【ショートショート】節分の半分は優しさでできています
ある朝、庭の地面に角のようなものが生えていた。
「鬼の角だ!育てようよ!」
下の娘が面白がり、水をまいた。
「でも鬼だよ?危なくない?苦手なものは……豆か」
上の娘が節分豆を買ってきて、角の周りをぐるりと豆で囲んだ。
筍かな?もう少し育ったら食べるか。と、私はさほど気にも止めていなかった。
節分の朝。庭に出ると鬼が立っていた。
周りを豆に囲まれ、一歩も動けずに少し切ない顔をしている。
「鬼だ!ほんとに鬼だ!」
雪にはしゃぐ子犬のように、娘たちは鬼の周りをぐるぐる周り、豆を投げつけた。
鬼は逃げたいようだが、豆の結界により身動きが取れずにいる。鬼の目に薄っすらと涙が浮かんだ。
娘たちは手を止め互いに見つめ合うと頷いた。豆の結界から我が家の門まで豆を並べ、豆の道を作るふたり。
鬼はぺこりとお辞儀をすると、そのまま出ていった。
──ちゃんと、優しい子に育ってるぞ。
私は心の中で呟いた。
鬼の後ろ姿に亡き妻の姿を重ね、私は目頭を押さえた。
終
地面からにょっきりと生える筍を見て、何か得体のしれないものが地中に埋まっているのではないか……と幼少期の私は怖くなりました。
たらはかにさまの毎週ショートショート【節分の半分は優しさでできています】に参加させて頂きました。
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