【愛知】全国で唯一の人形テーマパークの前にある人形茶屋 | 高浜茶屋吉貴(1回/全2回) | 愛知県高浜市 | 2010・2023年
愛知県内でもB級スポットとして名高かった「紫峰人形美術館」と、道路を挟んだ向かいにある民芸品・土産物店。1階は店舗に加え、実物大人形や鎧の展示スペース、2階は有料の実物大人形による江戸時代の芝居小屋再現ショーとなっている。
最初外から店を覗くと中は真っ暗、閉まってるのかと思って声をかけてみると暗闇の中でおばさんが繕いものをしていた。
「人が来ないもんで電気消してるんです。」と繕い物の手を止めて明かりをつけてくれた。
あぁ、そうなの、びっくりした。
店に入ると奥に実物大人形がずらりと並んでいるが肝心の芝居小屋の案内が無い。気が弱いので言い出せずにまごまごしていると、おばさんは気配を読んだのか「二階に実物大の人形50体を使った芝居小屋が再現されてますよ」と案内してくれた。
見学料の500円を渡しておばさんと一緒に二階へ上がる。
「芝居は三本あるんですが、三本目はちょっと調子が悪いんです、すいません」
おばさんが申し訳無さそうに断りを入れる。
まぁ動画撮るわけじゃないので関係ないし、いつものニソニソ笑顔で承諾の意をおばさんに伝えると、おばさんは満足そうに大きく一つうなずいて上演開始のボタンを押した。
「好きな所に座って下さい、終わったら実物大人形見てやって下さい」
先に人形の写真を撮るつもりだったので少々面食らったが、スピーカーから流れる男性の案内ボイスに追われるようにあわててゴザの上に座った。
※紫峰人形美術館は閉鎖されてしまったが、こちらはその後も営業を続けており、2023年に再訪した際の写真も併せて掲載している。
外観。
紫峰人形美術館と比較して、演劇場といった雰囲気となっている。

一階店内の様子。
木や竹で作られた民芸品などが売られているコーナーの奥に芝居小屋に入ることができなかった実物大人形が10体強並ぶ。

こちらは鎧兜展示コーナー。
基本は鎧のみの展示なのだが、二体ほど、怖い顔の人形に着せているものもある。何も考えず順番に見ていくと、少しばかりぎょっとする。


武将の足元に敷かれた皮の敷物は間違いなく本物だった。

二階からあぶれた、花魁と世話人、芸者、町人の人形。
花魁・芸者あたりはあぶれたというより、近くでしっかり見せようと一階に置かれているのかもしれない。

それでも心なしか寂しげ。 夜になるとさめざめ泣くそうな

世の中、「自分とそっくりな人間が自分を含めて三人いる」というが、実は三人どころではないことを示す、太郎、次郎、三郎、四郎。

二階に上がり、公演がはじまる直前に舞台背後に目をやると、楼上では既に石川五右衛門がスタンバっていた

正面に本格的な舞台があり、その手前の畳敷きに座ってゆっくり芝居が見られるようになっている。

舞台の両袖から人形がスルスルとやってきた。
スピーカーからは歌舞伎ボイスと説明ボイスが流れて騒がしいのだが、なぜか寂寥感がただよう。

こうして写真だけ見ていると、本物の人間のように見える。
「よっ、玉屋!」と掛け声を投げると、ちらりとこちらに視線を向けてくる。その仕草が、ほんとうに生きているかのようだ。

舞台は変って第二幕、スピーカーからは延々と説明ボイスが流れる。 正直、写真撮影に必死でほとんど聞いてないのだが。

座席の両側では、芝居を観覧する人達。

一階のお殿様、芝居そっちのけで意中の娘にアフターのお誘いをかけるも、いつものように笑顔でかわされる。

殿様と娘のこの後の展開が気になって、そのやりとりを眺めていたら、後頭部がチリチリする。
「斜め後ろ頭らへんに痛いほど視線感じないかしら」
「はい感じます」
と言うことで振り返ってみた。

そこには、妙にリアルに笑うおばさん、双子のおばあさん、そしてこちらを不敵に見下ろすおじさん。
このニュータイプのような感性は弱さ故の自己防衛か、自意識過剰なだけなのか…。
おじさんの視線を正面で受けながら、そんなことを考え、そしていつものように目をそらした。

そしてオーラス、華やかな第三幕。……のはずが、スピーカーからは一切音が流れない。人形が運ばれるキコキコという音だけが響き、やがてそれも止む。持ち場についた途端、場内は完全な無音に包まれる。
どうやら、これがおばさんの言っていた「調子の悪い第三幕」らしい。
静けさの中、
時間の経過とともに、だんだん不安というか、居心地が悪くなってくる。
人形も動かない、自分も動けない。緊張が高まる芝居小屋の中で、先に沈黙を破ったのは ——彼ら人形だった。


「ゴシュン、ゴシュン」
背後で響く音。
振り返ると石川五右衛門が首を左右に振っている。
恐らく「絶景かな、絶景かな」と大見得を切っているシーンなのだろう。
息が詰まるような緊張感。これが全部キューピーだったら、それはそれで怖いが、ここまで消耗はしなかっただろう。やはり人形師が作った人形は、質が違う。

とりあえず舞台が終わったので、人形たちの写真を撮る。
髪の毛はリアルじゃないが、ワキ毛が妙にリアルな太鼓叩きおじさん。


稲田かえさん(98歳)人形。
実在の人物らしく、人間国宝の太鼓職人のようだ。「98歳」と記載してあるが、毎年書き換えてるとは思えないので、恐らくご存命なら120歳くらいだろうか。

舞台終了後、2分くらいで小屋の中の電灯が消えた。
そしてスピーカーからは男性のテープ声で一階へは階段かエレベーターで降りるよう指示があった。

薄暗い小屋の中、何かがうごめく気配に怯えつつも写真撮影を続ける。


舞台背後の楽屋再現コーナーだけが、煌々と灯りをともしていた。

<つづく>
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