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ギラン・バレー症候群 闘病記⑯ 〜怪我の功名

前回(⑮)では、3月末に右足の第5中足骨を骨折し、もどかしい日々を過ごしていることをお伝えしました。その後、順調に骨はくっつき、5月に入る頃には日常生活の不自由さも少しずつ解消されてきました。

しかし、着実に回復していると思っていた矢先、ある出来事が私に現在の「本当の現在地」を教えてくれました。
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身体からの無言のサイン

日常の風景が一変するのは、ほんの数秒のことなのだと、改めて思い知らされる出来事がありました。 5月16日、朝のシャワーを終えて脱衣所へ出ようとした時のことです。25センチほどの段差に右足をついた瞬間、濡れた床で大きく滑ってしまいました。

間一髪で踏ん張りがきき、幸いにも転倒には至らなかったものの、あのヒヤリとした出来事は、単なる不注意では片付けられない「違和感」を私に残しました。

思い返せば、あの時の不自然なバランスの崩れは、骨折した右足がまだ本来のしなやかさを取り戻せていないという、身体からの無言のサインだったのでしょう。無意識のうちに庇っていた足の硬さが、日常の何気ない動作の中で露呈した瞬間でした。 思えばあの瞬間が、自身の身体と改めて深く向き合い、完全復活へと舵を切る「怪我の功名」の始まりだったのかもしれません。

新しいタイヤと、積み重なる記録

骨折明けの足には、着地衝撃の大きいランニングよりも、ペダリングの方が負担が少ない。そう考えた私は、6月に入り、クロスバイクの足回りを一新することにしました。 パナレーサーのクリンチャータイヤ「ブレイクスルー」と、超軽量の紫色のTPUチューブ。自転車店で交換をお願いし、再び前へ進むための小さな投資をしました。

真新しいタイヤの転がる感触を確かめるように、少しずつ距離を延ばしていきました。スマートウォッチに残された記録は、確かなスタミナが戻りつつあることを教えてくれます。

表に並んだ数字を眺めていると、流した汗の冷たさや、ペダルを踏み込むたびに感じた風の匂いまでが蘇ってくるようです。6月28日には、朝のウォーキングから朝食を挟んでのライドと、大幅に体力が向上していることを実感できました。

クロスバイク 服装の動画イメージ(生成AI)

しかし、心と身体のペースは必ずしも一致しません。 朝のウォークの途中、3月に手応えを感じていたサブトラックに立ち寄り、150メートルほど走ってみたものの、骨折前のように上手く身体を運べませんでした。3ヶ月以上走っていなかったブランクに加え、無意識のうちに庇って硬くなった右足が、走る動作を阻んでいたのだと思います。 それでも回復の兆しが嬉しくて、そのままライドへと出かけましたが、ついオーバーワーク気味になっていたことと、水分補給が足りていなかったのでしょう。その日の夕方には、ひどい片頭痛に見舞われてしまいました。

立ち止まり、労わることの尊さ

7月1日には気象性の片頭痛も重なり、思い切って2時間の年次有給休暇を取得し、早めに退勤することにしました。 実は6月の頭に、復職から1年7ヶ月ぶりとなる有給休暇が新たに付与されたばかりでした。かつてなら無理をして働き続けていたかもしれませんが、休むべき時に休むことも、長く走り続けるための大切なメンテナンスなのだと今は素直に思えます。

動かした身体を労わるように、6月の末からはぼ毎日右足のケアに専念するようにしました。フットマッサージャーから始まり、ロフトで買った足裏ローラー、角度の調整ができるストレッチングボード。時間をかけて硬くなった筋肉をほぐしていくと、強張っていた右足だけでなく、どこか焦っていた心まで少しずつ解けていくような気がしました。

兆しを確信に変えていく日々

7月4日、週1回の外来リハビリでのことです。新しく受け取ったリハビリテーション実施計画書には、私の現在地が客観的な言葉でこう記されていました。

2026年7月1日 リハビリテーション実施計画書

治療方針(リハビリテーション実施方針)
右第5趾骨折はほぼ完治していますが、右足部の硬さがやや残存していますので、重点的に介入を行っていきます。併せて右下肢の支持性向上やバランス訓練を行います。
また、手指の拘縮改善、握力の向上も促していきます。
運動量も戻りつつあるようですので、自宅でのメンテナンスやストレッチ等は行うようにしてください。

治療内容(リハビリテーション実施内容)
関節可動域訓練
筋力向上訓練
上下肢·体幹機能訓練
手指巧緻動作訓練
バランス訓練
自主訓練指導

「右足部の硬さがやや残存しています」という一文を読んだとき、5月の朝に濡れた脱衣所で滑ったあの記憶が、はっきりとした意味を持って蘇りました。あの時のバランスの崩れは、まさにこの「硬さ」だったのです。

同時に、「右第5中足骨骨折はほぼ完治しています」という一文と、運動量が戻りつつあることを認めてもらった上での自宅メンテナンスへの助言は、静かな希望として私の背中を力強く押してくれました。 計画書にある手指の拘縮や握力低下など、ギラン・バレー症候群の後遺症とも引き続き向き合うことになりますが、それらも含めて、着実に前へ進んでいる実感があります。

かつてのように走れないもどかしさはありますが、それは決して後退ではありません。一つひとつの関節や筋肉の声に耳を傾けながら、より強固な土台を作り直している過程なのだと感じています。

日々のメンテナンスを静かに積み重ねながら、完全復活へ向けて。 焦らず、腐らず、着実に。明日もまた新しくなったクロスバイクのペダルを、柔らかく踏み込んでいこうと思います。


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