自分の絵柄がわからない人へ|お笑い芸人で考えるイラストレーターの「世界観」の見つけ方
「自分の絵柄が定まらない」
「何を描けばいいかわからない」
「あの人の影響から抜け出せない」
イラストレーター志望の人なら、このような悩みを抱えている人が多いのではないだろうか。自分自身、ずっとそんな悩みを抱えていた。しかし、お笑い番組を見ていて、気づいたことがある。
イラストレーターと、お笑い芸人は似ている。
(以下、お笑い芸人の名前がたくさん出てきますが、全て敬称略です。)
たくさんのお笑い芸人と、イラストレーターがいて、それぞれみんな持ち味が違う。漫才が面白い芸人、コントが面白い芸人、芸はほとんどやらないけど番組での立ち回りが上手い芸人、上手いコメントは言えないけど、奇跡的なヒキを持っていてその人の挙動を見ているだけで面白い芸人。一括りにお笑い芸人と言っても、その芸風は様々だ。
芸とモチーフ
漫才やコント、芸の内容はイラストレーターで言えばモチーフではないだろうか。M1で決勝進出した漫才コンビが、バラエティの平場で苦戦している姿はよく目にする。漫才と平場のトークは同じお笑いのように見えて、種目が違うゲームだ。逆に、ショーレースで目立った成績を残していない芸人が、バラエティで重宝されていたりもする。
イラストレーターもまた、スタイリッシュな人物の絵を描く人、抒情的な風景を描く人、ゆるカワ風なキャラを描く人、下手ウマな二頭身キャラを描く人。動物の絵が上手い人。イラストレーターによって得意とするモチーフはそれぞれちがう。ゆるかわ風の動物を描いている人に、急にガンプラのパッケージを描けと言われても本来のパフォーマンスは発揮できないだろう。
人によって個性(キャラ)が生きるモチーフと、そうではないモチーフがあるのだ。
キャラとタッチ
漫才、コント、司会までオールジャンルで天下をとったダウンタウン、ウッチャンナンチャンのような人たちもいれば、出川哲朗やダチョウ倶楽部のように、リアクション芸という、ダウンタウンやウッチャンナンチャンとは別の芸で愛され、バラエティにとってなくてはならないタレントになった人もたくさんいる。
狩野英孝が、ラーメンつけ麺ぼくイケメンで出てきた時は、まさかゲーム実況や、天然でピュアなリアクションで人気を博すとは予想もしなかった。
一方で、爆笑問題のように、テレビの流行やバラエティのフォーマットが変わっても、自分たちの漫才や言葉による笑いを軸に活動を続けている芸人もいる。
誰もが同じ方向を目指しているわけではないし、同じ武器で戦っているわけでもない。
このようなキャラの違いは、イラストレーターで言えばタッチの違いだろう。アウトラインのないタッチ、ガッツリ黒い主線を入れるタッチ、色鉛筆風のタッチ、水彩のタッチ、イラストレーターによって、その人の個性、感性を効果的にアウトプットできるタッチは違い、様々である。
得意とするステージもそれぞれ違う
お笑い芸人というと、ついテレビに出ている人ばかりに注目しがちで、テレビに出なくなるとすぐ一発屋と言われるが、テレビを主戦場とせず、営業や劇場、YouTbueでガッツリお客の心を掴んでいる芸人も多い。
テツandトモは全国各地で年間約200本のイベントに出演しているし、小島よしおのYouTubeは大人気で、ショッピングモールの営業に出れば子供が大量に押し寄せる。
イラストレーターも主戦場が書籍だったり、広告だったり、Webだったり、色々である。
お笑い芸人、イラストレーター、職業名で丸っと括ってしまうと全部同じように見えてしまうが、みんなそれぞれ別の味、別の場所で勝負している。
・備わった個性を、
・適切な使い方で、
・最適の場で使用すれば、
最大のパフォーマンスを発揮できる。金槌は、木に釘を打つために木工所や建築現場で使うし、包丁は、食材を切るために調理場で使う。金槌で食材を切ろうとしても叩き潰れてしまうし、包丁で釘を打とうとしても危なくてしょうがない。お笑い芸人もイラストレーターも、自分に合った武器と、自分が活きる場所がある。
だがしかし、人間は道具ではない。心や感情をもっている。なので、憧れや承認欲求という感情に引っ張られることが多々ある。
憧れに芸風が引っ張られる
人はしばしば、自分本来の個性を発揮できる使い方や場所ではなく、影響を受けた人や憧れている人の背中をつい追いかけてしまう習性がある。そして、憧れた人物と同じような形で周囲に評価されたいという願望を抱くことがある。それが悪いとは言わないし、現にそれで夢を叶えた人もいるだろう。
だが、理想を追い続けて違和感を覚えた場合は、別の道を歩むのもまた一つの選択肢だ。
一時期の芸人さんの多くはダウンタウンに憧れていた。ザキヤマの通称でお馴染み、アンタッチャブル山崎弘也も、かつては松本人志に憧れ、斜に構えてクールなキャラを作っていた。そこから“ダウンタウンにはなれない”と悟り、「ガヤ芸人」で唯一無二のポジションを確立した。
イラストレーター界隈も、憧れの先輩の背中を追いかけている人は少なからずいる。絵の中に明らかに影響を受けた人のタッチが見て取れる。
私自身も、憧れのイラストレーターが何人かいて、そういう人たちの絵を追いかけてそれっぽい絵を描いていたことがある。しかし、そういう絵を描きつづけていて気がついたことがある。あまり楽しくないのだ。無理して、背伸びをして描いているような。自分の内面にないものを必死に掘り起こしているような。そんな感覚があった。
ファッション誌に載ってるようなスタイリッシュな線だったり、ポージングだったり、美人画だったり、抒情的な光だったり、そんな絵を見て素敵だな描いてみたいなという憧れはあれど、描こうとなるとそれはまた別の話で、それっぽいものを描いてみたところで、どうにも本物になりきれていない感がでる。
これはもはや生まれ持った性格、個性、感性、趣味趣向の違いなのかもしれない。
芸人さんには、バラエティに出て、売れて、司会をやりたいという野望を抱いている人が多いが、どうみてもガヤの方が向いてる人もいれば、そもそもテレビの収録という場自体が、本人の笑いのスタイルと合っていない場合がある。
キャラと芸が噛み合うと世界観が生まれる
イラストも一緒で、憧れのタッチやモチーフを追うのも必要だが、自分に合ってないと気づいたら、自分が生かせるモチーフ(芸)に自分のタッチ(キャラ=個性)で向き合い、その絵が活かせるステージで戦ってみる方が未来が開ける場合がある。ザキヤマのように、キャラと芸が掛け算された芸人は恐ろしく強く魅力的だ。
キャラと芸が噛み合った時、その人にしか出せない空気感や、世界観が生まれる。
「自分の絵柄が定まらない」
「何を描けばいいかわからない」
「あの人の影響から抜け出せない」
上記に上げたこれらの悩みを抱えている人は、自分の世界観が定まらないとも言える。だが、お笑い芸人に照らし合わせると、世界観というのはゼロから発明するものではなく、
自分が自然と描きたくなるモチーフと、
自分らしいタッチと、
自分が活きる場所が重なった時に、
結果として立ち上がってくるものなのかもしれない。
爆笑問題がいて、出川哲朗がいて、狩野英孝がいて、ザキヤマがいる。みんな売れているのに、笑わせ方はまるで違う。イラストレーターも同じだ。
長場雄さんになろうとしても、
長場さんにはなれない。
中村佑介さんになろうとしても、
中村さんにはなれない。
自分が自然に描けるタッチで、
描きたいモチーフを掘り下げた先に、
自分の絵柄が見つかるのではないだろうか。
それでは、読んでいただきありがとうございました。
次回は、『イラストレーターが自分の世界観を見つける方法|「4つの縛り」と「4つの実践」』です。
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