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【あがり症|仕事編10】ASDは人間関係を理解してないわけじゃなくて、理解が後から遅れてやってきて『もはや手遅れ』を知る|ふるえるままに、すすめ10

これまでのおはなし
極度のあがり症と対人恐怖で大学を中退した、『うに』。ひょんなことから大きな研究所の中にある某事務局のたったひとりの局員として勤めることに。「人と会わなくていい仕事だから、ASD的な性質のある『うに』にはパラダイスなはず」と思ってたら、『これ、思ってたんと違う……』ってなるお話です。 いろいろな人に出会って揉まれて、『うに』なりに成長して、いつか『うに』から人間になれるかな?(まだまだしばらくは『うに』が主役)

ひとりでお仕事頑張ってます

今日もひとり事務局のうにです。
仕事をコツコツこなしていきます。

事務局の最も基本的な仕事のひとつが、
新規入会者(や退会者)の手続きです。

入会申し込みが届くと、事務局長に連絡。

次回の定例会で承認・非承認が決まりますが、
たいていの場合は問題なく承認されます。

研究の世界というのは広いようで狭い世界で、
みんな誰かの同窓生だったり子弟だったり、
共同研究で知り合いだったりする。

だからわざわざ年会費まで払って
変な人が入ってくるようなことは、
ほとんどありません。

理事会で無事承認されたら、
事務局長の指示のもと、
うにが承認のお手紙と
直近のニュースレター、
会費の払込票を送付します。

理事会が終わったらすぐに
お手紙を出せるように、準備をしておこう~。

せっせ。せっせ。
仕事は早め早めにを心がけていました。
なぜかというと、やっぱりミスをしやすいのと、
ひとりだからダブルチェック機能がないわけで、
自分でミスに気付けるくらいの
時間の余裕が欲しいのです……!

もちろん【なみマニュアル】に
すべての手順は書かれているので、
問題なく滞りなく……


カニ江先生(TEL📞)
「うにさん、入会申し込み、
『海堂新』って書いてある? カイドウアラタ?!」

珍しくカニ江先生からお電話が。

「アラタさん、学会復帰かあ、
歓迎会やらなきゃな~」
楽しそうなカニ江先生の声が
受話器から聞こえてきます。

……お仲間なのかな。
カニ江先生の声を聴きながら、
(楽しそうでなによりデス)とは思いましたが、
うにの感情は、それ以上でもそれ以下でもなく。

スン……(という感じw)

うには「あの、では、失礼します…」
と電話を切って仕事に戻りました。

やることはいっぱいあるのだ

われながら、
ほんとツレない事務局員だったと思いマス……。


で、数時間後。
給湯室でお茶碗を洗っているときに、
不意に気づくのです。

(あれ……さっきのカニ江先生のお電話……
わざわざ電話で確認してきたんだよね……?

遅い。遅すぎる。つーか、鈍すぎる。

仕事にとって
そこまで大事な情報じゃないけれど、
職場の人間関係を円滑に進めるには
知っておいたほうがいい情報って、
ああいうなにげない会話の中に潜んでいる
(たぶん……)

だけど、うにはいつも
目の前の仕事に気を取られすぎて
見逃してしまうんです。

結果、ふと気づくと、
まわりのみんなは情報を共有していて、
うにだけが蚊帳の外に取り残されている……


大学ではホント色々あったことを思い出して
気持ちが暗~くなり、
ため息が出てきちゃいます。

「自分に与えられた仕事だけはちゃんとやらねば」
って思いすぎていて、
それをがんばるだけで
いっぱいいっぱいになっちゃうところ。

人と関わらないほうが
仕事は正確に仕上がるしって
思っちゃうところ。

こんな自分を変えるためには
どうしたらいいんだろうなあ。

この社会では、それじゃ通用しない。
目に見える仕事だけをこなしても、
「ちゃんとしている」とは言えないんだろうな。

もう少しだけ顔を上げて、
もう少しだけ人に関心を持って、
もう少しだけ怖がるのをやめて――
人と関わらなきゃ。

それが必要なんだって、
このころには少しずつ
わかりはじめてはいたんです。

いくらひとりの事務局だからって
学生の頃みたいに、
なにもかもひとりでやれば
何とかなった世界はもう終わったんだって。


でも……だからって、
すぐに上手にできるわけじゃないのが、
難しいんだけど……

いまさらカニ江先生に電話して、
「さっきの『アラタさん』ですが、
どんなご関係ですか」なんて聞くのも変だし。

しかも、うににとっては、
それってぶっちゃけ
どうでも良かったりするのです。

ほんと、関心がない。心からない。
(👆正直すぎるASD)

35歳の准教授。
当時20だったうににとっては
ただのおじさん。
(👆正直を通り越してもはや失礼なASD)

いまさら新たなオジサン会員さんが増えたって、
会員名簿が1行増えるだけ。
学閥も派閥もな~んにも関係ないうにには
何の影響もないじゃん?
(👆いやそーだけどさ?身も蓋もないASD)

人と関わると、世界がもっと面白くなるよ?
って、過去のうにへ
メッセージを送信できたらいいのにな。


「うにさん! おはよう! あれなんだが」
今朝もいつも通り、エビ沼先生がやってきました。

……う~ん、今日の『あれ』は、どのあれでしょうか。

「エビ沼先生、おはようございます」

「うむ。おはよう。で、あれな、あれ」


今日は、いつも通訳してくれる珊瑚さんが見当たりません。困った。


「変なの……?」

首をかしげる、うに。

「変なのって……???」

「いや、いいんだ。まだ来てないなら問題ない!」
「……そうですか?」
「うむ。が、もし変なのが来たら、私のところにすぐに知らせるように! 変なのについて行っちゃいかんぞ!」

「変なのって、何が……あ、エビ沼先生……??(行っちゃったよ)」

資料室のドアがぱたん、と閉まりました。

う~ん、変なのって、なんでしょうか。


昼前ごろ。
普段はプリンターの音とか
時計の秒針くらいしか聞こえない
静かな研究所のフロアの廊下に、
明るい女性たちの笑い声が響いてきました。

「ナミさ~~~~ん、I’m back~~~!」

資料室のドアが開き、
突然、とんでもないイケメンが入ってきました。
両手にお土産の袋を持って。

生田斗真さんをしょうゆ顔にしたような?
背が高くてシュッとしていて、
自信あふれるオーラが眩しい
それでいて親しみやすそうな笑顔と
流暢な英語の発音が似合いすぎる

その後ろから、20代後半くらいの女子たちがわらわらと出現。
その数、四、五人。
うに、この研究所に来てからはじめて、
こんなにたくさんの若い女性を見ました……。
ここは研究バカのおじさんの巣窟だと思っていたのに。
今まで彼女たちはどこにいたんだろう?!
謎すぎる……!

うにの名前、知っているんですね、女子のみなさま……
うには、皆さまはじめましてデスヨ……?
どきんこどきんこ

海堂准教授「えー、聞いてないよおお」

ああ、この人が、エビ沼先生が言ってた
へんなの……。
たしかにこの人は、
さすがにちょっと、『あれ』ですね…💦
女子全員の視線を牛耳る王子の風格。
イケメンのフェロモン(?)恐ろしすぎる。
ぜんぜん研究者さんに見えない。
職業選択間違えてませんかね…

どうやら、海堂准教授はナミさんを
ランチに誘いに来たようでした。

海堂准教授「あ、そうだ、事務室の皆さんとこれからランチなんですが
うにさんも一緒にいかがですか?」

うに「えっ……」
先生の後ろの女性たちが一瞬静かになり、
うにに視線が注がれます。
みんな顔はとってもニコニコしていますが……

あのニコニコの意味は、
さすがのうにでも間違えません。

どどど、どーぞ、みなさまで行ってください!!!

准教授はにやりと笑い、
「それは残念。では、またの機会に」


と言って、色とりどりの女性たちを引き連れて去っていきました……。

は~~~、くわばら、くわばら。

……そして、午後。

「うにさん、あいつのランチ行かなかったのか!」
突然、後ろから声。エビ沼教授です。

「え、あ、はい、えっと、仕事がありまして……」

エビ沼教授は、にまあっと笑って言いました。
「よしよし。えらいぞ。
今度、私がおいしいランチをおごってあげよう。
いつがいいかな?」

「え、えええ、いえ、そんな、めっそうもなく……! 
ど、どうぞお気になさらず……!」

――うに、パニック。
教授はそれを楽しむように「ふふん」と笑い、

おじさんが絶対言ってはいけないセリフ……!

「来週の金曜日のお昼は空けておくように!」
と言って、
足取りも軽く自分の研究室へ
戻っていったのでした……。

うはあああああ、勘弁してほしい~~~(´;ω;`)

たしかに、うには、
もう少しだけ勇気を出して
人と関わる必要がある。
それは分かってるの。

でも、職場って関わりたい人を選べないのが、
ほんと、つらいっすよね……!

さあ、金曜日がやってきた。
エビ沼先生につれられていったレストランは……👇

大切なお知らせ
本作は実体験に着想を得たエッセイですが、プライバシー配慮のため登場人物・団体・時系列・場所等に創作・合成・編集を含みます。特定を意図していません。ただし、うにが感じた気持ちと気づきは本物です。

~今までの物語が読みたい!~
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※本作は実体験をもとに再構成した創作エッセイです。

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