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noteは作品置き場じゃなく、人に会いに行く場所──noteベテランと初心者の会話《今週の三題噺発表》


「記事って、書いて出したら終わりじゃないんですか」

向かいに座ったその人は、わかりやすい素直な顔でそう言った。
まだ書き始めたばかりのnoteビギナーで、言葉の出し方には少し遠慮がある。コーヒーカップの持ち方までどこか控えめだ。

対するベテラン書き手は何年もnoteを書いているのに、特に気取った様子はない。喫茶店の窓際でピンチのランチみたいな顔をした小さめのサンドイッチを食べながら、しばらく考えていた。

「終わりだと思ってる人、多いよね」

ベテランはそう言って、水をひと口飲んだ。
「書いて、出して、スキがいくつかついて、はいおしまい。あれ、すごくもったいないんだよね」

ビギナーは首をかしげた。
「もったいない、ですか。だって記事って作品じゃないですか」

「作品ではある。でも、作品“だけ”じゃない」

その言い方が少し引っかかったらしく、ビギナーは黙った。外では自転車が一台、やけに耳に入る元気なベルを鳴らして通り過ぎた。ベテランは続きをゆっくりとその場に置く。

「noteって、書いたものを並べる棚でもあるけど、ほんとうは人に触れる場所でもあるんだよ。書くことってさ、伝える手段だから。で、伝えるって、結局は人とつながることなんだよね」

ビギナーはカップを置いて、少しだけ身を乗り出した。
「でも、私はまだ誰ともつながってる感じしません。書いても静かだし」

「うん、それも普通。最初はだいたい静か。図書館の閉館10分前みたいな空気になる」

そこは笑っていいターンらしく、ビギナーは小さく笑った。ベテランも笑う。

「でもね、静かなのと、終わってるのは別なんだよ。記事って出した瞬間に終わるんじゃなくて、そこから“誰かが触れる余地”が生まれる。たとえばコメントとか、引用とか、あと記事の書き方そのものにも出る。人が返事しやすい記事ってあるんだよ」

「返事しやすい記事?」

「うん。完成しすぎてない記事。正しすぎない記事。あと、ちょっと人が見える記事」

ビギナーは少し眉を上げた。
「え、それって、うまくない記事のほうがいいってことですか」

「そうじゃない。最後の英語の授業みたいに、完璧に言い切って教室を去る記事も、それはそれで格好いい。でもね、毎回それだと話しかけづらい。こっちの感想を入れる隙がないんだよ」

なるほど、とビギナーは言った。
でもまだ半分くらいしか納得していない顔でもある。ベテランはそれを見て、テーブルの端に置かれた小さな菓子皿を指した。

「記事って、お菓子のおまけに少し似てるんだよね」

「急にかわいい例えきましたね」

「いや、ほんとに。みんなお菓子本体だけ見てるけど、じつはおまけのほうで誰かの記憶に残ることがある。記事の内容が本体だとしたら、その人の感じとか、コメント欄のやり取りとか、読んだあとの余白とかはおまけなんだよ。そのおまけで人は“また来よう”ってなる」

ビギナーは今度はちゃんと笑った。
「じゃあ、記事を書いて終わりじゃなくて、そのあとも少し開けておく感じなんですね」

「そうそう。ドアをぴしゃっと閉めない。感想を言ってもいい空気を残す。書き手が人としてそこにいる感じを出す。そうすると記事は承認欲求満載な独り言じゃなくなる」

ビギナーは少し考えてから言った。
「私、たぶん今まで“ちゃんと書かなきゃ”が強すぎたかもしれません。うまくまとめて、役立つこと書いて、出して終わり、みたいな」

「それも大事だよ。でもね、それだけだとちょっとさみしい。noteって、情報だけ置く場所じゃなくて、人がふらっと寄ってきて立ち話する場所でもあるから」

喫茶店の奥で、ティースプーンが皿に当たる小さな音がかちゃりとした。ビギナーは窓の外を見ながら、ぽつりと言う。

「つながるために書く、ですか。なんか、それなら書くのちょっと楽しそうですね」

「楽しいよ。しんどいけど。うれしいこともあるし、静かな日もある。でも誰かが読んで、何かを返してくれて、そこからまた言葉が動くと、記事って急に生き物っぽくなる」

書くことは発表ではあるけれど、ほんとうは会話の入口なのだと思う。出して終わり、ではなく、そこから誰かが触れられるように少しだけ開けておく。それだけで記事は、作品から“場”になる。

ビギナーは最後に少し照れた顔で言った。
「じゃあ次の記事、ちょっとだけ話しかけやすく書いてみます」

ベテランは笑った。
「うん。そのほうがいい。noteはきれいに置いて帰るためだけにあるんじゃないから」

書くことのいちばんおもしろいところはそこだ。うまく書けたかどうかより、その先で誰かとつながれるかどうか。

記事は終点じゃない。
人に会いにいくための、ちょっと勇気のいるノックなのだから。

《前回の三題噺》
1.お菓子のおまけ
2.ピンチのランチ
3.最後の英語

説明しよう!三題噺とは、まったく関係のない3つの言葉を強引にひとつの話にまとめる文章遊びであーる。頭をフル回転させながら、「どうつなげる?」「オチどうする?」という落語的プレッシャーが味わえます。エピソード構成力、語彙力、そして無茶ぶり耐性まで育つ、文章版・筋トレRPG。それが三題噺。やってみなきゃ、もったいない!

《今週の三題噺》

1.マクドナルドの新作
2.童謡
3.コンプライアンス


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