【ショートショート】雪和尚
大粒のマシュマロのような雪が降った。
「明日、積もったらうちの前に集合な」
そう約束した親友は夕方になっても現れなかった。
ひとりで作った雪だるまは不格好で、だるまと言うよりは袈裟を着た和尚のように見えた。
「なんだよ、結局あいつも…あいつらと一緒かよ」
嫌な記憶を思い起こし、胸の底が鈍く痛む。
「おれは一生裏切らないって……言ったじゃねえか……」
「──永遠なるものなどない」
厳かな声が白く染まった世界に静かに響いた。ぼくは周りを見渡すと、自分の作った雪だるまもどきに目を留めた。
「え?しゃべった?」
「──寄せては返す波すらも、いつかはその動きを止めるというもの。全ては諸行無常。これ、空なり」
ぼくは怖くなって急いで家に飛び込んだ。布団を頭から被ったが、「空なり」と言う言葉がいつまでも頭から離れなかった。
翌日、晴れ渡った空の下、雪だるまは完全に姿を消し、大きな水たまりの一部と化していた。
「悪い!妹が熱出しちゃってさ──」
親友は両手を顔の前で合わせ頭を下げた。ぼくは雪だるまのあった場所をちらりと見て首を振った。
「いいよ、次降ったらでっかいの作ろうぜ!」
透明な朝の光に、雪だるまの溶けた水がきらりと反射した。
終
諸行無常、色即是空、南〜無〜。
仏教は宗教というよりも哲学だということを知り、最近興味津々です🧘
たらはかにさまの毎週ショートショート【雪和尚】に参加させて頂きました。
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