【連作ショートショート】勇者の屍を越えていけ ⑤勇者と修行
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生きながらに伝説の域まで上り詰めた、最強のパーティが敗れ去った。亡骸は晒され、人々はうなだれ、明日への希望は舌に貼り付いたまま、吐き出されることはなかった。
リクルシア大陸の最北端に、その場所はあった。絶えず雪と氷に閉ざされ、人を寄せ付けぬ土地。
勇者は仲間をひき連れその地を訪れた。
「かの勇者たちすら、魔王を倒すことはかなわなかった」
「ああ。こういっちゃなんだが、おれたちは彼らの足元にも及ばない」
「私は……怖いわ。死ぬのが怖いんじゃない。人々の希望にすらなれないのが、怖い……」
「そうだな。誰も、ぼくたちが魔王を倒せると思っていない。だから、修行だ。修行して修行して修行して、魔王を、倒す」
過酷な修行だった。過酷という言葉では生ぬるい、壮絶で、常に死と隣り合わせの毎日だった。
山を割ったとき、泉の水を枯らしたとき、空に浮かぶ雲をひとつ残らず晴らしたとき、武の極みに近付いたと思えた日もあった。
だが、あの勇者たちの幻影を超えることは、いつまで経ってもかなわなかった。
そして、50年が過ぎた。
「ついに、ここまできたのぉ」
「あん?なんだってぇ?」
「もう膝が痛くて痛くて」
「ここは、どこじゃあ?」
厳しい環境は勇者たちから健康な関節を奪い、変わることのない環境は明晰な頭脳を奪った。
魔王城に向かう途上で、勇者たちはひとり、またひとりと、北の大地に倒れていった。
冷たい大地に触れた一瞬、勇者の頭の霧が雲ひとつなく晴れ渡った。
氷の大地に勇者の爪が食い込み、後世に希望の言葉を刻み込む。
※完璧な準備などない。あるのは踏み出す一歩だけだ。 ──勇者
つづく
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シリーズのまとめ
