【愛知】全国で唯一の人形テーマパークの前にある人形茶屋 | 高浜茶屋吉貴(最終回/全2回) | 愛知県高浜市 | 2010・2023年
屋台のお姉ちゃん。
「今日は、ほんまにぎょうさんの方が見に来はったさかい、もう売り切れどすなぁ」
丁寧な言葉づかいとは裏腹にこちらを一瞥もせず後片付けにいそしんでいた。

隣の屋台のおじさんにも声をかけようとしたが、気配ただならぬのでやめておいた。
薄暗い小屋の中は、仕事人のおじさんが策動するにはもってこいの舞台なのだろう。
「おでんの哲」
それが彼の通り名らしい。
「熱々のおでんを悪人の口にぐいっと押し込むんだよ。そりゃあもう、あっちっちでね、息もできやしないさ。熱いわ苦しいわで、もだえ苦しんでくたばっていく様ったら、あたしゃ見てらんないよ」
あとで稲田かえさんが耳打ちしてくれた。
ただ、無理してしゃべるから、入れ歯が飛び出て耳を噛むのがわずらわしかった。

舞台上の黒子と裃着たおじさん。
黒子といえば、ラビット関根か小堺一機だろうと思って、顔幕をめくってみたが知らない人だった。すごくニラまれた。
ここで謝罪します。申し訳ありませんでした。

舞台横の様子。
人形達が流れてくるレールと舞台袖で次の舞台に向けて準備をする人形達の姿が見える。

舞台背後には、楽屋再現コーナー

台本を前に念密に打ち合わせる俳優と脚本家

俳優は手についたガムテープをこっそりはがそうとしてるが、なかなかはがれないらしい

楽屋の横、格子で囲まれた一角では舞台に終えた女性が風呂に入っていた。

格子の間に顔とカメラを突っ込み、食い入るように覗き込む。
視角を遮る無粋な格子、いかにも日本人体系の尻、まさしくチラリズムの王道、日本万歳とはこのこと。

角度を格子に突っ込んだ顔の角度を変えると白髪のおじさんが陰部凝視。
「ふてえ奴だ」
つい口にしてしまったが、よくよく見ると女性の体を洗う役割らしい。


しかし女性の裸を目の当たりにしながらこの達観した表情はどうだろう。自分だったらきっと還暦過ぎてもこんな表情はできないだろう。
どんな人生を送って来たんだろうか、
いつからこの仕事をしてるんだろうか、
妻子はいるんだろうか、
彼の顔に刻まれた皺を眺めながら彼の半生に思いをはせてみた。
股間に落ち着いており、異常無し。 いや、これはこれで異常か。

楽屋を挟んでこちら側では女性が肩をもんでもらっている

風呂に入っていた女性より立場が上らしく、座る姿も堂々としており、羞恥心も見られない。
そして左上腕部の牡丹の刺青は男の安易な下心を牽制する。

それでも先程の体を洗う老人と比較すると、下心が見え隠れする表情。

少し開いた裾が気になって位置を変えてみる。

記事を読んでくれるチラリズム大好きな男性諸君の為にこれはアップで掲載すべきだと判断。
少し暗い…かな?
ではフラッシュ撮影にて…。

「光が散るぅぅ!!」
格子の間に貼られた網でフラッシュの光が反射してしまい撮影不可能。 高々度なフラッシュトラップ、これがまさしく「江戸の知恵」。
申し訳ない、チラリズム大好きな男性諸君。この償いはいつかどこかで。

大きな挫折感を胸に一階へ降りる。下りボタンを何度も何度も押すが、扉は開かない。
横を見ると、壁からビヨヨンと飛び出したケーブル。それでも構わず押し続ける。
「カチカチカチカチカチカチカチ…」
背後には人形たちの嘲笑の気配。
「カチカチカチカチカチカチカチ…」
俺は負けない。

ということで、階段で一階に戻ると、受付のおばさんがお茶と菓子を用意して待っていてくれた。
「どうでした? ああいった大きな人形はとても高価ですからね。最近は雛人形や五月人形も小さいのが多くて、人形業界も大変なんですよ」
大変と言う割には、口調は妙にのんびりしている。見たところ、客の入りもあまり良さそうには見えないのに、ガツガツしたところがない。きっと育ちが良いのだろう。
上にいる時は気づかなかったが、無性に喉が渇いていた。冷たいお茶を喉を鳴らしながら飲み干すと、意識が現実に戻ってくる。
「最近は、おじいさんやおばあさんが孫への贈り物として人形をあげても、あまり喜ばれないことも多いみたいです」
自分があまり興味を持っていないと思ったのか、先ほどとほぼ同じ趣旨の話を、言葉を変えて続けてきた。
決してその手の話は嫌いではない。
「そうなんですよ~、最近の日本はね……」
口を開いてから改めて分かった。
自分はこの手の話が「嫌いではない」というレベルではなく、むしろ大好きなのだ。
「結局はですね……」
「○△×……」
「※$㊥……」
結局、見学に要した時間をはるかに超えるほど、おばさんとの会話に費やしてしまった。
外に出ると、陽はだいぶ傾いていた。
<おわり>
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