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終わらない時代 第25話

『決断の時』


ジュリアは調査隊の拠点にある医務室へ運び込まれた。

静かな部屋には、規則正しい寝息だけが響いている。

ベッドの傍らでは、リンが心配そうにジュリアの寝顔を見つめていた。

「リン。」
ミネルが優しく声を掛ける。

「私が見ているから、あなたは少し休んで。」

リンはジュリアを見つめたまま、小さく頷いた。
「……うん。」

翌朝――。

「……ミネル?」
かすれた声が医務室に響く。

「ジュリア!」

ミネルは優しくジュリアを抱きしめた。

「良かった……。」

「ここは……?」

ジュリアは辺りを見回す。

まだ状況が理解できていないようだった。

「調査隊の医務室よ。」

「リンとカイル隊長が、あなたを助け出してくれたの。」

ミネルは昨夜の出来事を静かに説明した。

「私は……。」

ジュリアは自分の手を見つめる。

「何も……覚えていない。」

その時、医務室の扉が開いた。

カイルとリンが入ってくる。

「ジュリア……。」

リンは少し距離を置いたまま立ち止まる。

昨夜、目の前で見た"あの姿"が頭から離れなかった。

「大丈夫……?」

恐る恐る尋ねる。

ジュリアは優しく微笑んだ。

「リン……。」

「私を助けてくれたんだよね?」

「……ありがとう。」

その笑顔は、いつものジュリアだった。

(良かった……。)

リンは胸をなで下ろす。

(ちゃんと戻ってる。)

安心したように、小さく笑った。

一方、カイルは静かにジュリアを見つめていた。

「隊長……。」

ジュリアは申し訳なさそうに俯く。

「ああするしか……ありませんでした。」

カイルは首を横に振る。

「もう終わったことだ。」

「お前が行かなければ、リンもミネルも無事じゃ済まなかった。」

少しだけ間を置く。

「朝食を済ませたら司令室へ来い。」

「話がある。」

そう言い残し、医務室を後にした。



三人は朝食を済ませ、カイルが待つ司令室へ向かった。

コンコン。

「入れ。」

「失礼します。」

司令室へ入ると、ジュリアが静かに口を開いた。
「隊長。話とは何でしょうか?」

カイルは少し間を置いて尋ねる。
「……ジュリア。」

「あの能力は、いつから使えるようになった?」

威圧するような口調ではなかった。

純粋に確認したかったのだ。

ジュリアは首を横に振る。
「……すみません。」

「ほとんど覚えていないんです。」

「気が付いた時には、兵士達が倒れていました。」

「そうか……。」
カイルはそれ以上追及しなかった。

「しかし、あの力は……。」

言いかけたその時。

「どういうことですか!」

「説明してください!」

司令室の外から怒鳴り声が聞こえてくる。

「うるさい! これは決定事項だ!」

そして――

勢いよく扉が開く。

「カリーム所長?」
カイルが眉をひそめる。

「何の騒ぎですか?」

カリームは鼻で笑い、司令室へ入ってきた。
「調査隊は、本日をもって解散だ。」

一瞬で部屋が静まり返る。

「……どういう意味でしょうか?」
カイルが問い返す。

しかし、カリームは聞く耳を持たない。
「調査隊は解体だ。」

「嫌なら、そこの三人を研究所へ引き渡せ。」

「これは命令だ。」

あまりにも一方的な要求だった。

カイルは静かに目を閉じる。

そして短く答えた。

「……なら、調査隊は解散します。」

「なっ!?」

ジュリア達だけでなく、カリームまでもが驚いた。

昨夜の奪還作戦によって、研究所とは完全に敵対した。

調査隊は研究所とアオバシティからの援助によって成り立っている。

何らかの処分は避けられない。

カイルは最初から、その覚悟を決めていた。
「お前達。」

三人へ向き直る。

「部屋の荷物をまとめろ。」

「片付けが終わったら、他の隊員を手伝え。」

「了解……。」

三人は静かに司令室を後にした。

背後ではカリームの怒鳴り声が響く。
「お、おい! 本当にいいのか!」

「後悔しても知らんぞ!」

誰も振り返らなかった。



荷物をまとめ終えたジュリアは、小さく呟く。
「……私のせいだ。」

「違う!」

リンが即座に否定した。
「ジュリアのせいじゃない!」

「悪いのはヴィクターとかいう奴でしょ!」

ミネルも静かに頷く。
「そうよ。」

「仕事なら、また探せばいいじゃない。」

「二人とも……。」

ジュリアの表情が少しだけ和らぐ。

「ありがとう。」

部屋の片付けを終え、研究室へ向かった。

そこでは科学者達が慌ただしく機材を運び出していた。

「どうしてこんなことに……。」

誰かが小さく漏らす。

その時、エレナが三人へ歩み寄ってきた。
「アンタ達。」

「気にする必要はないわ。」

優しく微笑む。

「ほら、手伝って。」

「はい。」

三人も機材を運び始めた。

積み込みの途中、ミネルが尋ねる。
「あの……私達、これからどうなるんですか?」

エレナは手を止めずに答えた。

「シホロ基地へ移ることになったわ。」

「えっ?」

ミネルが目を丸くする。

「隊長の判断よ。」

「もう研究所や街から援助は受けられない。」

「だから、自分達だけでやっていくの。」

その言葉を聞いていたガレスが笑う。
「シホロ基地を新しい拠点にするんだとよ。」

「そしてシホロシティを調査して見つけた資材や資料は研究所へ高く売る。」

「それで食っていく。」

三人は黙って聞いていた。

ジュリアはトラックに積み上げられた機材を見つめる。

(まだ……。)

(私達には、やれることがある……?)

その胸に、小さな希望が灯った。

こうして調査隊は新たな目的を定めて動き出す。

しかし、その時のジュリア達はまだ知らなかった。

シホロシティで、新たな脅威が待ち受けていることを。


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