終わらない時代 第14話
『金色の巣窟』
翌日。
三人は再び呼び出された。
カイル隊長は腕を組み、短く言う。

「今日もあの漁港の調査だ。研究部門がサンプルを欲しがっていてな…。」
「危険だが頼めるか?」
リンが小声で問う。
「もしかして……あのデカい魚?」
「ああ。別のサンプルでも構わない。」
カイルはリンの顔を見て答える。
「私は…行きたくないです…。」
ミネルは二足歩行の魚の群れが気がかりな様子。

逃げ遅れていたら危なかった。
しかし彼女達は元軍人。
命令されたら従う。その感覚だけは身体に染み付いていた。
「ミネル、サンプルの回収は私とリンに任せて。」
ミネルを励ますジュリア。
「私とジュリアで守るから!」
リンは笑顔で答える。
「ありがとう…。一緒に行こう。」
ミネルは漁港へ向かう決心がついた。
「無理はするなよ。」
カイルは3人を見送った。
ーー漁港
昨日と同じ、静まり返った廃港。
二足歩行の魚は見当たらない。
リンが指を差す。
「あの倉庫、まだ調べてないよね?」
ミネルが頷く。
「そうね…。魚は居ない?」
周囲を警戒しながら倉庫内を覗き込む…。

ミネルの声が止まる。
「これは…!」
ジュリアも覗き込む。
「卵…?」
倉庫の床一面に広がる無数の金色の卵。
リンが息を呑む。
「多いね…。」
ジュリアが静かに言う。
「……隊長はサンプル回収って言ってたよね?」
ミネルは考える。
もし、あれがすべて孵化したら…。
「……一度隊長に相談しましょう。」
ミネルは無線機で拠点に連絡をした。
無線機は生存者の町で修理したものだが使うのは初めて。
ノイズが酷いものの何とか通信出来た。
「一度戻ってこい。」と返答が返ってきたので了承し、調査隊の拠点へ戻る。
3人はカイル隊長の元へ行き、詳細な報告をした。
カイルは少し考えた後、指示する。卵を1つ回収し、倉庫を爆破する事。
「本来は熟練隊員に任せるべきだが、皆出払っている。それに、いつ孵化するか分からん。」
カイルは睨みつけるように3人の顔を見る。

「いいか、コイツは強力な爆弾だ。起爆する前に必ず安全を確保しろ。」
(危険な仕事だが、そんな事を言っている場合ではないな。出払っている隊員に連絡するか…。)
ジュリア達にとって、爆弾による建造物の爆破は初めての経験。
だが、やるしかない。
3人で話し合う。
ジュリアは爆弾の設置。
リンは偵察。
ミネルはサポートを担当する事になった。
ーー漁港
「これ持っていって。」
ミネルはジュリアとリンに通信機を手渡す。
「分かった。」
ジュリアは倉庫内へ、リンは倉庫の屋上へ向った。

静寂な倉庫内。
床一面の卵が不気味な光を放っている。
ジュリアはゆっくりと歩く。
足音を抑えながら。
しゃがみ込み、小さなコンテナを取り出す。
一つだけ。
卵を慎重に回収する。
そして爆弾を設置し、安全装置を解除。
(よし…手順通り…。)

その時。
通信機が鳴った。
「ザザ…ジュリア……!」
ノイズが混ざったリンの声。
「デカい魚…ザザザ…そっち…ザザ…向かった…!」
ギギギ…
倉庫の扉が軋む。
現れたのは体高四メートルを超えている二足で立つ巨大な魚。
(大きいな…。どうする?)
ジュリアは巨大魚を見上げる。
周囲を見渡すが使えそうな物はない。
巨大魚は大きく口を開け、ジュリアに突進してくる。

(来る…!)
ジュリアは素早く身を躱し、そのまま全力で走って倉庫から脱出した。
屋上から偵察していたリンも倉庫から離脱。
「ジュリア、大丈夫?」
リンが駆け寄る。
「大丈夫。」
ジュリアは息も乱れていない。
ミネルの元へ戻る。
「よし…いくよ?」
ジュリアは爆弾の起爆スイッチを押す。

ドォォォォン!!
倉庫は跡形もなく吹き飛んだ。
「よし!作戦成功!」
喜ぶリン。
だがーー
「ギャオォォォォ!!」
凄まじい咆哮。

「嘘でしょ…!?」
驚愕するリン。
巨大魚は生きていた。
多少ダメージを負っているようだが、まだ動ける様子。
(私達で対処するしかないか?)
ジュリアは装備を確認する。
(拳銃や小銃では歯が立たないだろうな…。)
「応援を呼ぶわ!」
ミネルは拠点に無線連絡をする。
「ザザ…こちら…カイル…ザザザザ…どうした?」
ノイズは大きいが交信はできている。
ミネルは倉庫を爆破した事、巨大魚が生きている事を説明した。
「ザザ…分かった…増援を…ザザ…る…お前達は…ザザザザ…ブツッ!」
交信が途絶えてしまう。
「カイル隊長!応答して下さい!カイル隊長!」
ミネルは必死に訴えるが応答はなかった。

「隊長は何て?」
リンは心配そうな表情で聞く。
ミネルは首を横に振った。
「よく聞き取れなかった。増援がどうとか…。」
「増援?なら時間稼ぎね…。」
ジュリアは小型トラックの荷台から自動小銃を取り出す。
巨大魚の咆哮で二足歩行の魚が集まってきた。
(大丈夫…。増援が来るまでだから…。)
リンは自分に言い聞かせる。
ジュリア達を見つけた巨大魚はゆっくりこちらに向かって歩いてくる…。
