孤憤

なぜおれは認められない。どうして。どこか一つくらいおれを認めてくれる場所があってもいいじゃないか。こんなのおかしいだろ。
中学の時、『灼眼のシャナ』の模写をノートに書いていたら、遠くからおれに向かってボールが飛んできて当たった。おれは怒り狂い、ボールではなく近くにあった黒板消しを飛んできた方向に投げた。黒板消しは目標に命中することなく窓ガラスを割った。おれは、ボールを投げてきたやつらなんか比じゃないくらい教員に怒られた。あー、思い出しながらムカついてきた。あいつらマジでふざけんな。とくにF。太っているのに陽キャ集団の中でセンス系のツッコミしやがって。マジで許せない。Nがいま博報堂で「視覚メディアのこれから」みたいなテーマでWebマガジン作ってるのも許しがたい。なにが視覚メディアだバカが。おまえ授業中に机の下でモンハンやってて教員に取り上げられてたじゃねえか。おまえの視覚メディアはモンハンだろ。
おれのシャナの絵はわりと上手かったので、けっしてクラスのマドンナ的な存在ではない存在の女子から「うまいねー。あたしも描いてよー」と声をかけられた。ここまではいいよ。おれはそれを真に受けて一生懸命かわいくかわいく絵を描いた。描けたのはいいんだけど、その女子がぜんぜん一人でいる瞬間がないでやんの。なんであいつらはいっつも誰かといるんだよ。おれは誰かといたことなんかなくて時間が余って余ってしょうがなかった!もうええわと思ってふつうに四人くらいでたむろってるところに突っ込んでって、
「あ、なんか、絵描いてほしいって言ってたじゃん?あれさ、描いたんだけど。まああのぜんぜん正直似てないっていうか、おれなりの解釈?みたいなのが入っててまあ気に入るかどうかは微妙なんだけど、描けたは描けたし、手元に置いておいてもどうしようもないっつーか……」
その女子は「あー、そんなこと言ったっけ」と言いながら紙を受け取った。二秒くらいみたあと、「これあたしなんだって」と言って、ほかの女子にも回覧する形になった。女子たちは低い小さな声で「ヒヒヒヒヒ……」と笑っていた。嘲笑っていた。嘲笑っていた!!おれがずっと突っ立っていると、
「うん。ほんとにありがとね。ほかの人にも書いてあげな。男子とか」と言って、絵の描かれた紙を四つに折りたたんでポケットにしまった。
折るな!
そのあとおれはクラスの連中から「あ、神絵師じゃん」とか言われるようになって、まあなとそのときは思っていたけど、今思えばみんなおれをバカにしていた。
ていうかおれはいつまで中学のことを覚えているんだよ!
いつまでも覚えているんだよ。きっと。
おれはコミティアに自作の漫画を出したりしているんだけど、尖りすぎて三冊くらいしか売れない。でも三冊は売れてるわけじゃん。うるせー三冊でメシが食えるかよ!あと、毎回買ってくれる女性がいて、「やばい、好きになりそう」って思っていたけど、シーズン毎に違う男のことで病みツイートしている。そんなろくでもない男とばかり付き合うのはやめろ!はやくおれに切り替えるんだ!
おれも寺田克也になりたかったよ。村田蓮爾になりたかった。
マジで意味が分からない、モテないし、おれは一切行くことのないカラオケでバイトしてるし、住んでる部屋の壁は薄くて、ジジイが痰を吐く爆音がとどろくし、バカがAPEXかなんかやって叫んでる声が夜中に聞こえてくるし、男ばっかりじゃねえか、バイト先では高校生とか大学生の男女が青春真っ盛りみたいな顔して部屋の床をもう二度ともどらないくらいジュースでべたべたにしていくし、おれはコミティアの持ち込みブースみたいなところ行って、「うーん。伝えたいことがあるっていうのはわかるんですけど、やはりそれを実現する、ひいては商業的な媒体に掲載する、ってなってくるとある程度、基本的な画力ですとか、わかりやすいストーリー展開ですとか、そういったものが必要になってきますよね。パッションはすごく伝わります。そこは絶対になくさないでほしいです。でも、同時にもうちょっと『伝える』っていうこと、『読者にそれを届けるんだ』っていうことを考えると、基本的なデッサン力とか、王道のコマ割りとか、読者が共感しやすいキャラクター造形、ストーリー展開といったものが必要になるんじゃないでしょうか」とか言われたけど、ようするにドヘタクソってことだろうがよ!ボケがボケがボケがボケがクソクソクソクソクソおれだってわかってんだよそんなこともうこういうやりかたしかできねんだよだれも望んでこんな風になりゃしねーよ視覚メディアのこれからじゃねんだよ四つに折るなよでも描いてって言われたのうれしかったよみんなおれを笑ってたけど笑ってた笑ってたクソクソクソ笑うな笑うな笑うな痰の音うるさいってカラオケボックスでおっぱじめようとするのやめろってそんなやつとは別れろ別れろ別れろ別れろおれもその男とっかえひっかえルーティンにいれてくれいれてくれいれてくれちがうこんなことが言いたいんじゃないおれはただ一人にしないでほ

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