【連作ショートショート】勇者の屍を越えていけ ④勇者と告白
歴代随一の最強パーティ。人々は畏敬の念を込めて、彼らをそう評した。
神速の剣技、冷静沈着な判断、女神に愛された男。
"完璧超人・勇者"
七つの属性を操り、無詠唱魔法の使い手。
"虹をかける嵐・魔法使い"
彼の後ろには花粉すらも通ることはできない。
"鉄岩鉄壁肉の壁・戦士"
魔物すら彼女の前には跪く。後光さす聖女。
"地上に降り立った女神・僧侶"
彼らに越えられない山はなく、打ち消せない炎はなかった。
「ついに、ここまできたな」
「ああ、順調すぎるほど順調だ。だが油断するなよ。明日しくじれば、これまでの道のりはなんの意味もない」
「だいじょうぶですよ、勇者。私たちに死角はありません。女神様の加護も付いています」
「そうだよ! 戦士の守りにあたしの魔法、勇者の剣技に聖女ちゃんの回復があれば、怖いもんなしでしょ!」
「そうだな……なあ、聖女。あとで……いや、明日、生き残ったら、伝えたいことがある」
「えっ……わかりました。明日……」
「なあ、魔法使い。おれも、おまえに伝えたいことがある……おれも、明日生き残ったら、必ず」
「あっ、うん。わかった。明日……」
決戦の前夜は静かに更けていく。熾火のように、各々の心の炎を揺らめかせながら。
「愚かな人間どもよ。連携がバラバラではないか。余の前に立つ前に、立つべき場所があったのではないか?」
勇者が聖女に回復を求めようと聖女を見ると、恥ずかしさのあまりにお互い目をそらす。戦士が魔法使いを守ろうと彼女の前に立ちふさがると、魔法使いは気まずそうに後ずさる。
歴代随一の最強パーティは、魔王の足元に崩れ落ちた。
それでも勇者は、血の染み込んだ大地に爪を立て、後世に言葉を遺した。
※"明日"は希望の光だ。だが、魔王は"今日"来る。今日できることは、明日に回すな。 ──勇者
つづく
シリーズのまとめ
