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【連載小説】第7話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』

〜これまでのおはなし〜
それは遙か彼方の昔の噺。
大陸に伝わる神々の故郷を捨てて海を渡る一柱の神は、魔女と云われたまがいものと手を結んだ。

神と魔女は新たな土地で怪異と呼ばれた。
それが『夜の魔女』と『太陽の巨人』である。

やがて怪異はその土地の女と、魔女は男と恋をしてひと時の仲睦まじい間柄となった。
振り返れば、人非ざるものとの出逢いと別れは、夢物語のようだったと云う。

ただ、その二人の男女の数奇なる運命は、かねてから惹かれ合い、朱い糸で結ばれて今に至る。
これは絡んだ朱い糸を手繰り寄せた、彼と彼女の運命を語り継ぐ一片に過ぎない。


紡ぐ


「こら! チョウマ!
 また、泣かないの!」
「だって、イオリおねえちゃん、本気で打ち込むんだものぉ~〜」
 そしてチョウマと呼ばれた子どもは持っていた木刀を放り出して、半べそを掻いた。

チョウマ、五歳。


 それは、今より思い返せば二代ふたよも昔のこと。

 開け放した道場に午後の日差しが差し込み、野焼きの鼻孔に障る煙い空気が立ち込めていた。

 泣きやまぬ子どもに静かに少女は近づく。

 そして木刀を手に取り、剣先を向けずに静かに床に寝かせた。
 手拭いを取り出してかがみ、半べそを掻いて泣き濡れた頬を優しく拭ってあげた。

「泣かないの、チョウマ。
 男の子でしょう。
 立派な武士ブシドーになるんでしょう」
「だって、……ヒク、ヒク」

「チョウマなら成れる。
 大人になったら、私よりも強くなって大きくなって、きっと立派な武士に成る」

「……そしたら、さぁ〜〜。
 おねえちゃん、おヨメさんになってくれる?」
 
 チョウマの言葉に、少女はそれまでの厳しい顔つきから一転、笑みをこぼした。

「なる。なる。
 チョウマはお嫁さんにしてくれるの?」
「うん」

 チョウマは耳まで赤くしていた。
 イオリは笑顔で答えた。

「じゃあ、続けよっか」

 何処かで鴉が鳴いていた。

少女の頃、剣の稽古に励むイオリ


 夜の魔女と太陽の巨人という二柱の怪異は、
「修羅の道に帰る」
 と云い遺して二人の下を去った。

 呪われた吾が身と知り、覚悟を決めて愛したチョウマとイオリ。

 二人の想いを余所に、夜の魔女と太陽の巨人、それぞれの怪異はかくもあっさり人と決別した。


つづく




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