【ショートショート】火星馬券
火星に人が移住して四半世紀が過ぎた。人類はコロニーを築き、様々な未知の生物を火星で発見した。
その中のひとつが「火馬」と呼ばれる馬に似た生物である。炎のように揺れるたてがみを靡かせるこの生物は、人類にとても友好的だった。
人々は馬の倍の速度で走るこの火馬に跨り、相も変わらず競争した。火星馬券と呼ばれる馬券が売り出され、ときには億万長者を、ときには破産者を生み出した。
あるときから、この火馬が数を減らしていった。死骸もなく逃げ出した形跡もない。人々は首を捻るばかりだったが、原因も分からず競火馬は廃れていった。
「最近、すっかり火馬見ないよな」
熱狂的に競火馬に入れ込んでいた男が、向かいに座る友人に言った。競火馬場で意気投合して以来の仲だった。
「……火馬ってのはさ、他の生物に触れれば触れるほど、その生物の特徴を模倣することができる生物なんだよ」
「……そんなの、聞いたことないぞ?」
「案外、近くにいるかもしれないぜ」
友人は不敵に笑った。その瞳には、火馬のたてがみのような炎が揺らめいていた。
終
馬の目、優しいですよね。でも、噛まれると泣くくらい痛いです。心のきれいな人は噛まれないらしいのですが。きっと、馬の見る目がなかったんでしょう。
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