【連載小説】第23話『真昼に潜む影と真夜中に猛る獣の物語』
都の遣いから もたらされた一報
チョウマはそれを察していた
勅③ 勅命
そしてチョウマとイオリ
二人は勅を拝命する
幻想と現実が交わる祈りと魂の叙事詩
扉の外から聞こえてきた声は大変恐縮していた。
「失礼いたします。こちらチョウマさまのご自宅で在らせられるか?」
「はい」
「都から参りました」
慌てることもなくチョウマは立ち上がり扉を開けてあげた。
「そうですか。だいたい察しはついていますよ」
雨の中、侍然とした男が二人立っていた。
二人はチョウマの顔をみて丁寧に会釈した。
「取り敢えず、中にどうぞ」
「失礼仕る」
頭に被った笠からは雨水が滴る。合羽は着ていたが旅用の羽織と手甲は肩からびしょびしょに濡れて、脚絆は泥塗れであった。
雨の中の山道を歩く苦労が窺える。
チョウマは座敷に上がり侍たちは濡れた着物に構うことなく土間に控えた。
作業途中の編みかけの草鞋を片づけてチョウマは胡座をかいて座ると侍たちに声をかけた。

「はい、それで」
「お初にお目にかかる。拙者、皇宮に仕えております。
片倉佐之助に存じます」
片倉にもう一人の侍が続く。
「同じく安西藤十郎と申します」
何処までも堅い片倉と安西であった。
チョウマは「よろしく」と簡単に挨拶を済ませて二人に話を続けさせた。
「光顕帝陛下の勅命ですか?」
「おぉ、流石に察しが早い。左様にございます」「そうですか……やはり」
「チョウマさまにおかれましては、既にご存知に在らせられますか?」
「いえ、知りません。
ですが見当はついていました。
あと、その堅苦しいもの云いはやめてください。
そんなにたいそうな身分ではありませんので」
「今日から二日ほど前になります」
片倉はチョウマの言葉のあとも云い方を変えずに続けた。耳に入らないわけではなかろう。
ただ、それ自体がたいそうなことではない。チョウマもそれ以上構わなかった。
話は本題を続ける。
「下越の西岸に配属されておりました防人が五名、何者かに殺められました」
「それで」
「賊はまだ。手口は鋭い刃物で滅多刺し。 うち一名は首を折られて即死にございます」
「それだけならば殺しではありますが、私たちに声はかかりませんね」
「左様。仰る通り。
ただ、この件、皇宮内の術師が予見しておりました」
そして安西が続ける。
「陛下におかれましては、秘術『夢見先』にてクィシン皇国の手先に依ると云い当てましてございます。
そして拙者どもは、道中に寄った番所にて、防人殺害の事実を確認いたしました」
チョウマは腕を組んで二人の話を聞いていた。
