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【あがり症|仕事編16】ひとりじゃできない仕事の壁にぶつかる③ASDさんはアウトプットの安定化が鍵|ふるえるままに、すすめ16

これまでのおはなし
極度のあがり症と対人恐怖で大学を中退した、『うに』。ひょんなことから大きな研究所の中にある某事務局のたったひとりの局員として勤めることに。「人と会わなくていい仕事だから、ASD的な性質のある『うに』にはパラダイスなはず」と思ってたら、『これ、思ってたんと違う……』ってなるお話です。 いろいろな人に出会って揉まれて、『うに』なりに成長して、いつか『うに』から人間になれるかな?(まだまだしばらくは『うに』が主役

カニ江先生「ここにすわって」

いや!それは、いくらなんでも!

「え~~~、カニ江先生ずる~い」
若手研究員さんたちから、からかうような声が上がります。
「若い子には甘いんだから~」

カニ江先生「ちがうちがう、
うにさんは君たちの『監督』の立場だからね。

うにさんが折っちゃだめでしょ」


若手研究員さんたち「あ~~」

うに「えっ、で、でも……」
折っちゃだめ、といわれて、びっくり。
だって、少しでも折らないと、
時間がどんどん過ぎちゃうのに。
折らないで、何をしたらいいの?

カニ江先生
「はい。うにさんは彼らをよ~~~く見るんだよ。
今、折ってる人が、何人いる?」

うに「え……えっと、3人、です」
カニ江先生「そうだね、その隣の人は何やってる?」

うに「えっと、折れたものを数えてかごに入れてます」
カニ江先生「そうだね、折れたものは、どこに集まってる?」
「あそこに……」

「そうだね。今の流れで行くと、
半分くらい折れたら、封筒に入れる係が、
端の席に座って中身を入れだす、って言う感じだよね、
あってるかな、ウシオ(潮)君」

👆ウシオ(潮)さん。
ニュースレター部隊のリーダーっぽい人。
安定感抜群のおちついた雰囲気で、
本当は20代なんだけど
30代のカニ江先生より年上にみえちゃう……

ウシオさん「どーも、ウシオ(潮)です。
この中で一番この作業長いんで、
わからないことがあったら聞いてください」

「うんうん。
うにさんの仕事は、みんなの動きをみて
どこか、滞りそうなところはないかなって注意すること。
やり方は、彼らのほうが良くわかっているからね。
そして、100通ごとの確認と、封をする前の確認と、
発送する前の最終確認が、うにさんの仕事。

うにさんは、
この作業の流れの中に入って作業してはダメ。
折ってると、全体が見えなくて、
確認が疎かになっちゃうでしょ?

「そこ、もっと早くしろ~とか言うんだよ」

カニ江先生「うにさんがBOSSなんだから」

みんなから笑い声が上がります。

うに「で、でも、少しくらい何か」
カニ江先生「大丈夫、大丈夫」

ニュースレター部隊の紅一点、タイ子(鯛子)さん。
めっちゃ明るくて気さくで気が利く
(うに、来世はこんな人に生まれ変わりたい)
と思っちゃうお姉さん。
三白眼が迫力で、
基本的に『ショート単語で会話する』ハマノさん。
某国立大学を首席で卒業したんだって。
計算とか異様に強いけど、
きれいに折るとか、ちょっと苦手っぽいw
普段から(バイトで?)身体鍛えてるらしくて、
台車で荷物を運ぶときには
最も戦力になるミナトさん。
グリーンハンドで有名で、植物育てるのが超得意。

うに「よ、よ、よろしくお願いします……!」

タイ子さん「うにちゃん、めっちゃ若いよね?!いくつ?!」
うに「20歳です……」
ミナトさん「ひええええ、二十歳だって!俺よりさらに6つも、若!」
タイ子さん「ついこの間まで、高校生だったってことよね?!信じられない!ぴちぴち……!」
ウシオさん「ハハハ、俺ら、みんな社会人やってからここにきてるから
ほぼ全員アラサーだもんな」
タイ子さん「うにちゃん偉いよ!わたし、自分が二十歳のころなんて大学で遊んでたよ~~」
ハマノさん「今もだろ」
タイ子さん「えっ、ハマちゃん、ひっど!ちゃんと研究やってるも~ん」

みんなの間でどこでどんな会話が成り立っているのか
(成り立っていないのかw)
イマイチわからないけど
みんな楽しそうにサクサクと作業が進んでいきます。

うに、この時はじめて(一番若かったのに)

仕事はできる先輩たちに任せて
全体の流れを見るBOSS


っていう謎の立場になりました。


この経験が
すごく、すごく、すごく、大きかったと感じます。

最初は、慣れなさ過ぎて
超・居心地が悪かったけれど、

だんだんと
だれが、どんな動きをしているのか、
だれが、何が得意なのかとか
それぞれの個性がだんだん見えてきて
自然に、お顔とお名前を覚えられました。

しかも、彼らの雑談を聞いていると
今まで見えていなかった研究所内の人間関係が
うになりに、だんだんわかってきました……!

エビ沼研究室以外にも、いくつかの有力研究室があって
みんなはそれぞれ別の研究室に所属しているんだよ、とか。
(ほほう、なるほど……)

海堂准教授はもともとエビ沼研の出身で
つまり、エビ沼先生の弟子なんだけど
数年前に海外に行っちゃって、
日本企業の●●●と共同研究決まったから
帰ってきたんだってよ、とか。
(へえええ、うにでも知ってる企業だ)

海堂研究室の二人の助手が
右魔と左魔と呼ばれていて
恐ろしいほどの仕事の鬼で
できれば遭遇しないほうがいい、とか
(うわ~怖そう!うにも気を付けよう)

どうも、海堂准教授関連の話題が
今のみんなのホットな話題のようです。

謎の人

こうして、ニュースレターを折る会での
みんなの雑談から、
研究所の色々な情報を
かなり仕入れることができました。

うにには直接関わりのない内容だったとしても
研究所内の情報があるのと全くないのとでは
意識の上で大違いで。

そうか。
うに、いままで、
こんな風にちゃんと周りを見たことがなかったかもしれない。
だれとだれが仲良くて、
どんなふうに動いているのか
何が得意で、何が苦手で
どんなことに興味を持っている人たちなのかとか。

自分の周りの人たちの情報を
仕入れて観察するのが
圧倒的に足りていなかったのかも……!

うに、人が怖かったし
今まで噂話とか大嫌いで近づこうともしなかった……

いまさら気付いた、うに……。
(美大の時に気が付きたかったよ……)



うに「あっ、はい!」

ようやく仕事だ!
(ちょっとホッとしつつ)

うに、名簿をもって
段ボールの中の封筒が開いたままの100通を確認します。
これは、会費をちゃんと支払ってくださっている
通常会員様の100通です。名簿の「あ」からスタート。

うに「……あってます!」
ウシオ君「じゃあ、これは後でみんなで一気に糊付けしましょう。
封をしてしまうと、万が一間違いがあったら、戻れないので」
うに「あ、はい!(なるほど……!)」

カニ江先生が、うんうんとうなづいています。

カニ江先生「じゃ、そんな感じで、みんなよろしくね~!
ぼく、アラタ先生(海堂准教授)とランチ行ってくるから。

あ、そうそう、うにさん。
郵便局へ持って行くのも、
うにさんは台車を押したりしないで
お兄さんたちに任せるんだよ?

バイト代はしっかり払うんだから、
みんなに働いてもらおう!

うにさんは、郵便局で通数を確認して、
予定通りのお金を払って領収書をもらって、
帰ってくるのが仕事」

うに「は、はい」

カニ江先生「じゃ、みんなよろしくね!」
みんな「はあ~い!」


この経験から、うには、
どういう人が、仕事をお願いしやすい人なのかを学びました。

なんか、言葉にするとすごく当たり前すぎるんですが……

『気が利いて良く動いてくれる人』が
やっぱり、仕事をお願いしやすいですよね。

で、そういう人って、つまり
そもそも、よく周りを見ているから
いろいろ気が付くわけで。

よく見ている、って言うのは
目の前のことを目で見てるだけじゃなく
周りの状況を広く色々みていて
耳で聴いて情報を集めて
頭で整理して、前後関係も理解していて。

一緒にお仕事をしていると
「この人、なんでこんなことまで
気が付いてくれるんだろう……!!
スーパーマンじゃないだろうか」
って感動しちゃうことが多々あります。
うに、気が利かないにもほどがあるタイプだから
そういう人と出会うと本当に感動してしまいます。
(そういうときは、感動のままに伝えるようにしています)

さらに重要だなって思ったのが
『アウトプットが安定している人』です。

口から出す言葉や、態度に安心感と一貫性があって、
忙しなさもなく、変な圧もなく
接していて怖くない人。

そういう人って、
とにかく話しかけるタイミングが読みやすくて
(というか、いつでもウェルカムな感じがする)
仕事が頼みやすい……!

だから、そういう
安定した人に仕事が集まり
その人はさらに仕事ができるようになっていく。

そのことが、
仕事を頼む側になると
ジワジワとわかってきたのです。

ご本人的には、あれもこれも頼られちゃって
自分の仕事が進まないとか
色々悩みもあるかも……も、申し訳ない……

(とはいえ当時はなんとなく、
ウシオさんにはお願いやすいなー
ハマノさんはちょっと怖いなあー←w ハマノさん、ゴメン!
なんでかな?って考えていたくらいですが。)

『周りから見てわかりやすい人でいる』
『いつも安定している』って
実は猛烈に大事なのかも。


『わかりやすい人』=『安心して関われる人』
それがあるだけで、人間関係がちょっとスムーズになるとしたら。

ASDタイプさんは(うにも含めて)
ここを意識すると、もしかしたらすこーし変わるかも。

たぶんASDっぽいタイプって、
頭の中で何を考えてるのか、
周りから見たらわかりにくいんだろうなって、思うのです。

実際、うにもよく言われます。
何を考えているのか、頭の中をのぞいてみたいって。

そのくらい、普段から自分のことを
会話でアウトプットしていないんだろうな~って思います。
(自分ではしているつもりなのが恐ろしい)

自分自身を抑え込んで
ひたすら一生懸命周囲を読んで(読めないのに)
合わせつづけても、過適応で疲れちゃうからさ……。

だから、普段から自分のことを
できるだけ安定的にちょい出しして
『〇〇さんは、こういう(ちょっと変なw)人』という予測を
周りの人が立てやすくしておく感じ。

ASDさんが社会でうまくやっていくためのTIPSって色々あるけれど

ここでめざしたい、「うまくやる」っていうのは
友達にいっぱい囲まれて楽しい人生をすごすとか
素敵なパートナーに恵まれて愛ある人生を送るとか
人生の理想をあげたらきりがないんだけど

いきなりそんな高みを目指すんじゃなくて

友情や愛よりもその手前にある
存在の安定感を出そう。
話しかけても、怖くない人・めんどくさくない人になろう、
という話です。

う~ん、つたわるといいなあ。

このとき、うには知らなかったのですが、
ニュースレター発送の小さなマネジメント経験が
これからやってくる、
全国規模の大イベント運営のための
良い練習になっていたのです。

そう……これからもっと大きな仕事で
うには監督役をやることになるわけです……💦

この時はまだ、知らなぬが仏な、うにでした。

さあ、郵便局へGO!です。
つづく!



マ大切なお知らせ
本作は実体験に着想を得たエッセイですが、プライバシー配慮のため登場人物・団体・時系列・場所等に創作・合成・編集を含みます。特定を意図していません。ただし、うにが感じた気持ちと気づきは本物です。

~今までの物語が読みたい!~
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※本作は実体験をもとに再構成した創作エッセイです。


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