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人は文章を読む。でも惹かれているのは人かもしれない ── 魅力ある文章の書き方《今週の三題噺発表》

 
フライングゲットしたくなる文章というのは、情報が早い文章ではない。たぶん、その人に早く会いたい文章だ。

文章だけで人を惹きつけたい、と思うことがある。ものすごくある。書いている人なら、一度はかなり本気で思ったことがあるはず。

タイトルの付け方、冒頭の作り方、読ませるリズム、刺さる比喩、余白の残し方。

そういう技術を磨けば人は来てくれるのではないかって考えます。もちろんそれは間違っていないんだ。

文章は読みやすいほうがいいし、入口はおもしろいほうがいい。ぐらぐらした椅子より、ちゃんと座れる椅子のほうが親切だし。

でも、ずっと引っかかりがありまして。
ほんとうに人が人に魅力を感じるのは、文章そのものなんだろうか、と。

ここが少し怪しい。うまい文章はたしかに読める。気持ちよく読める。でも、また読みたくなる文章は、うまさだけでは説明がつかないことがある。文章は書いた瞬間に、その人の考え方まで一緒に出てしまうからなんです。

思考と言葉は、思っているより直結している。

少し怖い話でもあります。明るく書こうとしても頭の中がずっと曇っていればどこかで湿る。逆に少し不器用でも、ものの見方におもしろさや温度があれば、それはちゃんとにじむ。

言葉は包装紙みたいに見えるけれど、中身の匂いまで隠せるほど優秀ではないんだよ。包めば包むほど「あ、この箱の中、こういう感じだな」が伝わってしまう。

人が惹かれるのは、文章というより書き手そのものかもしれない。

その人の「頭の中の運び方」に惹かれているのだと思う。

同じ出来事を見ても、この人はそこを見るのか。
同じ失敗をしても、そんな言い方になるのか。
同じ日常でも、そこにそんな意味を見つけるのか。
そういうものが魅力として残る。

春の名物みたいな書き手がいる。毎年その季節になると、なんとなく思い出す人。別に毎回大事件を書いているわけではない。むしろたいしたことのない日常を書いていたりする。でも読みに行ってしまう。

あれはたぶん、文章が情報として優秀だからとかじゃない。その人の見方に季節感があるのよ。いつ読んでも、その人の頭の中の天気がある。だからまた会いたくなる。

逆に、どれだけ整っていても何かが残らない文章もある。

高級クロコダイル革みたいな顔をした文章、と言えばいいのかもしれない。立派で、つやがあって、たしかに良いものに見える。でも毎日触りたくなるかというと、少し違う。

高級感と親しみは別だし、完成度と魅力も同じではない。人はすごいものに感心はする。けど惹きつけられるのは、そこにいる人の考え方だったりする。

希望があるよね。魅力って生まれつきのキャラだけで決まるわけじゃないからね。

考えていることが、そのままあなたの魅力になるのなら、思考の習慣はかなり大事なんですよ。

何を見てもすぐに悪いほうへ意味づける人は、その癖が言葉に出る。どうせ無理、どうせ自分なんて、どうせつまらない。

そういう思考は本人の中だけで処理されず、文章の肌ざわりになる。読者はそこをけっこう敏感に触っているんです。

どうせマイナス思考がデフォルトなら、意識して考えることは少しポジティブにしたほうがいい。

無理やり明るくなれ、という話ではなくてね。太陽みたいに振る舞え、と言いたいわけでもないよ。ものごとに触れたとき、最初の反応を全部そのまま採用しない、ということなんです。

失敗した。終わりだ。そうじゃなく、ネタが一個増えたかもしれない。

傷ついた。最悪だ。ではなくて、ここが自分の痛い場所なのだと知れた。

つまらない。ではなく、自分は何におもしろさを感じる人間なのかが見えてきた。

そのくらいの半歩だけ明るい見方を選ぶ。

文章は急に前向きになるわけではないけれど、ちゃんと呼吸しはじめる。

読者は正論の立派さより、その呼吸のほうに惹かれる。完璧な人より考えながら進んでいる人のほうに会いたくなる。

文章だけで惹きつける方法を考えるなら、書き方の前に、何をどう考える人でいるかを少し整えたほうがいいのだと思う。

文章の魅力は技術で磨けるけれど、引力は思考のほうから出る。

その人が日々なにを拾い、どう意味づけし、どちらへ心を向けているか。

そこが文章ににじみ、最後に「また読みたい」になる。

どうせ頭の中で何かを考え続けるのなら、少しだけ明るいほうへ寄せておく。

その小さな選び方が、言葉の色になる。
言葉の色があなたの気配になる。
その気配に惹かれて、文章を読みに来るのだと思う。
 

《前回の三題噺》
1.春の名物
2.フライングゲット
3.高級クロコダイル革

説明しよう!三題噺とは、まったく関係のない3つの言葉を強引にひとつの話にまとめる文章遊びであーる。頭をフル回転させながら、「どうつなげる?」「オチどうする?」という落語的プレッシャーが味わえます。エピソード構成力、語彙力、そして無茶ぶり耐性まで育つ、文章版・筋トレRPG。それが三題噺。やってみなきゃ、もったいない!

《今週の三題噺》

1.お菓子のおまけ
2.ピンチのランチ
3.最後の英語


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[画像協力:さちわ]

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