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過酷!絶滅生物の本を出すことになった話②タイトル・台割篇

始まらない作業。

「お前も、本を出さないか?」

というお誘いがあり、「出します!」と言ったところで翌日から書き始められるわけではない。まずは、版元。つまりは出版社で、企画会議というものを通過する必要がある。その後、デザイナー、ライター、台割りなどが決まり、資料を集め、資料を読みこんで初めて、実際に手を動かせる段階に入る。

(前回の記事はこちら↓)

1年以上時間があるではないか!と思って引き受けた仕事だが、この本の仕事以外にも随時イラストやコンテの仕事が入ってくるので、いざ始めると、言うほど時間はないのだ。それでも、今まで出した本の仕事の中では、余裕がある方だとは思う。

ただ、今回の本は、フルカラーのイラストと漫画がほぼ全ページにわたってビッシリという構成だ。これがキツい。何がキツいってマンガがキツい。

マンガは、資料を読み込んだ上で、歴史上の事実をストーリーに落とし込み、会話劇にしなければならない。淡々と事実をト書で書いていくだけでは、ただのコマを割った硬い内容の絵本になってしまう。

児童書としての読みやすさ、キャッチーさを意識して、セリフに落とし込んだネームを書き、下書き、ペン入れというプロセスを経てやっと完成する。しかも、この本はフルカラーなので、キャラも背景も着色しなければいけない。

【今回のマンガの工程】
・資料読み
・ネーム(下書きの下書き)
・下書き
・ペン入れ
・着色

インプットと、アウトプットに、イラストの倍以上の時間がかかる。『侵略!外来いきもの図鑑』で一度経験したが、このままでは間に合わないと判断し、妻に着色を手伝ってもらったほどだった。

今回はアシスタントはいない。妻は、妻で自分の仕事があるので、一人で全作業をやることになる。

だいたいヒトがやらかしました

そうこうしている3月末、スギ花粉が舞い始めた頃、企画会議を通過したとの連絡が入った。実は、企画書にも少しだけ口を出している。企画書の段階で提案されていたタイトルは、

『いなくなったいきものたちとヒト  悪いのはおもにヒトなんです。』

だった。「絶滅」という2文字のインパクトや、検索ワードへの引っかかり、また、「人間によるやらかし」というコンセプトをもっと前に出したいという思いから、

・『絶滅させた生きもの図鑑 -だいたいヒトがやらかしました-』
・『絶滅!ヒトが消した生きもの事典 』
・『やらかした!絶滅させた生きもの図鑑』

などを提案した。個人的には絶対に「やらかし」というワードはいれてくれと念を押した。「やらかし」という言葉は、人間が絶滅させたという行為を端的に表す単語だと思った。結果、一応の書名は

『だいたいヒトがやらかしました。 いなくなった絶滅生物事典』

になった。なぜ、“一応”かというと、書名は実際に本をする前に変更されることがままあるからだ。この後、さらに、営業会議、役員会議などを通過する必要があり、完全にやると連絡きたのは、チラホラとセミが鳴き始めた6月下旬のことである。

本づくりの居酒屋メニュー“台割”

私はイラストレーターであり、ライターではない。文章のスペシャリストではなく、また生き物のスペシャリストでもない。文章まで書けないことはないが、イラストとマンガに加えて文章まで担当すると、作業量オーバーでパンクしてしまう。

ここで、本として、説得力をもった文章を書かれるライターさんが必要になる。こういうスタッフィングは編集のF氏が行う。そういう意味では、私も招集されたスタッフの一人だ。

ちなみに、イラスト、漫画、ライター全て担当した本が一冊ある。近代五輪第1回大会からの歴史をまとめた「なんてこった! ざんねんなオリンピック物語」だ。スポーツに興味がない人間が、オリンピックの本を任され、スポーツ自体に興味はないが、歴史には興味があると、オリンピックの残念なエピソードをまとめた本だ。自画自賛だが、近代五輪の歴史をサクッと知りたい方にはオススメの1冊になっている。

9月末、お願いするライターが決まった。生物学中心のサイエンスライターである山﨑実香さんである。監修の先生に関しては、また後ほど紹介する。山﨑実香さんにまとめていただいた資料と、こちらの手元にある資料を元に、漫画のネームとイラストのラフを描く作業がこの後発生していく。

その上で、必要なのが“台割”だ。

8月のお盆のど真ん中。最初の台割が送られてきた。

台割とは、冊子や書籍を制作する際に、全体の構成を設計し、各ページにどのような内容をどれだけの分量で掲載するかを割り振った表や設計図のことだ。例えが微妙だが、居酒屋のお品書きのようなものをイメージしてもらいたい。

例えば、以下のようなお品書きがあったとする。割と一般的なメニューだが、このバランスがおかしいと、やたらサラダの種類が充実してたり、汁物にミネストローネが入っている妙な店、いや本になってしまう。

【お品書き】
◎とりあえず一品
・酢の物
・枝豆
・冷奴
・ポテサラ
◎サラダ
・じゃこサラダ
・シーザーサラダ
◎お刺身
・ぶり
・イカ
・たい
・タコぶつ
◎焼きもの
・子持ち試写も
・エイヒレ
・いか一夜干し
◎揚げもの
・ハムカツ
・鶏の唐揚げ
・アジフライ
汁物
・あさり汁
◎シメ
・おにぎり
・お茶漬け
・焼きそば
◎デザート
・柚子シャーベット
・バニラアイス

今回の本は、現生人類であるヒト。つまりホモ・サピエンスが地球上に現れてから、その影響によって絶滅していったと考えられる生物を(基本的には)古い年代順に紹介していく。全ての種を紹介しきれないので、どうしても選抜していくことになるし、その種が持っているエピソードによって、1P、2P、4P、あるいはもっとと、ページが割り振られていく。

どの生き物を紹介するかは、編集のF氏が、版元とすり合わせつつ台割にしていくが、こちらから、この生き物を入れたいとか、Aの生物にページを使いすぎているので、よりインパクトの強いエピソードを持つBにページを割きたいなど、相談することも多い。

これまでの出した本も同様で、こちらからの意見でねじ込んだ動植物がいくつかいる。たとえば、『すごい危険な生きもの図鑑』のアフリカスイギュウがそうだ。アフリカのレンジャーにはライオンより恐れられている。最初の台割には入っていなかったので、編集に相談して入れてもらった。

店長が書いたお品書きメニューに、料理人の要望で、オススメを入れてもらうような感じなのだが、このような変更は、ラフを作る前の資料の読み込みの段階で、こちらから編集に提案していく。

ただ今回、版元からの猛プッシュで、ガッツリ20ページ割いて紹介している種がある。最初は面食らって反対したが、資料を読んでいくと、その種が絶滅した背景的には、大河ドラマ的エピソードがあり、また、人類が「知り、記録した」直後に、「絶滅させてしまった」最初の大型哺乳類として、ヒトの文明そのものを問い直す事例なので、是非読んでいただきたい。

ここから作業は実際に手を動かす作業、ラフ作成に移っていく。しかし、ここで私はある問題に直面するのだった。

「次回、第3話。絶滅してるから資料少なすぎる問題。」

ご期待ください。

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