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【あがり症|仕事編6】能力の凸凹を活かす仕事|ふるえるままに、すすめ6

うにの仕事。
世界中に数千人の会員がいる組織の
たったひとりの事務員。

目の前には、膨大な運営資料のファイル。
(過去何十年分の運営資料も含む)
上司は常に不在で、月に一度定例会議でやってくるのみ。
連絡を取れるのはメールだけ。
(そして長期でメキシコ行っちゃうらしい)

そして前任者だった『ナミさん』という先輩は
何らかの事情があって
直接仕事の引継ぎをすることができず。

『次に事務を任された子のために』と
一冊の分厚い引継ぎファイルと
毎日の業務を記録した
数年分の業務日誌を残していたのです。

この引継ぎファイルが、すごかった……!!
すべての仕事が見事に整理され、
徹底的に分解され、事細かに説明された、
オール手書き文字の(!!)
スーパーマニュアルでした。

過去にも現在にも、
あの引継ぎファイルほど
すべてにおいて行き届いた
完璧なマニュアルを見たことがありません。

ぴか~~~~~~~~!

カニ江教授
「そうなんだよ、ナミさん、
本当にすごい人だったんだよ……!
僕たちは長年すっかりナミさんにおんぶにだっこでね。

『困ったときのナミさま』って有名で
ナミさんに泣きつけば大抵のことは
なんとでもなったんだけど」

ナミさま……!
どんだけ優秀なんですかーーー!
でも、これだけのマニュアルが書ける人ですもん
さもありなん……!

カニ江先生
「それで、ナミさんが急に仕事を
やめなくちゃならなくなったときは
時すでに遅し
もはやだれも仕事の全貌が
わからなくなってしまったんだよ……」

遠い目のカニ江先生……何があったんですか、って突っ込むのもはばかれます……。

黄昏ているカニ江先生は置いといて
当面のうにの仕事は、
この【ナミさまマニュアル】を読み込み、
仕事の全体像をできるだけ早く
把握することのようです。

カニ江先生
「で、どうかな? これ、読んだらいけそうかな?」

うにはうなづきました。

カニ江先生は
「本当に大丈夫?
わからなくなったら電話くれていいからね?」
って若干心配そうにしていましたが

うにの中では
「この仕事なら、できるかもしれない……」
という静かな確信が芽生えていたのです。

と、思った理由。
それは、マニュアルがすべて『文章』だったことです。

実はうに、読解は、か・な・り得意なんです。

子供のころからの
対人恐怖症と書痙のせいで
同級生とは、まー、会話がかみ合わず、
休み時間はつねに本と友達。
10代の全てを圧倒的な量の読書に捧げて
過ごしてきました。

ティーン向けの小説や漫画はもとより、
うっとしいくらい暗い日本文学も
ちょっとセンスが理解不能な海外文学も
テクニカルで難解な自然科学系のSFも
海外翻訳物のミステリーも
経済学などのアカデミックな本も
自己啓発書やビジネス書なども
果ては、BLなどのコミケ系の本や漫画まで
古今東西、本なら全部大好物。

何しろ友達がいなかったから
今までずっと読書を通じて
『人類とは何か』←w
ということを理解し続けたために

読むスピードも理解も速い
そして、文字や画像なら記憶力も強い。

書痙のせいでメモを取ることができないので
それを補うために発達したのかも。

つまり、
『視覚情報処理能力は
かなり長けていた』
のです。

一方で、耳から入ってきた
聴覚情報を処理するのはかなり苦手。

音が聞こえていても、
それが人の声だとわかっていても
1回で意味を認識することが
難しいことが多々あります。

『すみません、聞いてはいるのですが、
理解はできていないんです。
もう1回説明してください』
学生時代はこれが言えなくて本当に大変でした。

真面目に聞いているのに
理解はできていない、
こういう状態って
学生時代には様々な弊害があります。

何度も指示を確認しなければいけないし
それができないときは
周りの人の動きを観察して
それになんとか合わせないといけない。

(体育の時間の『右むけ~右!』も苦手
いつも反対に回りかけて
周りをみて慌てて
こっちか!って回ってた、うに)

「右向け右!」ってプラカードに書いて掲げてくれたら、完璧に遂行できるのに。
その場でメモが取れればいいのですが、書痙だからメモも取れない。

そして、会話の中で
アドリブで答えることも苦手。

しばらくじっと考えて
さらにいくつかの質問を追加し
自分の中で相手の話の全体像が
理解できてはじめて
ようやく答えることができる。

相手は、そこまで深い回答を
求めているわけではないのにね。

外から見たら
何かがずれている子
って思われると思います。

こんな感じだから、
同級生とは会話がかみ合わず。

会話のテンポが、うにだけな~んかずれるし
ボケやツッコミのポイントが分からないし
みんなが笑っているのに、自分は理解できずに笑えないし
逆に自分が真剣に話したら、みんなが笑いに変えてしまう
その笑いの意味がわからない
暗黙のコミュニケーションの意図が見えない
まるで理解できない自分が笑われているように感じる。

あの感じが、本当に本当に本当に、苦手なんです。

そういう「ズレ」が積み重なっていくと、
だんだん「仲間に入りたいのに、入れない」
っていう苦しさになってきて
人付き合い苦手が加速するんですよね。

ASD的な特色を持つ人って、
「本に没頭して孤独でも平気」とか
「ひとりでも大丈夫な、個性的な人」
と見られがちです。

でもそれは違う。
好きでひとりでいるわけじゃない。
誰だって、仲間と笑いあえたらうれしいし、
同じテーブルでお昼を食べられたらしあわせなんです。

ただ、人とテンポが違うんです。
みんなが仲良く歩いているのに、
自分だけがぎこちなくへたくそなスキップをしているみたい。
遅れたり、速すぎたり、何もないところで転んだり。
普通の歩き方がわからない。

人とうまく関われない。

でもそのことをクヨクヨしていても仕方がない
だって無理なんだもの。

それなら、と
ひとりの時間を楽しむ術を
発達させている生き物。

それが、うにです。

そして今、うにの目の前には
ナミさまマニュアルがある。

口頭で指示する上司はいない。
職場の人間もいない。
会話する必要がない。
一生懸命に『普通』に合わせようとして
次第にぼろが出てきて
失望されていくこともない。

毎日、ひとりで【ナミさまマニュアル】を読みこみ
コツコツ実行すればいい。

コツコツは得意分野

「視覚情報処理能力」という
うにの最強カードだけを
使えばよかったのです。

これを天職と呼ばずして何と呼ぶのでしょうか。

つづく!

周囲の人と同じリズムで関われない。
なんでかわからない。
もっと上手にできれば楽になるのに。

うには長い間そう思っていました。

だから「擬態」の練習もずいぶんしました。
擬態とは『普通の人の普通らしさを観察して、まねること』。
その結果わかったのは、
まったく新しい場所で短期間なら、
けっこう「普通の人」みたいに振る舞える、
ということ。それなりにうまく。

でも、長く続ければ、じわじわと本質は露呈する。
やがて違和感が積もって関係はぎくしゃくし、
結局は自分から距離を置いてしまう。


今でも覚えてる、あのシーン。
高校時代、一生懸命に周りを観察・研究して
擬態していたら
ある日、友人(だと思っていたふたりに)
「最近うにちゃん頑張ってるよね」
「うんうん、よーやくみんなの気持ちがわかるようになって来たんじゃない?」
って、めちゃくちゃ上から目線で言われた瞬間。

うにの中で何かがプツンと切れた。

なぜ彼女達は自分の普通を普通だと思っているのか。うににはうにの世界の普通があって、あなたたちは、普通じゃないんだぞ。

うにはつくづく思ったのです。
うに、バカみたいだ。
一生懸命に彼女達の普通になろうとして
カメレオンみたいに生きて
上から目線で『上手になってきたね』
なんて言われて。

腹の底からふつふつと怒りが湧いてきた。

こんなカメレオンみたいな生き方をして
己が人生、何が成せるよ、と

『己の本質に生きずして、
己が人生、何が成せるよ』byうに

ASDというのは、
うにだけじゃないし
これまでの人類史の長い時間の中で
どれほど生きづらさがあっても
このスタイルがしぶとく
受け継がれてきたということは

なんらかの理由があるはずです。
わからんけど。
わからんけどね?

だけどさ
もういい加減に
己の本質に正直に生きようぜ。
どうせ自分の人生以外の人生は
生きられないんだから。

って、海風に吹かれながら思ったのです。

(『ぜ』ってつけると、
なんかださくて笑えるけど
勇気がでますよね、ふふふ。)

ASDがなんだ。健常がなんだ。
よく観察してみれば、
みんなそれぞれ微妙に
おもしろいステップで歩いているじゃないか。

最初にいい人ぶったり、
普通ぶったりしてがんばっちゃうから、
あとから苦しくなる。
がんばるところは、たぶんそこじゃない。

「自分プロジェクト」を持とう。
大きくても小さくてもいい。

筋トレでも、料理でも
絵でも、文章でも
noteでも何でもいい

人生のエネルギーの8割をそこに注ぎ、
残りの2割を仕事や生活や
数少ない人間関係に割り当てる

仕事は生きるために必要だけど、
それ以外の時間は
徹底的に自分プロジェクトに捧げよう。

そうすれば
われらASD族の特性は
尋常ならざるほど集中しやすく
尋常ならざるほど深堀りしやすく
そら恐ろしいほどの結果を
おのずと出してしまう
そういう性質ではないですか。

いい加減、認めようぜ、みんな!
我ら、そもそも変人なんだから!
普通になろうとして、なんになるよ!

そういう自分本来の
すばらしい性質を!生かすすべを考えよう。

アハ体験中のうに。


~今までの物語が読みたい!~
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※本作は実体験をもとに再構成した創作エッセイです。




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