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【ショートショート】大嘘寺

「大切に御骨をお預かりしまして、毎日丁寧に読経させて頂きます」

 仏様のように柔和な笑みを浮かべた住職は、今日も微笑みを絶やさず客を迎える。その両隣には顔色の悪い小坊主がふたり、口を縫い付けられたように押し黙って座っている。

 火葬場を併設したこの寺は、お墓の手入れも完璧で、近所でも評判だった。

 

「ここは本当に掃除が行き届いてるわね。お父さんも安心して眠れると思う」

「そうだね。しかし、本当にお弟子さんの多いお寺だね」

 綺麗に磨かれた墓石の間をふたりは通り抜ける。墓石を磨くもの、箒で枯れ葉を掃くもの、卒塔婆の手入れをするものなど、そこかしこで小坊主が立ち働いている。

「あら、あの人……どこかで見たような……」

 女は墓石を磨く小坊主に目を留め、ふと言った。

「うん?前に来たときにでも見たんじゃないのか?」

「どこかで最近……気のせいかしらね」


 その小坊主の鼻から上は、先月亡くなった彼女の上司だったものだ。


 本堂からは夜な夜な読経が漏れ聞こえた。住職は経を唱えながら遺体を繋ぎ合わせる。事故で亡くなった男の左手と右足。病気で死んだ女の左足と右眼球……。仕上げに懐から紙に包まれた薬を取り出した。

「最後にこの大生素おおうそを振りかけて……南〜無〜」

 粉を振りかけられた遺体がピクリと微かに動いた。

「もうちっと頭が良ければ、掃除以外にも使えるものを……」


 大生素寺の墓地には、塵ひとつ落ちていないと評判である。



ハートフルなお話が書きたいんです。

たらはかにさまの毎週ショートショート【大嘘寺】に参加させて頂きました。

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