【ショートショート】蘇生試験
アレイスター・フォン・ツェペリ。ぼくの名前だ。由緒あるドラキュラ一族の末裔である。
今日はドラキュラ学院の卒業試験。人の影に溶け込むシャドーダイブ、鏡に映らないインビジブルなど、数々の試験を首席で突破してきた。
ぼくには目標がある。夜の一族であるドラキュラ。太陽の光に当たると灰になってしまうぼくらは、夜の闇に潜みひっそりと人の生き血を狙う。ぼくは闇の中でコソコソするのはまっぴらだった。学院を首席で卒業した暁には、ドラキュラの存在を公に知らしめ、闇から抜け出すのだ。
卒業の課題は蘇生試験だ。ドラキュラは百年の眠りから覚めたりする。もちろん百年も棺桶の中で目をギラギラとさせているわけではない。仮死状態となり、そこから再び蘇生することが必須の技能なのである。
今日から1年間、棺の中で仮死になり、1年後に棺の蓋を自ら開けるのだ。ぼくはまだ仮死になったことはなかった。だが自信が身体の内側から溢れていた。なんでもできる、そんな気がしていた。
「はじめ!」
先生の合図で一斉に棺の蓋が閉められる。暗闇の中、1年後にみごと蘇生をやり遂げた自分の姿を思い描く。ニヤリと笑うと、ふと息苦しさに気付いた。空気が薄い。仮死になるのだから問題ないと自分に言い聞かせる。それにしても狭い。いつもはキングサイズの棺桶で寝ている。それに子供の頃からの相棒、黄色い熊も隣にはいない。
あれ、怖い。いやいや、そんなバカな。闇の眷属がそんな……あれれ、怖いなぁ怖いなぁ。あ、ダメかも。狭い。怖い。怖い。狭い。
蓋を勢いよく開けた。
「あの、先生、ちょっと狭いんですが……」
目をまん丸にして口をあんぐりと開けた先生と目が合った。先生はブルブルと体を震わせると真っすぐぼくに指を突きつけた。
「失格!」
蘇生試験を3分で落第したぼくが家出をし、『闇の眷属が閉所暗所恐怖症でツんだ』という動画でバズる話はまた別の機会にしておこうと思う。
終
ドラキュラ好きです。いつの間にか首に2個ホクロが出来ているのに気付いたときはテンション上がりました。
そして最近短くまとめられない病です。
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