【ショートショート】読書手術
目の前に顔色の悪い人間が横たわっている。私は震える手をなんとか落ち着かせようと、目の前の参考資料のページをめくった。
ここに医学の知識を持つものは私しかいない。そもそも医療が必要なくなった文明において、この古書の解読に成功した私以外、人間の手術をできるモノなどいないのだ。
「先生!どんどん顔色が悪くなってます!お願いします!」
「わかっている!わかっているが……本当に私にこんなことができるのか……」
本に載っていたメスなるものや、必要な道具は可能な限り揃えた。しかし不安はどうしても拭い去れない。
看護婦とは名ばかりの手伝いのモノが、イライラした様子で本のページを指し示す。
「ここに書いてあったんでしょ!私に治せない病気はないって」
「そんなことは書いてない。ここに書いてあるのは、人の生き死にを人間が決めることのおこがましさを──」
「どうでもいいから!早く、お願いします!」
「わかった。わかったよ……ブラック・ジャック先生、私に力を……」
ボロボロの紙面に映る、白と黒の髪をした男の鋭い眼光が私を睨みつける。おそらく唯一の人間の生き残りを死なせるわけにはいかない。
私は覚悟を決めてメスを握った。
終
今読んでもブラック・ジャックは染みますね。さすがの名作でも、これを読んで手術は無理がありますかねー😅
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