終わらない時代 第13話
『海の異変』
翌朝、会議室に入るジュリア達。
「来たか。今日は漁港を調査してもらおう。」
カイルはモニターを映す。

映っているのは朽ち果てた漁港。
「この漁港で化け物を見たという情報が入っている。その調査をしてくれ。」
「本来はベテランの隊員を同行させるのだが、人手不足でな。危険だと判断したら迷わず撤退しろ。」
カイルはそう指示した。
支給されたのは拳銃と採取キット、サンプル容器等。
その他はジュリア達が持ち込んだ装備品を活用する事にした。
どうやら装備や機材も不足しているようだ。
準備を終え、漁港へ向かう。

静まり返った漁港。
波の音だけが、ゆっくりと岸壁に打ちつけている。
人の気配はない。
建物は崩れ、錆びた船が放置されていた。
「何から調査するの?」
ジュリアが辺りを見渡しながら聞いた。
ミネルは支給されたケースを開け、釣り竿を2本取り出す。
「まずは海洋調査。魚を調べて。」
「魚釣りね。任せて!」
リンが笑って釣り竿を受け取る。
ジュリアも竿を持ち、海へ向かった。
ミネルは空き瓶に海水を採取して光にかざして観察する。
「色は問題なし…。成分はどうかしら?」
ミネルは瓶に蓋をしてバックパックに入れた。

しばらくして……
「釣れた!」
リンが声を上げた。
引き上げたのは、小さな魚。
だが――

その魚には脚が生えていた。
赤い目、鋭い牙、硬そうな鱗。
「何これ…!気持ち悪い!」
ドン引きするリン。
ジュリアが覗き込む。
「普通の魚じゃない…。」
ミネルの元へ持っていく。
「脚が発達している…。こんなの見た事ない。サンプルとして持ち帰りましょう。」
ミネルは魚をサンプル容器に入れた。
釣りを続けるジュリアとリン。
「あれは…何?」
ジュリアは遠くに動くものを見つけた。
…何かが近づいてくる。

それは人間サイズの脚が生えた魚。
ぎこちないが、確実に地面を踏みしめている。
…!?
ジュリアは言葉を失う。
海から音がする。
波の下は暗い。
水面が揺れた。
バシャッ
海から複数の魚が飛び出す。
脚が生えた魚の群れ。
「何なのコイツ等!?」
リンは拳銃を構えた。
だが――
もう一匹、もう二匹…数が増えていく。
リンは引き金に指をかける。

「リン、ダメ。」
ジュリアがリンの肩を掴む。
「これくらい私でも…!」
リンは応戦するつもりでいる。
「撤退しよう。分が悪い。」
ジュリアはリンに言い聞かせる。
「……分かった。」
リンは応じた。
走る3人。
二足歩行の魚は次々と出てくる。

「あそこ!」
ジュリアが指さした方向にあった建物に逃げ込む。
(…逃げ込んだのはいいが、どうする?)
ジュリアは考える。
「ん?アイツら、目が悪いみたいだ…。」
リンは窓から様子を伺いながら呟く。
二足歩行の魚は周囲を見渡している様子。
「じゃあ…走れば逃げ切れるって事?」
走って逃げる事を提案するミネル。
「だけど、数が多い。屋内を移動しよう。」
ジュリアは逃走ルートを確認する。

「それがいいかも。」
リンは納得の表情。
ジュリア達は慎重に廃墟の中を進む。
ーーガタン!
(しまった!)
物音を立ててしまう。
二足歩行の魚は一斉に向かって来た。
「ヤバい!気付かれた!」
少し慌てるリン。
3人は全力で走って小型トラックに向かう。

ジャキン!
リンは荷台から銃を構える。
ミネルは運転席、ジュリアは助手席に乗り込む。
「ミネル、出して。」
ジュリアは助手席から拳銃を構える。
ミネルはキーを回しエンジンを始動させる。
(この距離なら…!)
ダン!ダン!
ジュリアが放った弾丸は魚の頭部に命中。
だが、あまり効いていない。
(拳銃じゃ威力不足か?)
魚は小型トラックのすぐ傍まで迫ってきた。
リンは落ち着いて狙いを定める。

発砲。
「ギャア!」
被弾した魚は声を上げながら倒れていく。
自動小銃なら有効だ。
ミネルはアクセルを踏み込む。
小型トラックはそのまま漁港から離れていった。
二足歩行の魚が追いつけないスピードで。
調査隊の拠点に戻った3人。
「ふぅ…。」
緊張が解けた様子のリン。
「リン、大丈夫?」
ミネルが心配そうに尋ねる。
「うん…何とか。」
リンはまだ緊張している様子。
「戻ったか。」
カイルが歩いて来た。

「隊長、これを。」
ミネルはサンプルが入ったケースを差し出した。
「む、サンプルを持ち帰ったのか?よくやった。」
3人の活躍を褒めるカイル。
「こいつは研究部門に回す。お前達、今日は休んでいいぞ。」
カイルはケースを受け取って会議室から出て行く。
(優秀だな。アイツ等なら…)
小さく笑うカイル。
彼女達はまだ知らない。
この街でも異変が起き始めている事に。
