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過酷!絶滅生物の本を出すことになった話③ラフ・ネーム篇

絶滅してるから資料少なすぎる問題

悩ましい。

まず、リョコウバトと、ジャイアントモアのラフを描こうとした。絵描きなら、見ないで何でも描けると勘違いしている人も多いが、上手い人でも資料を見ないと、そのモチーフがどんな特徴を持っているのかを正確に描き出すことは難しい。

(前回の記事はこちら↓)

例えば、何も見ないでキリンを正確に描ける人もそうはいないだろう。故に、ライターさんや編集さんから送られてきた資料、及び自分でネットや本などを見て探した資料、などを参考にしながら描いていく。

しかし、である。
絶滅しているのである。

かつて、北米の空を大河のように埋め尽くしたというリョコウバト。50億羽いたとも言われる彼らも、1914年、シンシナティ動物園で最後の1羽だったマーサが死に、絶滅してしまった。もはや飛んでいる姿を見ることは叶わない。全て人間が獲り尽くした。ただ、彼らは標本が多く残っているので、色も形もわかり、どんな姿だったかを描き出すことはできる。

そこで、わかる範囲でリョコウバトのラフを描いてみる。

このラフは、ラフと言いつつ、かなり完成形のイメージ近い。

問題は、標本さえ残っていない種だ。ジャイアントモアのような生物である。ニュージーランドに生息していた巨大な鳥で、13世紀後半から100年ほどかけて乱獲され、絶滅してしまった。日本だと、南北朝〜安土桃山の時代だ。当然、完璧に姿形がわかる標本など残っていない。ネット上に溢れる画像もその多くが骨格標本を元にした再現図だ。私も前例に倣って、それっぽいものを描くしかない。だが、困るのが色だ。色がわからない。これに関しては恐竜などの絵を描く人も同じ悩みを抱えているだろう。

正直誰も見たことがない生き物なら、描ける範囲でカッコよく描きたいみたいな願望がある。例えば、飛ばないという共通点を持つヒクイドリのような色ならどうだろう。

すごい危険な生きもの図鑑

青い頭をした巨大な鳥。これは迫力がありそうだ。などと考えながら、筆を走らせ一旦送ったのが、以下のラフだ。

※もろもろの事情で、ページ全体を見せることはできません。

上の画像は、送ったラフを元にデザインを組んでもらったものだが、うぅ〜ん、ジャイアントモアは、バスケットボールのゴールと同じくらいの高さに頭が合ったらしいが、イマイチ大きさが伝わらない。やはり、首は曲げずに上に伸ばすべきだった。色も、本当にこれでいいのか、自信がない。再考の余地ありだ。ポージングや、色は清書の際に調整しよう。

食器はどうしてたの?問題

次は漫画のネームだ。ネームとは、ページにコマを割り、ラフな絵を描き込み、コマにセリフをふっていく作業だ。ただ、これが大変だ。とにかく考えることが多い。その生物が絶滅するに至った経緯を、割り振ったページ数やコマ数でわかりやすく話にするというのは、自分で言うのも何だが特殊技能だと思う。今回は、リョコウバトのネーム2Pから一部を抜粋する。

このネームを送ると赤字が入って返ってくる。どのページも大幅な修正は少なく、割と描きたいように描かせてもらっているのがありがたい。

ただ、版元からの赤字に対して、そのまま従わず、再提案した箇所もある。例えばステラーカイギュウを初めて食べるステラーのカットだ。

時は、1741年。博物学者ゲオルク・ステラーは、空腹だった。嵐の末に座礁した島は無人島でろくな食べ物がない。飢えと、寒さと、壊血病で船員はバタバタと死んでいく。そこで、初めてステラーダイカイギュウを捕らえて食べることになる。そこで問題だ。

ステラーはどうやって、カイギュウを食べたのか?

食器はどうした?フォークだろうか?だがこの時代、遭難した難破船の船員がお上品にフォークとナイフで食事するのだろうか。調理方法もおそらくワイルドだったのではなかろうか…直火で炙ったものをナイフで切り分け、手で食べたのでは…とラフを手づかみにしたら、版元からこのような指摘が赤字で入った。

「手づかみでよいですか?フォークを使いそうですけど…」

ぬぅ…もう少し調べて、説得材料を添えた上でお互い納得できるネームにするしかない。だが、時は刻々と過ぎていくのだった…

「次回、第4話。ケツに火がついている。」

ご期待ください。

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