【連作ショートショート】勇者の屍を越えていけ ③勇者と伝説の盾
◁◁ ③ ▷▷
大陸一おおきな山【ジーフマウンテン】。その火口の奥深くに、それは眠っていた。
誰がそこに置いたのか。いつからそこに存在するのか。それは誰にもわからない。
ただ、伝説の盾はそこにあった。
「ついに、ここまできたな」
「ああ、どんな攻撃もはねのける伝説の盾。それさえあれば、魔王の攻撃も怖くない」
「身を焼きつくす竜王の炎も、女神様の光魔法も、爆音獣プラオのヴォイスすらも防ぐと言われてますわ」
「火の民にも、無理を言って協力してもらったんだ。必ず手に入れるぞ」
「あの呪文がなければ、すでに私たちは灰になってますものね。では、もう一度唱えますわ。【アツ・クゥ・ナーイ】」
勇者たちを青白く、やわらかな光が包みこんだ。
「よし、行こう。人類解放の日はすぐそこだ」
煮えたぎるマグマの中、溶かされることなく黒ずんだ大きな岩がそびえ立っている。その上には、光り輝く伝説の盾が、勇者を待っていた。
「みんな……どこだ?何も見えない……何も聞こえない……」
全ての攻撃を防ぐ盾は、全ての音も、全ての光も通さなかった。伝説の盾は、呪われていた。
孤独という牢獄に囚われた勇者は、何も感じず、何も考えられなくなった。世界は閉じ、ゆっくりと歪んでいく。
しかし、胸の奥底に灯る最後の光を、勇者は後世のために盾の裏に刻んだ。
※孤独は敵ではない。孤独は己の鏡だ。鏡よ鏡、己はどこにある。敵はここにはもう来ない。だが、世界に穴をあけろ。 ──勇者
つづく
シリーズのまとめ
