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🇪🇸サンセバスチャンでバスク地方の冬の伝統食文化、シードルハウスを堪能

初めてサン・セバスチャンを訪れたときはピンチョス巡りに徹したので、今回再訪するにあったってピンチョス以外のバスクならではの伝統的な食文化を体験したいと思っていました。なかでも前から気になっていたのがシードルハウス。今回その文化を体験するため初めて訪れてみました。


大航海時代の発展に貢献したバスク地方のシードル

バスク地方でのシードル作りはローマ時代より前に遡るといい、文献に初めてシードルが記載されたのが11世紀だそう。

16世紀にサンセバスチャンでシードルの圧搾機が製造されるようになったころ、バスク地方の漁業は欧州の海路や捕鯨産業を牛耳っており、遠くは 南アメリカや北アメリカの方まで捕鯨や鱈の漁に行っていたそうです。シードルは他のアルコール飲料に比べアルコール含量が少ないことから長い船旅でも腐ることなく、バスク地方の船に大量に積まれたといいます。

そんな最中、15世紀から19世紀にかけて壊血病という病気によって大西洋を航海する200万人もの船乗りが亡くなったそうです。後に壊血病の原因はビタミンC不足によって起こることがわかり、生鮮食料品の不足する船内では特にかかりやすい病気だったとのこと。

ところがバスク地方からの船乗りは毎日3リットルほどのシードルを飲んでいたためこの壊血病の蔓延は抑えられたのだとか。なんでもシードルは自然発酵させるためリンゴに含まれるビタミンCが壊滅されないということ。シードルのおかげでバスク地方の航海者や造船業は商人や王家からの取引が相次ぎ、コロンブスやマゼランなどの航海にも大きく貢献したそうです。

そんな逸話もあるシードルは主にバスク地方の北側で生産され、ワインが醸造されるバスク地方の南側との間に山があり交通が不便だったことから、北側では長い間ワイン文化が広がることがなく独特のシードル文化が発達しました。

バスク地方のシードルハウスとは?

バスク地方のシードルハウスはSagardotegiと呼ばれ、何百年もの歴史があり、もともとは農場内の家屋でシードルを製造する場所のことを示していたそう。地元の人々はシードルハウスにシードルを買いに訪れる際に、空腹だとすぐ酔ってしまうことから食べ物を持ち寄りシードルを飲んだそうです。そこで食事を提供すれば儲かるのではないかと気が付いたシードルハウスのオーナー。料理の提供を始め、現在では家族や友人が集い食事をしながらシードルを楽しむ場所となり、バスク地方の伝統的な食文化となっています。

シードルハウスへの町、Astigarragaへ!

シードルハウスは、バスク州だけでなく、もともとバスク地方の一部であるナバラ州やフランス側のバスク地方にもあります。折角訪れるならシードルハウスの多くある町に行きたいと思い調べると、サンセバスチャンから市バスでわずか20分ほどのところにあるAstigarragaという町が、「シードルの首都」と呼ばれているということ。2011年の統計によると人口5千人弱のこの町には21軒のシードルハウスがあり、人口230人当たり1軒あるということで欧州一のシードルハウスの町だそうです。

そんなAstigarragaに到着するとこじんまりとした村という様子。中心にも何軒かシードルハウスがあるので肉をグリルしている臭いが通りに充満しています。

こじんまりした市庁舎

今回お目当てのお店は中心から徒歩20分弱。歩いて行くと、大分田舎の雰囲気になり、黒豚と白豚が仲良く寝ている光景も。

歴史あるシードルハウス、Petritegiへ

何軒かのシードルハウスを通り過ぎ、お目当てのシードルハウスに到着。Petritegiという1526年から続く歴史のある現在でも家族経営のシードルハウスです。

建物の前には昔のシードル製造の器具が並んでいます。

グルメショップがあり自社のシードルやちょっとしたグルメの品を販売しています。

昔ながらの農場の家屋。

シードルをグラスに注いでいる壁画がありました。

レストランの入口はこちら。開店時間に予約をして少し早く到着してしまいました。スペインの昼食時間は1-2時間後なので地元民はまだいませんでしたが、フランス人のグループがすでに待っていました。

とにかく広い内部 

中に入ると何かの賞を受賞したのかトロフィーが飾られています。

レストランはいくつかの部屋に分かれています。

部屋によって内装が変わり雰囲気が異なります。

果樹園の景色に石造りの家。

グラスを持ってシードルの樽が並ぶセラーへ

テーブルに案内されるとグラスが置いてあるのでそれを持ってセラーに向かいます。

セラーからは時折「Txotx ! 」(チョッチ)という言葉が発せられます。 

今から100年以上前、客が購入するシードルを選ぶために試飲をする必要があり、樽に小さい穴を開けシードルをグラスに直接注げるようにしたそうです。 当初、穴は動物性の油で塞がれていましたが、次第に小さい「Txotx」と呼ばれる楊枝が使われるようになったそう。その楊枝を意味する「Txotx」がシードルの樽を開けるときの儀式を意味するようになり、樽が開けられると「Txotx!」と響き渡ります。

リンゴの収穫は10月に行われ、それから絞り自然発酵させ出来上がるのが1月から4月にかけてなので、Txoxiは冬の風物詩。多くのシードルハウスはその期間のみ営業しますが、最近は通年営業するお店も増えてきていて、こちらのシードルハウスも通年営業しているそうです。 

4種類くらいのシードルがあり、時折栓を開ける店員が移動して違うシードルを試させてくれます。

今は楊枝ではなく蛇口が付いています。高いところから注ぐのはシードルには炭酸が加えられていないので空気を入れ泡を作り香りをたたせるため。ドライで酸味があり炭酸が加えられていないのがバスク地方のシードルなので甘いのを期待しているとガッカリするかもしれません。

1人が注ぎ終わったら次の人が素早くグラスを前に出しできるだけこぼさないようにキャッチします。カップ半分より少なめで、あまりたくさん注がないこと。最初緊張しますが楽しいです。

食べている最中もシードルが無くなればまたセラーに出向きます。

盛りだくさんのコース・メニュー

長いコミュナルテーブルにはすでにテーブルセッティングがしてあり、バラ(Barra)というスペインで良く食べられるバゲットより少し太めのパンとチョリソ、シードルのボトル1本が置いてありました。このバラは二人分でこんな長いのもちろん全部食べられるわけがありません。

最近はピザを提供するシードルハウスもあるらしいですが、基本メニューはどこのシードルハウスも同じ。このお店を決めた理由の一つがフルメニューより1品少ないショートメニュー(Menu Corto、二人前ベースで一人36.50ユーロ)があったこと。フルメニューのMenu Sidreria(40.90ユーロ)との差は、鱈のフライがないこと。スペインのコースメニューは大抵量が多いのでショートメニューで大正解でした。

まずは塩鱈のトルティーヤ。やっぱりデカい!これで2人前です。

真ん中で切ってみるととろっとろです。塩鱈の塩加減がちょうど良くかなり美味。普通のスペインのトルティーヤというよりはオムレツ。

そしてサラダ。肉ががっつりなのでサラダは嬉しいです。

豪快な800gのチュレトン(骨付きリブロース)。恐らく相当の数の肉を焼くので個々の肉の好みは聞かれませんでしたが、スペインでは大体レアかミディアムレアくらいで出てきます。塩だけで食べるのがスペインでは普通なのでソースはありません。

レアで良い感じの焼き加減です。

後から来たお隣のスペイン人3人組のテーブルは肉の代わりにメルルーサのグリルのメニューを頼んでいました。シードルを注ぎに行っている間に内緒でパチリ。

そして最後はデザート。手前にバスク地方の名産の羊のチーズ、イディアザバル・チーズとスペインの定番、マルメロのジャム。ちょっとスモーキーでコクのあるチーズとジャムの相性が抜群です。

ヨックモックのシガール的なものとクッキー。こちらはかなり大味です。

クルミは自分で割って。

ショートメニューでもとにかく量が多くてびっくりでした。中でも塩鱈のトルティーヤが特筆して美味しかったです。

帰るころにはスペイン人も訪れ、平日の昼間にもかかわらず賑わっていました。

シードルハウスの主役はやはりTxotxでセラーを行き来するのが楽しいです。そして、こういう雰囲気はバルセロナでもなかなか味わえず、バスクならではの食文化を経験でき満足しました。

初めての1~2泊でのサン・セバスティアン滞在だとハードルが高いですが、3泊以上の滞在や2回目以降の滞在におすすめです。

次回はサンセバスチャンでピンチョス巡りです。


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