません。

すると、その最後の1か月の効果測定が必要となります。
1月入試の練習は、まさにこの効果測定に最適です。
埼玉の栄東・開智・大宮開成などは得点開示を行いますから、どの科目が凹んでいるのか一目瞭然です。
ただ合格するだけでなく、特待がとれたかどうか、全体の順位がどのくらいだったか、こまめに確認することで自分の立ち位置を測れるのです。

理由その② 本番の練習
中学受験というのは、12歳の挑戦です。
受験というものを経験していない家庭・本人にとって、合格・不合格のすべてが初体験となります。
小学生は、漠然と「自分は絶対合格する」と思っている節があります。
一回前受けの受験をはさむことで、そう甘いものではないという本番の空気を味わうのも悪くないでしょう。

入試当日の生徒自身の精神状態もそうです。いきなり第一志望の入試で、「緊張して一文字も書けなかった」「頭が真っ白になった」という声も少なくありません。練習をするに越したことはないのです。

保護者の方にしてもそうです。出願の流れ、当日の送り迎え、当日の持ち物など、初だからこそ、いきなり第一志望で変な失敗をするよりは予行練習をしておく必要があるのです。

理由その③ 早めに合格をとる安心感
これは諸刃の剣で、安心したがゆえに気が抜けてしまった、では意味がないのですが。
「最低でもここには進学できる」というおさえに合格しておくことで、背水の陣ではなく受験に挑めるというのは精神的にとても大切なことです。

せっかく数年勉強して挑む入試なのですから。
玉砕・全滅を前提とした併願は絶対よくないと思いますし、最終的に公立中に進学するにしても、一定数の私立に合格し「その中から進学先を選ぶ」という動作をはさむ必要があると私は考えています。
近年、安全志向からこうした早めの合格が重視されますから、その分、チャレンジだけの入試より受験校数は増えていると考えられます。

頑張ってきた生徒自身、「頑張りが認められた」と感じるのは、やはり合格をもらう以外ないと思うのです。

理由その④ ネット出願の増加
と、長々と精神的な面を書いてきたのですが、何のことはありません。
最大の理由はこれでしょう。
インターネットを用いて、手軽に出願できるようになったからです。

例えば、開智学園では、一定の受験料を納めることで、何回も受験することができます。私はこれを「サブスク入試」と呼んでいます。
しかも、1回の入試で開智系列の複数の学校の合否を判定してもらえます。1回の入試で複数の合格がとれるかもしれないのは大チャンス。コスパもよいですよね。
こうした動きが、受験数・出願数を増やすことにつながっていると考えています。(開智学園についてはこちら↓)

開智に限らず、多くの学校が、受験前日の23時59分までインターネット出願を受け付けているのです。かつては、願書は1つ1つ手書きで、郵便局へ出しに行ったものです。そう考えると、出願という行為のハードルがかなり下がっているのが分かると思います。
一方で、いったん出願したのにやはり受けない、という「欠席率」も高まっているといえるでしょう。

では、具体的な日程で見ていきましょう。

1月入試はなぜ受けるのか

東京・神奈川の受験生も、1月になると埼玉や千葉の学校を受験するのが当たり前になってきました。

もちろん本当に進学したい家庭もあります。しかし多くの家庭にとって最大の目的は、「受験の練習」です。

入試会場の空気、電車の混雑、休み時間の過ごし方。
こうした流れを親子ともに経験できるのは貴重な機会でしょう。
特に、埼玉の入試は、千葉の学校を受ける生徒にとっては貴重な前受のチャンスとなります。
千葉の受験で「前泊」するから、その練習として埼玉に「前泊」した、という例も聞いたことがあります。

合格を持った状態で2月を迎えるということも大切です。
1月校のもう一つの意味は、合格を確保することです。
人間は不思議なもので、一つ合格を持っているだけで精神的に大きく違います。1月全敗で2月を迎えると、親も子も焦ります。だから1月校は進学しない学校であっても意味があります。

また、周囲が1月入試を受ける流れが定着しているので、自分だけ1月に受けに行かないことで、「周りの子は合格を持っているのに」という焦りを感じることもあります。
ここは、あまり深く考えず、1月10日にまず合格をとりに行くことが大切です。

1月の主な学校(埼玉)

栄東
 1月10日スタートの王道。のべ1万人近くの最難関生が集まり、「東大特待」「東大」「難関大」の3コースの合格を取り合います。
順位と得点がシビアに発表されるため、どの科目が何点足らなくて不合格になったのかも明瞭なのが長所。また、1回の出願手続き・出願料で2回まで受験できるため、10日か11日で不合格になっても、16日に再度チャレンジできます。レベルの高い学校ですので合格点付近ではほんの1問のミスが命取りとなり、かなり高度な争いとなります。

1度不合格になった学校を再度受けに行くのはハードルが高いですが、実際2月では容易に起こりうるシチュエーション。精神上の鍛練だと思って2回目も受験しに行くべきです。若干の加点もあるので、再チャレンジの場合は合格の可能性も高まるでしょう。再チャレンジしても合格が取れなかった場合、2月の最難関校・御三家の合格は遠ざかるとみています。

・開智/開智所沢
近年開校した開智所沢は、ついに合格基準点で開智中を上回りました。いわゆる「サブスク入試」ですから、開智を受けても開智所沢をうけても、もう片方の合否を判定してもらえるのが長所です。
いまや、栄東よりも多くの受験生を集めるようになった開智。しかし、一方で「開智に通いたい」という意志のある生徒を優遇するような出題傾向もみられるのです。

数年前の開智中の社会の問題では、岩槻を答えさせ、地図から選ぶ問題が出ました。開智本校があるのがさいたま市岩槻区です。その場所を分かっていて、さらに城下町・岩槻と認識しているかを問う問題は、ちゃんと開智を見学したことがあるのか、合格・入学の意志が強いのかを問う良問だったと思っています。

・大宮開成
栄東、開智ほどは受験生が集まりすぎず、程よい緊張感を狙えるのが大宮開成のよいところです。こちらも点数の公表があるため、取り組んだ成果が分かりやすいと言えるでしょう。

一つ難点としては、大宮開成は問題のクセが少しだけあるということです。栄東ほど典型的で出題パターンが決まっているわけでもなく、開智ほど平易な問題が連続するわけではありません。油断すると足をすくわれる可能性が残っています。

・淑徳与野
近年「医進コース」を取り入れ、栄東同様に合格に段階が生まれ、より細かく調整しやすい学校となりました。
女子校として、埼玉受験の定番中の定番です。
私の経験上、淑徳与野で合格できないと、吉祥女子より上の学校に2月に合格することは困難となります。

つまり、淑徳与野は受験生にとって欠かせない「試金石」となるのです。

・浦和明の星女子
埼玉最高峰の女子校。男子・共学でもこれを超えるレベルの学校はありません(栄東の東大特待を除く)。
しかし、出題傾向はいたってシンプルです。あまり記述も多くなく、これまでの実力をきっちり出せば合格ラインにたどり着くことは可能です。
御三家を併願するような生徒にはしっかり合格してほしい学校と言えましょう。

ただ、年によって教科ごとの難しさのバランスが変動するため、明の星が不合格でも2月に希望をつなぐことは可能です。
前受のつもりが、ご家庭ぐるみで気に入って、結局進学した、というご家庭も少なくない、さすがの伝統校です。

1月の主な学校(千葉)

・市川
千葉御三家の中では特に古株です。かつて男子校だったころから名門校として知られてきた、千葉県に根付いた学校でしょう。

1月20日の第1回入試は、例年幕張メッセで行われ、大ホールが鉛筆の音で埋め尽くされます。
東京・神奈川の最難関受験生も多数集まり、千葉御三家の中でも特に高い人気を誇ります。

近年特にレベルの上がっている市川に合格できれば、2月の難関校にも十分勝負できる位置にいます。逆に、市川で苦戦した場合は御三家などの併願戦略は見直す必要があるかもしれません。

また、市川は単なる「前受校」ではありません。実際に進学先として選ぶ家庭も多く、学校そのものの魅力が非常に高いのです。

・東邦大学付属東邦
千葉御三家の一角です。
市川よりは手頃なレベルの共学校。1月21日が前期入試ですから、市川との併願も可能です。
後期日程は違いますが、前期の場合は4教科均等の100点満点。また、記述が少なく、取り組みやすい入試問題となっています。

理系・医学部志向の家庭から絶大な人気を集めています。
特に理科教育には定評があり、将来医師や研究者を目指す生徒にとって魅力的な学校でしょう。市川同様、合格したら通いたい、とよく言われる学校です。

東邦大東邦の合否は、2月校のチャレンジ校を決める上で重要な指標になります。また、私の経験上、千葉ではこの学校が「試金石」です。埼玉の淑徳与野同様、この学校で合格が取れなかった場合、2月の受験はかなり厳しいものになるという覚悟が必要でしょう。

・昭和学院秀英
安定した進学実績を持つ千葉の人気校です。
派手さはありませんが、非常に堅実な学校という印象があります。

市川や東邦大東邦の併願先として受験するケースも多く、千葉入試の中核を担う存在と言えるでしょう。受験日は1月22日ですから、渋谷教育学園幕張と同日になります。
渋谷幕張にどうしても行きたい、進学意志がある。そういった御三家レベルの生徒さんは渋谷幕張にチャレンジしてしかるべきですが、そうではなく安全志向なら昭和秀英がおすすめです。
とはいえ、最難関受験生でも取り落とすことがありますから、油断は禁物。

受験生も保護者も、うっかり間違えてとなりの渋谷幕張に入ってしまった、という失敗談もつきものです。

・専修大学松戸
近年の躍進校です。
かつては千葉県内の有力校という位置づけでしたが、現在では東京からの受験生も非常に増えています。

というのも、専修大学に付属しているとはいえ、外部の大学に出る生徒もかなり多い学校なのです。立地上、設備も広々として整っており、外部大学へも出られるバランスのよい共学校。文武両道の良い学校として、共学人気の高まりも追い風となっており、受験者数は増加傾向です。

問題のレベル感としては
市川>東邦大東邦>昭和秀英>専修大松戸
となりますから、1月20日あるいは26日に堅実に合格をとっておきたい生徒ならこの学校が大変おすすめです。
ひねった出題もありませんから、安心して受験できるはずです。

今後も注目しておきたい学校でしょう。

では1月にいくつ受けるのか

主な学校をみてきましたが、基本的には以下のパターンの受験がありえるでしょう。

①1月10日      埼玉開幕戦
②1月10日午後    午前午後入試の練習
③1月11日~          埼玉で、進学意志の強い学校 
            あるいは①②のリベンジ
④1月20日      千葉開幕戦
⑤1月21日~     千葉で、進学意志の強い学校

結局のところ、埼玉1つ+千葉1つ が王道だと考えます。
入試解禁日の1月10日は実力把握のためにも、模試代わりの受験を強くお勧めします。そして、千葉をさしはさむのは埼玉から東京まで20日開くことでの中だるみを避けるためです。

そのうえで、あとは「進学意志があるかどうか」です。
交通の便が良くなっている現在、あまり距離だけで学校を選ぶのはどうかと思いますが、やはり遠すぎるのはストレスになるでしょう。
(近すぎると、今度は、じゃあ公立の方が近いのでは?、という突っ込みが浮かびますが)。

そう考えると、開智所沢は都内からのアクセスがしやすく、人気が上がってきた理由が分かりやすいでしょう。

1月入試の対策は

本命が2月の場合、1月入試の対策に時間をかけすぎるのはおすすめしません。
私がよく自分の生徒にいうのは、過去問を解く量は、
1月10日の学校は9月に1回分→1月の直前に1~2回分 ということです。

9月、過去問に取り組む時期の最初に1月校の過去問に取り組むのは、比較的レベルが簡単だからです。
簡単でありつつ、実際の受験レベルを実感することができるので、いきなり第一志望に挑んで心が折れてしまうことを防げます。

また、それ以外なら入試直前、正月休みくらいに1~2周するだけでよいと考えます。気になるなら算数だけもう少し掘ってもよいかもしれません。

ただし、もし埼玉・千葉の学校に進学意志が強いなら、これだけではもちろん足りません。本命校と同様に、3回以上は過去問演習を行い、しっかりと出題傾向をおさえる必要があるでしょう。

まとめ

1月入試は、単なる「お試し受験」ではありません。

現在の中学受験においては、本番の練習であり、実力測定であり、そして合格を確保するための重要な戦いになっています。

埼玉・千葉の学校を受験することで、本番特有の緊張感を経験できます。自分の現在地を確認できます。そして何より、「合格」という成功体験を持った状態で2月を迎えることができます。

一方で、本命が2月の学校である以上、1月校の対策に時間をかけすぎる必要はありません。

大切なのは、1月校のための勉強をすることではありません。
1月校を活用して、2月の第一志望合格へ近づくことです。

受験は2月1日から始まるのではありません。
多くの受験生にとっては、1月10日の埼玉入試からすでに始まっています。

だからこそ、1月入試を軽く考えすぎず、かといって重く考えすぎることもなく、上手に活用してほしいと思います。

その一歩一歩の経験が、2月の本番で必ず生きてくるはずです。

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