中村とうようについて(そんなに良く知っているわけではないけれど)
最近Twitterで、音楽評論家の「中村とうよう」がちょっと話題になっていた。
中村とうようが編集長を務めていた「ミュージックマガジン」のクロスレビュー欄(アーティストの新作アルバムを何人かの評者が点数をつけて評価する星取表みたいなコーナー)で、中村とうようがマイケル・ジャクソンの「スリラー」に十点満点中0点をつけてめちゃくちゃにけなしている文章(何十年も前のものだ)があらためて発掘されて、「酷い!」みたいな感じでちょっとした「炎上」みたいになっていた。
「スリラー」評はたしかに厳しい物言いだけれども言いたいことははっきりしているし、マイケル・ジャクソンの「スリラー」に0点を付けて酷評し、プリンスの「パレード」に10点を付けて絶賛するのは、ひとつの見識だろう。
だいたい、ああいう星取表みたいな企画では、評者がみんな7点とか付けるのが一番つまらないので、気に入らなければ0点、いいなと思えば10点つけるみたいやり方が正解だと思う。
ぼくの記憶で、中村とうようがクロスレビューで酷評したアーティストといえば、モリッシーとトム・ウエイツ、あと矢野顕子も嫌いだったんじゃなかったかな。
それを読んで「なるほど」と思うこともあれば「それは違うだろ」と思うこともあったが、どちらにしても楽しく読んでいた。
正直言ってそのくらいで「炎上」させるなよ、と思う。
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ぼくがロックとか洋楽とかを聞き始めた頃、最初に読み始めた雑誌は渋谷陽一が編集長の「ロッキングオン」だった。
渋谷陽一、松村雄策、岩谷宏なんかの常連執筆陣の他は、読者の投稿記事で、音楽の話よりも、音楽をネタにした「自分語り」みたいな記事が多かった。
最初のうちはそれが新鮮に感じていたのだが、そのうち、自分語りよりももっと音楽そのものについての記事が読みたいと思うようになり、だんだん「ミュージックマガジン」の方へ移っていった。
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中村とうようの著作は数多いが、自分はその中で2冊だけ持っていた。
「大衆音楽の真実」と「俗楽礼賛」
「大衆音楽の真実」は世界中の大衆音楽(民族音楽ではなくポピュラー音楽)の成り立ちや歴史、特性などを網羅した大作で、この本で紹介された音楽を収録した同名のレコードもあった。
自分がいつも聴いている音楽の外に、はるかに広い領域があることに圧倒される思いだったし、著者の知識や音楽に対する姿勢にも強い印象を受けた。
こんな本を書ける人は他にいないんじゃないだろうかと思う。
「俗楽礼賛」の方はもう少しくだけたエッセイ風の内容。
装丁にも非常にこだわった面白い本だった。
今は手元にないけれど、どちらも素晴らしい本だ(出来ればまた手に入れたい)。
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2011年、中村とうようは身辺整理をした後、自宅のマンションから飛び降りてその人生を終えた。享年79。
ミュージックマガジンに掲載されていた中村とうようのコラムの最終回には、
「この歳までやれるだけのことはやり尽くしたし、もう思い残すことはありません」
と書かれていたという。
そのころはもう「ミュージックマガジン」も読んでいなかったけれど、それを聞いて淋しい気持ちにも、また少しだけ羨ましい気持ちにもなった。
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ぼくは一時期「ミュージックマガジン」をよく読んでいた、というだけで、中村とうようという人について良く知っているわけではない。
しかし間違いなく日本の音楽評論の世界で大きな実績を残した人物なのだし、「スリラー」に0点を付けた人、としてだけ記憶されるのはあまりにももったいないんじゃないか、と思う。
